鮎川美保奈は色恋を語る(脚本)
〇テーブル席
美保奈「ンで気になるのが、 勇者ユノンは大丈夫なのかってことね」
美保奈「神官が亡くなってから何年も経って さすがにユノンも乳デカお化けに 引っかかりそうなお年頃になってるし」
美保奈「もしや生まれながらの魔法耐性で それこそが勇者の力なのか!?」
美保奈「と思いきや、どこぞのお姫様に 一途にホレてるからだって答えで ガッカリだったわ」
ともだち「いいじゃん 小説のネタになりそうじゃん」
美保奈「いやいや 察しなさいよ ガッカリったらガッカリなの!」
美保奈「だってユノンってかっこいいんだもん」
〇開けた交差点
美保奈「だからネタになるとかじゃないのよ!」
〇岩山
ともあれこっちも取材で来ているわけだし
美保奈「仲間の女戦士は いかにも包容力がありそうな 顔とおっぱいなのに」
美保奈「そういう対象にはならないの?」
とか
美保奈「猫耳巨乳の格闘家には萌えないの?」
とか
美保奈「この二人には劣るとはいえ じゅうぶん大きな双子の計四つを」
美保奈「同時に手に入れたいという欲望は 沸かないの?」
とか
〇テーブル席
美保奈「ごくごくありきたりな質問を いくつかさせてもらったわ」
美保奈「なぜかユノンにはドン引きされたけど」
ともだち「うん。あたしもドン引きだわ」
〇ハート
美保奈「んで次は、勇者のいとしのお姫さまが どんな人物かの取材」
美保奈「だって聞いときたいじゃない? 写真とかのない世界だから 外見を口で説明するわけなんだけどね」
美保奈「どーせ、そーとー 美化して語ってるんだろーなーと思いつつ」
美保奈「華奢だの可憐だのって 言葉の羅列をメモってたわけよ」
〇岩山
勇者ユノン「華やかに着飾っていて 高級な香水をつけていて」
そしたらそこに
そーいった特徴を全部備えたお姫さまが
いきなり現れちゃったわけよ
〇テーブル席
美保奈「先に言っちゃうとそのお姫さまは 魔王が化けたニセモノで」
美保奈「勇者の好みの姿になって 勇者を惑わそうとしてたわけなのね」
美保奈「だけどユノンは一発で見破ったの」
〇炎
で、魔王が
魔王「わらわがじきじきに 惑わしに来てやったというのに!」
とか言って怒ってバトルになって
〇テーブル席
ともだち「変形した?」
美保奈「もちろん」
〇炎
この魔王ってば、なんとサメ型だったの!
〇テーブル席
ともだち「いろいろいるもんなんだねー」
美保奈「ウロコや牙が生えたのはいいとして」
美保奈「巨大化してせっかくのドレスが ビリビリに破けちゃったのは もったいなかったわね」
美保奈「セクシーなんてとても言ってられない 見てくれだったし」
〇岩山
魔王は強かったんだけど
勇者の仲間が途中で次々駆けつけてきて
んで、騒ぎを聞きつけて
魔王のほうのしもべも集まってきちゃって
魔王は慌てて美女の姿に再変身
ショーナ姫の顔とビリビリのドレスで
魔王「助けてー!」
と、勇者陣営と魔王陣営の
両方に泣きついたの
〇テーブル席
美保奈「勇者の仲間が騙されなかったのは いいとして」
美保奈「数が数だし魔王側のほうが 有利かなーと思いきや」
〇岩山
魔王はショーナ姫の体型を
きっちり再現しちゃっていたもんだから
今まで魔王に惑わされて
しもべになっていた連中は
魔王のおっぱいがニセ乳だったって
気づいちゃったのよ
ともだち「そりゃ、サメだし」
美保奈「それでしもべどもの目が覚めて形勢逆転」
美保奈「裏切り者は魔王の手で処分されるも」
美保奈「勇者側の猛攻が始まって」
〇テーブル席
美保奈「魔王をその場で討ち取ったの 魔王城の外で」
美保奈「なかなか気持ちのいい勝利だったわー」
美保奈「あ、でも、これで終わりじゃないわよ 魔王城では裏ボスが待ってるから」
美保奈「そっちへ行く前にあたしは 時間切れで帰らなくちゃ なんなかったんだけどね」
〇開けた交差点
美保奈「・・・・・・貧乳がユノンの好みなら あたしにもワンチャンあるかななんて 思ったりなんかしたんだけどね」
〇岩山
美保奈「実は本当の姫は 地味な雑用係として ユノンの旅に同行してたの」
美保奈「ユノンが語った姫の姿は 嘘ではないけど 公の場に出るときだけの気張った姿ね」
美保奈「商人のショーナがお姫さま だからユノンは魔王に騙されなかったの」
美保奈「で、目の前で二人にキスされちゃって さすがにもうさ、もう・・・」
〇テーブル席
美保奈「ルクスカーンをバカにしなかったのって ユノンだけだったのよ 歴代勇者の中で」
美保奈「この呪文をあたしに教えた初代勇者でさえ ゲラゲラ笑っていたってのにさ」
〇岩山
美保奈「シーナ姫に、裏ボスを倒したあとの 祝いの宴に来てほしいって 言われたんだけど、無理なのよね」
美保奈「二つの世界は時の流れが違うから 次にあたしが向こうの世界に現れるのは 向こうの時間で千年後」
美保奈「これから裏ボスを倒そうって 張り切ってる人達に 本当は言っちゃいけないことなんだけど」
美保奈「世界の危機は千年後にはまた訪れるの あの世界はそれをくり返してきたの」
〇テーブル席
美保奈「あたしはさ、ちょっとイジワルな気持ちで それをバラしちゃったんだけどさ ユノンは喜んでたのよ」
美保奈「千年も平和だなんてすごいし それをあっという間みたいに語る 女神さまもすごいって」
〇岩山
勇者ユノン「時間が動いている限り 永遠なんて存在しない」
勇者ユノン「永遠を求めて時間を止めようとしたら それこそ魔王みたいに 無の世界を求めてしまう」
美保奈「って」
美保奈「ユノンはきっと裏ボスを倒して それで、もう向こうの時間で とっくに寿命を迎えてるんでしょうね」
〇開けた交差点
美保奈「あたしは、しばらく向こうへは行かないわ ラノベのアイデアがまとまったから もちろんラブコメよ」
美保奈「小説の中では、勇者は女神と結ばれるの これくらい別にいいわよね? だってこっちはあたしの世界なんだもん」
〇テーブル席
美保奈「でね、執筆を始める前に ちょっと渋谷に行きたいの ついてきてほしくてあなたを呼んだの」
ともだち「買い物で憂さ晴らし?」
美保奈「違う」
ともだち「秋葉原じゃなくて?」
美保奈「渋谷」
美保奈「あたしね、今はね・・・」
〇渋谷のスクランブル交差点
美保奈「あの交差点の真ん中で、ルクスカーンを ぶっ放してやりたい気分なのよ」
BGMや効果音、ともだちの表情などの細やかな仕掛けで楽しさも倍増でした。設定での”出オチ”にならず、面白さが3話通して継続しているところに敬服です!完結お疲れ様でした!