侯爵令嬢アガットは、赤髪皇子の妃になりたい

椎名つぼみ

2.望んでいた婚約。でも、あなたじゃない(脚本)

侯爵令嬢アガットは、赤髪皇子の妃になりたい

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〇謁見の間
  「あの娘を、私に下さい──」
アガット(ミカエル殿下、急になぜ私を・・・)
ラファエル「・・・ハハッ。兄上、ご冗談を。 令嬢は金や宝石とは違いますよ?」
ラファエル「アカデミーではずいぶん、ユニークなことを教わるようですね」
ミカエル「お前こそ。 先ほどの発言に、責任はもてるのだろうな?」
ミカエル「陛下に嘘偽りを申したとあれば、たとえ皇族でも処罰の対象となるが」
「・・・」
アガット(何が起きてるの? あからさまに敵対心を向けるなんて・・・)
  状況が理解できず、ただ呆然と立ちつくす私。
  それに気づいたミカエル皇子が、少しして、怖い顔でこちらへ近づいてくる。
ミカエル「──君の名は?」
アガット「あ、はい。 アガット·デ·ベリーと申します」
ミカエル「そうか・・・」
ミカエル「近々、侯爵宛に正式な書類を送る。 それなりの準備をしておけ」
アガット「どういう意味で・・・」
ミカエル「私の正妃として、皇宮入りしてもらう」
アガット「え!?」
アガット「とんでもございません! あの、だって私は・・・」
ラファエル「兄上、お待ち下さい!」
ラファエル「アガット・・・ベリー侯爵令嬢は、オレの婚約者です」
ラファエル「気まぐれな要求は止めて下さい!」
ミカエル「『候補者の1人』 先ほどお前は、そう言っていたではないか」
ミカエル「ならば、私がもらい受けても問題はあるまい」
ラファエル「兄上にふさわしい令嬢なら、他にもこの場にたくさんいます」
ラファエル「なぜ彼女を・・・」
ミカエル「珍しい髪色が気に入った・・・とでも、言っておこうか」
ラファエル「クッ。白々しい!!」
アガット(ラファエル・・・)
皇帝陛下「うーむ。双方の言い分は分かった」
皇帝陛下「ベリー侯爵令嬢は、まだ成人前であるからして、結婚は時期尚早・・・」
皇帝陛下「・・・」
皇帝陛下「まずはラファエルの婚約者候補から外し、 ミカエルの正式な婚約者としよう!」
「!?」
アガット(陛下の命令には逆らえない・・・)
アガット「承知・・・いたしました」

〇豪華な部屋
アガット「いきなり、我が家にいらっしゃったと思ったら・・・」
アガット「何なんですか、この装飾品の山は!」
ミカエル「私から君への、贈答の品々だ。 遠慮なく受けとれ」
アガット「こんな高価なものばかり、理由もなく受けとれません」
ミカエル「理由がない、だと? これは正式に『婚約』を結んだという証だ」
アガット「っ!」
ミカエル「第1皇子妃としての品格を守るためにも、君にはそれ相応のものを身につけてもらう」
ミカエル「私の隣で笑われることのないよう、立ち居ふるまいにも十分に気をつけろ」
アガット(何て横暴なの!?)
  でも皇室からの正式な書類に、お父様もサインせざるを得なかった。
アガット(不本意だけど、今はこの人が私の婚約者なんだわ・・・)
ミカエル「何か、言いたげだな?」
アガット「いいえ、とんでもございません!」
アガット「どうせ4つも年下の、たかが侯爵令嬢の私が何を申し上げても、聞き入れては下さらないでしょ?」
アガット「これでもミカエル殿下の前では、立ち居ふるまいに十分気をつけているつもりです」
ミカエル「・・・君は。 私との婚約が、相当気に入らないようだな」
アガット「あら、私としたことが! 隠しきれていないのであれば、申し訳ございませんわ」
ミカエル「・・・・・・」
アガット(ここまで不敬な態度をとれば、私を娶るなんて考えは消えるんじゃないかしら)
アガット(背が高くて、顔も声もいい。 地位もお金もあるんだろうけど・・・)
  私はこの人の妃になる為に、努力をしてきたわけじゃない。
  愛のない結婚は、絶対にしたくないの。
「・・・・・・」
ミカエル「令嬢はずいぶん、自由奔放に育てられたようだな」
ミカエル「君の父親は、有能な宰相だと聞いている。 失うには惜しい──そうは思わないか?」
アガット「なっ・・・」
ミカエル「まあ、いい。私も多忙だ。 今日はこの辺で失礼する」
ミカエル「次に会う時は、もう少し皇子妃らしさというものを学んでおけ」
アガット(何よ、あれ。脅し?)

〇立派な洋館
アガット「マリー! ちょっと来てちょうだい!」
マリー「お嬢様、どうされました?」
アガット「塩、じゃなくて──」
アガット「ミカエル皇子の馬車寄せに、私が今朝食べた、バナナの皮を撒いてちょうだい!」
マリー「ウフッ。 不慮の事故をよそおって、『スッテンコロリン恥ずかし作戦』ですね」
マリー「さすがです、お嬢様。 では早速、行って参ります!」
アガット「・・・」
ミカエル「うわっーー!?」
アガット「あはっ。ちょっとだけスッキリしたわ」
アガット(私を妃にするとはどういう事か、身をもって知って頂かなくてはね!)
ラファエル「アガット・・・久しぶり」
アガット「え? ラファエル殿下! どーしたんですか、急に」
ラファエル「こんな時間に悪い。大切な話があるんだ。 ちょっと、いいか?」
アガット「はい・・・」
アガット(婚約解消が決まったあの日から、1度も会えてなかった・・・)
  彼はいったい私に、何を語ってくれるんだろう。

次のエピソード:3.ラフの告白。私たちの新たな決意

コメント

  • アガットも強かだけど、マリーお前もか🤣
    しかも本当にミカエルが転んでいて、ホッコしました。
    ミカエルはラフに張り合いたいだけなのかな〜?

  • さすがわたしの見込んだ娘……バナナの皮!!🤣
    ますますアガットが可愛いし、切なそうなラフにやっぱり好きなんじゃないの~とドキドキしました💕
    これは本日中に一気読み決定です👍✨️

  • アニメを見ている感覚ですらすらと読み勧めて、い〜ところで終わってしまいました!三話へ急ぎます🙆

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