鮎川美保奈は力を語る(脚本)
〇テーブル席
美保奈「だってぇー、勇者の戦いってのを じっくり観察したのって 最初のころ以来だから、えーと」
美保奈「だいたい二ヶ月ぶりぐらいだしぃー」
美保奈「だってほらぁー、バトルって 男の子に言わせたら 毎回違うのかもしれないけど」
美保奈「あたしにはいつもおんなじにしか 見えないしぃー」
美保奈「あ。でさ、勇者の装備もさ 同じ理屈で似たり寄ったりに 見えてるのかなーって思ってたら」
美保奈「こっちは初代のを 使い回してるって言うのよ 伝説の武具なんだってさ」
〇散らばる写真
美保奈「あたしもまあ あっちの世界には何度も行ってるんで」
美保奈「クリア直前の過去勇者から その時代では世界で二番目に強い武器を お下がりでもらったり」
美保奈「ずいぶん前に気まぐれで覚えた呪文が 今では禁術の古代魔法になってて 威力はさておきハッタリは効いたりで」
〇テーブル席
美保奈「そこそこ戦えたわけよ」
美保奈「なんてったってルクスカーンは 使うたんびに相手がパニックになるからね」
ともだち「ルク・・・?」
美保奈「ルクスカーン」
美保奈「あー。んーと。変身魔法よ」
ともだち「・・・・・・」
美保奈「いえ、魔法少女とかじゃなくって」
ともだち「少女・・・」
美保奈「あーもウ!! 年の話はお互いしない!!」
美保奈「ちょっと!! 怒るわよ!!」
〇開けた交差点
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
〇テーブル席
美保奈「ふぅ。やっぱ抹茶ラテはいいわね」
美保奈「あたしが向こうでも 抹茶ラテ抹茶ラテ言ってたせいで」
美保奈「マーチェラテなんて人名が 定番になるとは思ってなかったけど」
美保奈「祝福の言葉かなんかだと 思われちゃったみたい」
美保奈「あ、変身魔法ね んーとね、獣になるのよ」
ともだち「ふーん。どんな?」
美保奈「どんなって・・・ 耳があって、しっぽがあって・・・」
ともだち「哺乳類?」
美保奈「うん」
ともだち「毛皮は?」
美保奈「・・・白黒」
ともだち「パンダ?」
美保奈「じゃないわよ パンダでカンフーでアチョーってんなら こんなに言いよどんだりしないわよ」
美保奈「・・・スカンクよ」
美保奈「ちょっとー! 笑わないでよー! バカにするんなら この場で威力を見せつけるわよーっ!?」
美保奈「向こうの世界でもルクスカーンを使うと 大抵はバカにされるわ がんばって覚えたのにさ」
〇谷
美保奈「でもね、ユノンは笑わなかったの 有効な戦力だって ありがたいって言ってくれたの」
〇テーブル席
美保奈「実際、ルクスカーンは効果があるのよ」
美保奈「おかげで割りとすんなりと 待ち合わせ場所の 変わった形の岩にたどり着けてね」
〇岩山
美保奈「石化したドラゴンみたいな形の岩よ」
ともだち「それって・・・」
美保奈「うん、ありうるかもね」
美保奈「少なくともあたしが見てる前で 復活したりはしなかったけど もしかしたら裏ボス戦に絡んでくるのかも」
〇テーブル席
美保奈「とにかくそこで 仲間が来るのを待ちながら 改めてユノンへの取材を開始したわけ」
美保奈「ユノンは浮ついた気持ちで ハーレム・パーティーを 組んでるわけじゃあなかったの」
〇闇の要塞
美保奈「今回の魔王は女なんだけど ちょっと厄介な力を使うヤツでね」
美保奈「見る人の理想の『女』の姿に 見えるっていうのよ」
美保奈「だから男が魔王に立ち向かおうとしても 会った途端に虜にされてしまう」
美保奈「だけど魔王に立ち向かうのが女なら むしろ嫉妬で戦意が上がる」
〇テーブル席
美保奈「・・・いえ、ユノンはもっと 気を使った言い方をしていたわよ?」
美保奈「でも言いたいのはそーゆーことよ」
〇結婚式場の前
美保奈「女戦士のセプテンヴェラは ユノンと同じ孤児院で育ってて ユノンの姉のような存在なんだけど」
美保奈「その孤児院で二人の親代わりだった 真面目で敬虔な神官は」
美保奈「魔王の巨乳に惑わされて 窒息して命を落としたんだってさ」
美保奈「ユノンはこのときは まだちっちゃかったんで」
美保奈「魔王を見ても、乳デカお化けとしか 思わなかったらしいわ」
〇児童養護施設
美保奈「魔法使いのマーチェラテと 僧侶のソフィーラテは双子の姉妹でね」
美保奈「二人の兄である偉大な賢者は」
美保奈「やたらあっさり 魔王のしもべになってしまって 姉妹の手で討つしかなかったそうよ」
〇武術の訓練場
美保奈「格闘家のカメリアの婚約者は 魔王にさらわれて 奴隷にされてボロボロになって」
格闘家カメリア「助け出した時には手遅れで 巨乳万歳とつぶやきながら ニヤケた顔で死んでいったらしいわ」
〇テーブル席
美保奈「争いの絶えない世界では 人の命が軽いのよ」
ともだち「にしても しょーもなさすぎねー?」
取材旅行で禁呪を唱える一方で、抹茶ラテを流行らせたりと、落差が大きすぎて楽しすぎです。勇者パーティーの生い立ちまでしっかりしていて、どんどん引き込まれます!