第16話「人生を面白くするためには、ほんの少しの嘘を混ぜてみましょう」(脚本)
〇断崖絶壁
アーロイ・メレディ「俺の夢は・・・・・・」
アーロイ・メレディ「女神様を殺すことでした」
フェミリー・コール「・・・・・・・・・・・・」
フェミリー・コール「・・・・・・・・・・・・・・・?」
アーロイ・メレディ「女神様?」
フェミリー・コール「もしかして、常に私を監視するような鋭い視線を向けていたのは・・・・・・」
アーロイ・メレディ「俺です」
フェミリー・コール「もしかしなくても、私に嫌がらせを続けてきたのは・・・・・・」
アーロイ・メレディ「それも、俺です」
アーロイ・メレディ「すべては女神様を暗殺するための準備でした」
フェミリー・コール(私を暗殺するためとはいえ、私の部屋にアーロイ様がいらっしゃったなんて・・・・・・)
フェミリー・コール(ちょっとだけ嬉しいとか思う私は馬鹿かもしれない!?)
アーロイ・メレディ「怖がらせるようなことをして、大変申し訳ございませんでした」
真摯な声で謝罪の言葉を述べるアーロイさんを見ていると、私の心がずきずきと痛み始める。
フェミリー・コール「私、女神時代に何かしてしまったでしょうか?」
フェミリー・コール「アーロイ様に不快な想いをさせてしまったとか」
フェミリー・コール「アーロイ様の夢を否定してしまったとか・・・・・・」
アーロイ・メレディ「何ひとつしていません」
アーロイ・メレディ「女神様は時間を見つけては、幽霊としてさ迷っている厄介者の俺と話をしてくれた」
アーロイ・メレディ「それが何よりも嬉しかったです」
アーロイ・メレディ「前世の俺は、女神様に凄く励ましてもらいました」
アーロイ・メレディ「最後には、異世界に転生するっていう新しい夢を俺に授けてくれました」
アーロイ・メレディ「そんな恩があったからこそ、フェミリー様を殺すことはできませんでした」
フェミリー・コール「恩だなんて、そんな・・・・・・」
アーロイ・メレディ「好きな人を殺すなんて、俺にはできませんでした」
フェミリー・コール「・・・・・・好き?」
アーロイ・メレディ「はい」
フェミリー・コール「私のこと・・・・・・ですか?」
アーロイ・メレディ「異世界に転生する前も」
アーロイ・メレディ「異世界に転生した後も」
アーロイ・メレディ「ずっと女神様のことを想っていました」
フェミリー・コール「それなのに・・・・・・」
フェミリー・コール「どうして私は、アーロイ様に殺される流れになるのでしょうか」
アーロイ・メレディ「それは・・・・・・」
感知魔法が発動しないときがあったのは、アーロイさんが私の傍にいるときは殺しの目をしていなかったということ。
アーロイさんは、私を殺すかどうかずっと迷っていたということ。
〇幻想空間
女神G「私が授かっている業務は、異世界先の人生や世界観を少~し変更することができるの」
女神G「たとえば婚約者がいない人生に転生予定だったら、婚約者を人生に足すことができるようになるってこと」
女神G「お金がない人生に転生予定だったら、莫大なお金を授けてから転生させることが可能なの」
女神G「勇者になりたいのに敵が存在しない世界だったら、魔王を手配した上で転生させることができるの」
29983番さん「アドバイス、もらえますか?」
女神G「ええ、もちろん」
29983番さん「女神様を自由にするには、どういう風に人生を変更すればいいですか?」
29983番さん「女神の役職から、解放させたい人がいるんです」
女神G「それってまさか、恋なの!? 恋なのね!?」
29983番さん「はい・・・・・・」
女神G「だったら、女神様に任せなさいっ!」
女神G「あなたの転生先の人生に、婚約者を用意してあげる」
女神G「その婚約者に、あなたの想い人である女神が転生してきたら心臓を一突きよ!」
29983番さん「え、心臓?」
女神G「女神を殺すことで、あなたの想い人である女神は女神の職を辞めることができるの!」
〇断崖絶壁
アーロイ・メレディ「と、言われました」
フェミリー・コール「アーロイ様」
アーロイ・メレディ「はい」
フェミリー・コール「その話に嘘はありません」
アーロイ・メレディ「じゃあ、やっぱり俺はフェミリー様を殺さなければ・・・・・・」
フェミリー・コール「その必要はありません!」
確かに、女神は勇者に殺してもらうしか命を絶つ術がない。
それは嘘偽りなく事実だけど、アーロイさんはほんの少しだけ騙されている。
フェミリー・コール(同僚の女神さん・・・・・・)
フェミリー・コール(私たちの人生をいじって、楽しんでいますね・・・・・・)