Riverside Baron ~蓬莱番外地~

山本律磨

バロンと男爵(4)(脚本)

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山本律磨

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〇荒廃した市街地
  一年後、即ち運命の日の前日。
蓬莱合唱団「スッチャカランランメッチャカバンバン!アナタもワタシも大騒ぎ!」
蓬莱合唱団「もういっちょ!」
お蝶親分「もういいよ!」
蓬莱合唱団「お、親分・・・」
蓬莱合唱団「こ、こんにちわ」
お蝶親分「毎度陽気なのも結構だけどさ。大の大人が昼日中から酒かっくらって歌って踊って、教育上よくないと思わないのかい?」
蓬莱合唱団「アチラもコチラも大騒ぎ~!」
お蝶親分「な?どうするよ」
お蝶親分「一日一度のお上からの配給だっていつまで続くか分かったもんじゃないよ」
お蝶親分「軍靴の足音ってヤツさね」
お蝶親分「つまりは・・・」
鹿沼「いつまでも借金踏み倒そうとしてんじゃねえぞバカヤロウ!」
猪頭「とっとと働いて返しやがれコノヤロウ!」
蓬莱合唱団「ひいいっ!」
蓬莱合唱団「もう少しお待ちを!」
お蝶親分「やれやれだよ・・・」
猪頭「全く近頃の河原者は不真面目でいけねえ」
鹿沼「能天気っつーか緊張感がないっつーか」
お蝶親分「良くも悪くもあの男の影響かね?」
お蝶親分「仮面のバロン」
お蝶親分「さてと、気合い入れて取り立てるよ」
鹿沼「へい!」
猪頭「うっす!」
  蓬莱街を〆る侠客、御堂一家

〇廃倉庫
ヒナ「ひの、ふの、み!」
ヒナ「ひの、ふの、み!」
お蝶親分「せいが出るね。踊りの練習かい?」
ヒナ「あ、お蝶親分こんにちわー」
お蝶親分「はいこんにちわ」
ヒナ「ではさようならー」
猪頭「逃がすか」
ヒナ「て、てめえ何すんだ止めろ馬鹿筋肉ハゲ!」
猪頭「・・・」
鹿沼「お、何かに傷ついた」
ヒナ「がるるるる!」
お蝶親分「・・・」
ヒナ「ご、ごめんなさ~い。来月まで待ってくださ~い」
ヒナ「テヘッ♪」
お蝶親分「まだ何も言っちゃいないよ」
ヒナ「うわあああん!」
ヒナ「あの馬鹿親父、今月の見ヶ〆使いこんじまったんですよおおお!」
ヒナ「おっ父う止めてよお止めてよお!お蝶親分にご迷惑だよお!」
ヒナ「ってすがりついて泣きじゃくる可愛い娘の頬を、あの鬼畜外道親父は」
ヒナ「うるせえバーンバーン!」
お蝶親分「出てこいバロン。いるのは分かってんだよ」
ヒナ「・・・すまねえ。オイラの演技力が真に迫りすぎて逆に」
「どこがだよこの大根役者」
バロン「・・・ど、どーも」
お蝶親分「とりあえず正座しようか」
バロン「ハイ」
  蓬莱街の道化師、バロン吉宗

〇空
「粗茶でございます」

〇荒れた小屋
お蝶親分「お前はアレかい?愛する一人娘を盾にして心が痛まないのかい?」
ヒナ「そーだそーだ」
バロン「いや実際、血のつながりはありませんし」
ヒナ「ガッビーン(死語)」
バロン「ヒナは我が子と言うより、むしろ同じ夢に向ってひた走る同志と言うかフレンズと言うか」
ヒナ「よく言うぜい」
バロン「フレンズなら庇い合い、助け合うのは当然かと!」
お蝶親分「助けて貰ってばっかじゃねえか!」
ヒナ「そうっすよ!もっと言ってやって下さい!仕事だってしょっちゅうすっぽかすし!」
お蝶親分「ヒナ、ちょっと黙ってておくれ」
ヒナ「はい!頑張って下さいね、親分!」
バロン「裏切者め・・・」
お蝶親分「ガキに仕事させて上前はねるなんざ義にもとるね。場合によっちゃあ・・・」
鹿沼「場合によっちゃあ・・・」
猪頭「場合によっちゃあ・・・」
バロン「ひいい・・・よらないで」
ヒナ「も、申し訳ありません!」
お蝶親分「ヒナ・・・」
ヒナ「今後財布は一切合切オイラがきちんと管理します!見ヶ〆も毎月きちんとお支払いします!ですのでどうかこの娘の顔に免じて・・・」
バロン「ヒナ。お前ってヤツは・・・」
ヒナ「半殺し程度に」
お蝶親分「よく言った」
バロン「手前ってヤツはあああ!」

〇廃倉庫
「YACHIMAINA!」
「いやあああああああん!」

〇荒れた小屋
お蝶親分「さてと、こっからが本題なんだけど」
バロン「あの・・・明日にしてもらえませんか?」
バロン「もう心と体がボロボロで・・・」
お蝶親分「明日の話なんだよ」
ヒナ「なんですかこのビラ?」
バロン「帝都大芸能博覧会?」
お蝶親分「受付は済ませておいた。それに出な」
ヒナ「すっごい!」
ヒナ「浅草って言えば芸事のメッカ!」
ヒナ「そこでの出し物なんて楽しそう!」
バロン「おうそうか!頑張れよヒナ!」
お蝶親分「参加すんのはバロンだけだ」
ヒナ「えーっ?」
バロン「えーっ?」
お蝶親分「芸人共は沢山いるんだ。一人ねじ込ませただけ感謝してほしいね」
お蝶親分「というわけだ。しっかり稼ぎな」
バロン「くそ。何で俺だけ」
ヒナ「何でコイツだけ」
バロン「コイツって言うな」
バロン「ところでヒナ」
ヒナ「なんでえ?」
バロン「お前、時々妙な袴はいてる事ないか?」
ヒナ「あれか?いまのところ大丈夫だと思うけど」
ヒナ「なんつーか『神のイタズラ』みてーなもんじゃねーか?」
バロン「神のイタズラ?何だそりゃあ?」
ヒナ「おいらもビックリしたんだ。とおい未来の世界じゃ『バグ』っていうらしい」
ヒナ「世界観メチャクチャにされちまってるよ。どういう訳か第一話だけは何ともなかったけどさ」
ヒナ「ヒカ金ユーザーの扱いなんざこんなもんだけど『神様』に文句言っても始まんねえ。まあゆっくり修正してくさ」
ヒナ「折角読んでくれてるのによ。時々袴に戻ってたら悪いな。暇みつけて直してくからよ」
オイサン「よおバロン!いるかい?」
バロン「勝手に入ってくんじゃねえやジジイ!」
リバーサイドクイーン「バロンいる~?」
バロン「どうぞどうぞ」
アーチスト「一曲やってくれたまえ」
下等遊民「配給の役人が来る前にね」
ヒナ「よっしゃあ!小銭握って待っとれや!」
ヒナ「大銭でも可!」
ヒナ「行くぜバロン!」
バロン「・・・」
バロン「着替え、早っ・・・」

〇荒廃した教会
トラ「続きましては我らが座長!」
ヒナ「炎のバイオリン!バロン吉宗!」
バロン「ふむ」
バロン「野蛮なる諸君にはいささか勿体ない曲ではあるが。バッハの無伴奏バイオリンソロ。パルテュータを・・・」
蓬莱合唱団「帝都節いってみよう!」
バロン「またか。そればっかだな手前ら・・・」
  『帝都節!』『帝都節!』『帝都節!』
バロン「しゃあねえな・・・」
バロン「そんじゃあ、みんなで歌いやがれ!」

〇荒廃した教会
  『帝都よいとこ凄いとこ~♪一度住んだら帰れない~♪』
  『星はないけどネオンはあるさ~♪母ちゃんいないけどママさんいるさ~♪』
  『見上げりゃ鉄の塔~見おろしゃ人の波~♪』
  『スッチャカランランメッチャカバンバン!アチラもコチラも大騒ぎ~♪』

〇空
  『スッチャカランランメッチャカバンバン!アナタもワタシも大騒ぎ~♪』

〇川沿いの原っぱ
バロン「おうおう。今夜も月が綺麗だねえ」
バロン「って、ジャラジャラうるせえやい」
ヒナ「へへへ・・・いい音だぜ」
バロン「ヒナ君。お金と灰皿はたまると汚れて行くものなのだよ」
バロン「だから僕が」
ヒナ「がるるるる!」
バロン「はいはいスイマセン」
バロン「まったく金、金、金と」
バロン「そんな風に育てた覚えは・・・」
ヒナ「ある!」
ヒナ「青い目と金色の髪。そのナリを武器にして金持ちどもからどんどん金を巻き上げろ。それがお前を差別した奴らへの復讐だ」
バロン「怖っ!」
バロン「アタクシそんな恐ろしいこと言った覚えはないザマス」
バロン「でもまあ、金のために踊るのも悪くねえ」
バロン「少なくとも人のために踊るよりゃ、ずっとカッコよく踊れるぜ」
ヒナ「そういうもんか?」
バロン「手前の為に踊るのが一番自由に動ける」
バロン「体が勝手に動くヤツは、一生生き続けてられる幸せものさ」
ヒナ「あはははは!」
バロン「意味分かってねえだろコノヤロウ」
ヒナ「分かるわけねえだろバカヤロウ」
ヒナ「何だ一生生き続けるって。生きてんのに生きてねえヤツいんのかよ」
バロン「さて、どうだろうな」
ヒナ「難しいこと言うなよ、父ちゃんのくせに」
バロン「ははは」
ヒナ「・・・」
ヒナ「何で父ちゃんて呼んでも返事しねえんだ?」
バロン「そうか?」
ヒナ「・・・」
ヒナ「父ちゃん」
バロン「・・・」
ヒナ「父ちゃん」
バロン「・・・」
ヒナ「バロン」
バロン「何だ?」
ヒナ「とおちゃん」
バロン「・・・」
ヒナ「とお・・・りゃんせ」
バロン「・・・」
バロン「・・・」
ヒナ「とおちゃん」
バロン「・・・」
ヒナ「バロちゃん」
バロン「何だ?」
ヒナ「バロちゃんはいいんだ」
バロン「人の名前で遊ぶな」
ヒナ「もういい。バロンはバロン」
ヒナ「それでいいや」
バロン「父ちゃんか」
バロン「・・・」
バロン「ガラじゃねえさ」

次のエピソード:バロンと男爵(5)

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