エピソード8(脚本)
〇繁華な通り
紅音は走り去っていくタクシーを見送ると、落胆した表情でガードレールに腰掛ける。
一方、紅音の向かい側では、柿之介が店頭のテレビを眺めている。
若山柿之介「おもっちょいのー、これ全部東京だべか?」
テレビにはエリートピア選考の様子が、各地に設置されたカメラによって映されている。
真田紅音「そうだよ」
若山柿之介「この大きい建物はなんだべ、ピカピカしてキレーだ」
真田紅音「それがスカイタワーだよ」
若山柿之介「え、これがスカイタワーだべか! どこにあるだか!」
柿之介が辺りをキョロキョロと見回す。
真田紅音「この辺じゃないよ。てか、たしか画面の右下に場所が書いてあっただろ」
紅音も立ち上がり、テレビの画面を見る。
しかし画面の右下には何も書かれていない。
真田紅音「え、あれ? 僕のスマホだと・・・」
真田紅音「やっぱり、地名が書いてある」
真田紅音「・・・そっか、受験生として動画サイトにログインしたときだけ地名が表示されるのか」
真田紅音「でも、なんで・・・」
〇川沿いの原っぱ
藤原一茶「まあ、親が答えられるような、そんなショボい課題エリートピアは出さん思うけどな」
藤原一茶「自力でしか解けへんようになっとるやろ、当たり前やけど」
〇繁華な通り
真田紅音「カメラの設置場所は、受験生にしか分からない・・・」
考え込む紅音。その隣では、柿之介がテレビの映像を見つめたまま興奮している。
若山柿之介「はー、こんだけたぐさん見られでたら、なんか恥ずかしいべ」
真田紅音「恥ずかしい・・・?」
〇野球場
戸川仁「我々の選考は、街中に仕掛けられたカメラで全て動画配信されています」
戸川仁「全国の視聴者のみなさまに醜態を晒すことのないよう、余裕を持って会場に到着するようにしてください」
〇繁華な通り
若山柿之介「紅音さ、紅音さ!」
若山柿之介「大丈夫だべか?」
真田紅音「・・・そうか」
紅音は突然ポケットから手帳を取り出すと、路線図のページを開く。
スマホの動画サイトと路線図を見比べると、路線図の駅をバツ印でつぶしていく。
真田紅音「飯田橋バツ、お茶の水バツ、西日暮里バツ・・・」
若山柿之介「?」
若山柿之介「あれ、一個だけバツつけ忘れてるべ」
腕時計を見る紅音。
『12:50』
若山柿之介「ちょ、紅音さ、どうしたべ!」
真田紅音「四ツ谷だ、四ツ谷に行く!」
若山柿之介「あれ、予定変更だべか」
真田紅音「人事の無駄話は関係なかったんだ!」
真田紅音「本当のヒントは、醜態をさらすなってとこ」
真田紅音「つまり、醜態をさらすような——カメラが設置されていないところ、四ツ谷に行けってことだ!」
若山柿之介「あー! そうなんだべか!」
〇自転車屋
「い、一番安いの、すぐ乗ります」
「あ、はーい。 じゃあ保険等のご説明——」
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