Riverside Baron ~蓬莱番外地~

山本律磨

エネミー・オブ・エンパイア(2)(脚本)

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〇宮殿の門
「憲兵少尉、最上一真」

〇上官の部屋
大泉「本日を以て憲兵司令部副官部の任を解き、新たに川原町第三分駐所勤務に任命する」
最上「謹んでお受け致します」
大泉「最上少尉。階級は変わらぬがこれは昇進と捉えてくれ」
大泉「帝都河川地区は今や反権力思想家の温床となりつつある」
大泉「来栖川前司令はその矜持を以て、我ら憲兵隊の能力と権限の強化に努めてこられた。私もまたその志を継ぐ者である」
大泉「激戦の地にてより一層の検閲検挙に励むが前司令官への恩返しと心得たまえ!」
最上「はっ!」

〇商店街
  河原町商店街
めっちゃ食う子「うわああん!アイスクリン買ってえええ!」
めっちゃキレるママ「まったくアンタはブクブクブクブク!」

〇役所のオフィス
  同、第三分駐所
「アイスクリン買って~!」
「たけや~さおだけ~♪」
最上「・・・」
木場「え?少尉殿って~バイオリンやる系の人っすか~?」
  帝都陸軍憲兵隊曹長、木場荘助
最上「こんな焼け焦げたバイオリン弾けるか」
最上「大体なんだバイオリンやる系って・・・」
木場「まあここは見ての通りの防人ばかりですから、気楽にやりましょう」
最上「防人か・・・」
木場「下町の長屋には反権力の活動家どもが多く潜伏していますから、それこそエリートの方々は手柄の立て放題です」
木場「しかし活動家もさるもの。イザとなったらヤクザや自警団が仕切る貧民窟に逃げ込んでしまう」
木場「その時に我々下々の兵卒が適当に調査して」
最上「適当?」
木場「いや、まあ、心身とも疲弊しない程度に」
最上(何が昇進だよ・・・絵に描いたような左遷じゃないか)
最上(大泉め。そんなに来栖川派を一掃したいか)
最上「確かに、大衆には疎まれ思想家には蔑まれ貧民には侮られる。それが軍属の実態だ」
最上「怠惰になる気も分かる」
最上「だがその現状を少しでも変えたいと思った男がいたんだよ」
木場「は、はあ・・・」
最上「もとの木阿弥になりそうだけどね」
伝八「失礼するぜ」
木場「これはこれは伝八警部」
木場「ご紹介します。本日付で配属された分隊長の最上一真少尉」
伝八「そんな話はどうでもいい」
最上「無礼者!」
伝八「悪いな。新人さんに用はねえんだよ」
伝八「根室清濁が消えた。何か掴んでないか?」
木場「知りませんよ。知ってたとしても流すわけにはいきません」
木場「上に怒られちゃうもん。ですよね少尉」
最上「ああ。おこるぞー」
伝八「ボウヤは何か知らねえか?」
最上「ボウヤだと!?」
最上「来月、三十だ!」
木場「え?年上?」
木場「な、何かサーセン色々と・・・」
最上「緊張感のない連中め・・・」
最上「根室清濁か。名前だけは聞き及んでいる。こう見えて司令部所属であった」
最上「司令官閣下のお耳に入れるほどの大物ではなかったようだがな」
伝八「ああ、活動家としちゃ口先ばかりのドサンピンだ」

〇ボロい倉庫
  世のあらゆる階級格差根絶を目指す無政府主義結社『美しきけもの』
  根室はその使い走りにすぎなかった

〇役所のオフィス
伝八「それがこの一年で派手に動き回り始めた」
伝八「勉強会や芸能芸術鑑賞会と称しては無知で軽薄なモボやモガを集めて、集金し扇動し地下で如何わしい宴を催している」
伝八「ある一斉検挙では麻薬も押収された」
最上「そんな横暴、結社が許しているのか?」
伝八「あんたら憲兵隊が手当たり次第にとっ捕まえるから本部も身動きが取れんのだろう」
最上「・・・」
伝八「中途半端にぶっ壊したもんだから、三下の小悪党が好き放題暴れ出してんだ」
伝八「ちったあ現場の苦労も分かってほしい所だよな~木場曹長」
木場「そこで俺に振らないで下さい!」
伝八「で、こっからが本題だ」
伝八「根室を捕まえられねえ」
伝八「ど~しても逃げられちまうんだよ」
最上「知るか。帝都警視庁の無能っぷりを相談されても困る」
伝八「警察の動きが奴に漏れているかも知れん」
伝八「スパイといえば憲兵の専売特許だろ」
最上「貴様!」
伝八「第三から第六分駐所までが河川地区管轄だ」
伝八「ネズミがいたら炙り出してくれよ。でなきゃこっちも商売上がったりだ」
最上「我らを疑う前に自分の足元をよく調べたらどうだ」
伝八「やってるよ。やってる上で、あんたらにもお願いしてるんだ」
伝八「俺達がいがみ合って笑うのは革命家共だ。悔しかねえのかよ」
最上「・・・」
伝八「というわけだ。諸々ご承知おき願いたい。最上少尉」
最上「わかった」
伝八「もっとも・・・」
伝八「あらたに司令部から下町に飛ばされてきたエリートってお方も怪しさ満載だけどな」
最上「な、何だあのチンピラ角袖は!」
木場「あ、この町基本チンピラしかいませんよ」
最上「・・・」

〇川沿いの原っぱ
ヒナ「がるるる!何やっとんじゃあ!」
ヒナ「どう弾いたら「ギャ~ッ!」なんて音が出るんじゃあ!」
ヒナ「お客さんが待ってんだ!一日も早く弾き方思い出せ!」
トラ「今日はこのくらいでいいだろ。座長も怪我してんだし」
ヒナ「トラは黙ってて」
ヒナ「ちゃんと弾けるようになるまで、オイラが師匠なんだから」
デンキ「自分は優しく教えてもらったのに?」
義孝「そうなのか?」
ヒナ「う、うるさい!オイラは褒めて伸びるタチなんだ!」
ヒナ「はいもう一回」
ヒナ「そろそろ近所迷惑になる時間帯だぞ」
義孝「ええい!俺は手が痛いのだ!」
ヒナ「手くらいなんだ!この悲鳴発生装置が!」
義孝「小便!」
ヒナ「何だその態度は!師匠の前だぞ!師匠かつレディの前だぞ!」
ヒナ「全く・・・」
トラ「でもよ、ヒナ」
トラ「ああも見事になんもかんも忘れられるもんなのか?」
ヒナ「知らない」
デンキ「まさか全く違う別人だったりして」
トラ「ははは。そりゃおっかねえな」
ヒナ「つまんねえ話してんじゃねえよ!」
トラ「わ、悪ィ・・・」
ヒナ「きっとすぐに思い出すよ」
ヒナ「きっと・・・」

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