Riverside Baron ~蓬莱番外地~

山本律磨

あたらしい朝が来た(3)(脚本)

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〇廃倉庫
ヒナ「eins、zwei、drei」
ヒナ「eins、zwei、drei」

〇荒れた小屋
義孝「うん?・・・午砲か」
義孝「もう昼だな」
義孝「しかし安い酒だ」
義孝「芝居とはいえ、ただ飲んで寝るだけの生活は逆に疲れる」
義孝「人生の落伍者どもにとっては、何という事もなかろうが」
義孝「つくづくけしからん」
義孝「ではもう一杯・・・」
ヒナ「クラァ!いつまで飲んだくれてんだ、この人生の落伍者があ!」
義孝「い、いや。これはあの女が『お前は酒を飲んで寝てればいい』と・・・」
ヒナ「そんな仕事がこの世にあるか!」
ヒナ「ほれ。バイオリン」
ヒナ「ほれ。衣装」
ヒナ「仮面は今、デンキが新しいの作ってるから」
義孝(ば、バイオリンだと?)
義孝「・・・」
義孝「うおおおお!手が!私の手があああああ!」
ヒナ「うるせえ!どうせ弾きかた忘れちまってんだろうが!」
義孝「す、すまんな。まだ頭に靄がかかっているようなんだ」
ヒナ「まあいつものアレを見たら色々思い出すかも知れねえし」
ヒナ「とにかく準備しな、バロン」
義孝「うむ、いつものアレであるな」
ヒナ「・・・」
ヒナ「・・・」

〇荒廃した教会
ヒナ「さて、前座はここまで」
オイサン「待ってました!仮面のバロン!」
ヒナ「おいちゃん、まだ早い!」
オイサン「悪ィ悪ィ!」
ヒナ「さあてお待ちかね!瓦礫と泥と自由の街が生んだ時代の寵児!」
ヒナ「蓬莱街の英雄!炎のバイオリン!」
ヒナ「バロン吉宗!」
オイサン「バロン!仮面はどうした?」
リバーサイドクイーン「そんなに男っぷりを見せたいのかい?」
ヒナ「さあさあお代は見てのお帰り!炎のバイオリン!バロン吉宗の演奏だ!」
ヒナ「と、言いたいのは山々ですが・・・」
ヒナ「バロン吉宗、先日の大出し物にてちょいと怪我を負いまして、しばらく弦をにぎれぬこととなりました」
ヒナ「これも全てこの娘の監督不行き届きと」
デンキ「むんがあ!」
ヒナ「馬鹿親父の油断にございます」
蓬莱合唱団「しっかりしろよな!」
アーチスト「娘に迷惑かけるんじゃない!」
ヒナ「本日はバロンに成り代わり、この私がいつもより余計に踊りますれば」
トラ「皆様いつもより余計にお手拍子のほどを!」
ヒナ「なおかつ余計におひねりのほどを!」
義孝(ふう、焦らせおって・・・)
義孝「・・・」
義孝「・・・」

〇川沿いの原っぱ
ヒナ「へへへ。ジャラジャラ~っと」
ヒナ「ん?」
ヒナ「なんだろ、あの煙・・・」
ヒナ「・・・」

〇火葬場
  『しかし寂しいもんですなあ。天下の憲兵司令官来栖川男爵閣下の葬儀が斯様に閑散なものとは・・・』
  『まさに古きサムライの時代の終焉ですな』
  『まあそれはそれで結構な仕儀というべきでしょうか』
  『しっ、声が大きい』
桜子「最上少尉」
桜子「これまで色々と有難うございました」
最上「礼を言わねばならんのは私の方です」
最上「閣下は軍人の・・・いえ漢の鑑でありました」
最上「狂騒へと向かうこの国を憂い秩序を守る、最後のサムライでありました」
最上「どうか来栖川家の当主に恥じぬ立派な淑女とおなり下さい」
最上「不肖最上、これから先もお力になります!」
桜子「最上さん。これから先は自分の人生を生きて下さい」
最上「え?」
桜子「軍に縛られず、家に縛られず、世の中に縛られず、自分の人生を自由に・・・」
最上「桜子さん・・・」
桜子「私は生きてみせます。亡き母の分まで自分の人生を」
桜子「今日、ついに新しい朝が来たのです・・・」
最上「新しい朝・・・」
警官「少尉」
最上「ああ・・・君はあの時の」
警官「実はその・・・お渡しし忘れたものがありまして」
警官「もしかしたら来栖川司令にとって大切な物ではないかと思い」
最上「これは・・・」
最上「バイオリン?」
最上「閣下は楽器など嗜まれていなかったが」
警官「そうですか・・・」
警官「ご遺体の傍にあったもので、てっきり司令殿のものかと」
警官「その手にしっかりと握られておりまして」
最上「・・・一応預かっておく」
警官「失礼します」
最上「バイオリン・・・」
  あたらしい朝が来た(終)

次のエピソード:エネミー・オブ・エンパイア(1)

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