カタストロフィ・メモリーズ

Dickinson

1話『マサヒトとミーコ』(脚本)

カタストロフィ・メモリーズ

Dickinson

今すぐ読む

カタストロフィ・メモリーズ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇渋谷ヒカリエ
  休日出勤とか
  マジ最悪~
  まだいいじゃん
  ウチなんて
  そもそも週休2日ですらないし
  ランチタイム終わっちゃったね
  ねぇ・・・
  ん?
  どしたの?
  揺れてない?

〇荒廃した街
  半年前、
  首都直下型巨大地震
  通称『カタストロフ』が発生
  土曜日の昼下がりという
  最悪のタイミングで起きた大災害は──
  日本の中心を
  一瞬で瓦礫の山へ変えた
  俺は、
  それをテレビで知った

〇廃ビルのフロア
  はぁ、はぁ、
  上層で瓦礫の倒壊を検知
  酸素濃度低下
  排気ファン作動します
真仁(粉塵が酷いな 視界を補助しよう)
  動作補助プログラムを認証
  アシストA.I.『ミーコ』起動します
  正常に完了
  同調率62%
  ホログラムを投影します
ミーコ「ニャ~ってね」
真仁「ミーコ、視界をナイトに センサーも2アップで」
ミーコ「・・・」
真仁「ミーコさん?」
ミーコ「それで人にモノを頼む態度なのかニャ?」
真仁「なっ!? おま・・・ひ、人じゃなくて猫だし! てかA.I.──」
  アシストを終了します
真仁「助けてください! ミーコさん! お願いします!」
  アイカメラをナイトモードへ変更
  空間センサーを2段階アップ
ミーコ「親しき仲にもニャ マサヒト、調子乗っちゃ駄目ニャ」
真仁「ま、まだ出会って2週間だろ」
真仁(そもそも誰のおかげで・・・)
ミーコ「あれれ? 『ありがとう』がないニャ」
真仁「あ、あざッス! ミーコさん!」

〇ビルの地下通路
真仁「思いのほか原型を留めてるな どこも倒壊してるのに」
ミーコ「でも人の気配はないニャ」
ミーコ「ミーコ言ったニャ?」
ミーコ「ユウキは会社じゃないニャ」
真仁「でも、 どこの避難所にも病院にもいなかった」
真仁「震災当日は土曜日だ 出勤してたのかも」
  半年前の震災から
  婚約者の優希と
  連絡が取れなくなった
  家にはすぐ帰ったが
  代わりに──
  コイツがいた
  倒壊したアパートの下敷きになって
真仁「いつも仕事のことばっか 考えてたからなぁ」
ミーコ「“いない”ってことは “生きてる”ってことニャ」
「・・・」
真仁「そうだな」
真仁「これだけ探して遺体がないんだ」
真仁「アイツのことだ 『パソコンがな~い!』とか大騒ぎして あちこち避難所を渡り歩いてるのかも!」
「あはは」
ミーコ「それはないニャ」

〇非常階段
真仁「ところどころ 崩落してるな」
真仁「たしか 優希のオフィスは21階だ」
真仁「・・・」
ミーコ「・・・」
「・・・」
真仁「お、お願いします ミーコさん・・・」
ミーコ「なかなか理解が早いニャ」
  筋力サポートを起動します
  パワーレベル30%
  バッテリー残量70%
  稼働時間およそ5時間です
ミーコ「壁を登ればいいのにニャ」
真仁「人間には肉球ついてないし このスーツも30kgあんだよ・・・!」
真仁(絶対A.I.に 自意識は必要なかっただろ)
真仁(優希はとんだ開発をしてくれたもんだ)

〇近未来施設の廊下
真仁「またどこか崩れたか?」
真仁「せめて 優希のパソコンくらい 回収しとこう」
真仁(アイツのことだ)
真仁(状況が落ち着いたら すぐ取りに来そうだし)
ミーコ「ユウキの会社はなにするとこニャ?」
真仁「“お前”の開発だよ」
真仁「生体の脳をデジタル化して、 A.I.プログラムに転換(コンバート)する 技術だって言ってた」
真仁「『”魂”の研究だぁ~!』とか 言ってたけどな」
ミーコ「ニャるほど」
真仁「絶対わかってないだろ」
ミーコ「マサヒトは無職ニャ」
真仁「い、今は優希を探すためにだな──」
ミーコ「知ってるニャ “ヒモ”って言うニャ」
真仁「違うわ! 収入の格差はあったけども! お前そんな表現をどこで──」
  生体反応を感知しました
ミーコ「誰かいるニャ」
真仁「ひ、人か!?」
ミーコ「マサヒトより少し小さいくらい」
  ・・・・・・・・・
ミーコ「動いてるニャ」
真仁「行こう! 優希かも!」

〇諜報機関
???「・・・」
???「これか」
  アレックス、熱源が近付いている
  おそらく人だ
アレックス「ここの“意味”を知ってる輩だと思うか?」
  そんなはずがない
  “国家機密”だ
  ただの火事場泥棒だろう
アレックス「始末しておくか まだ探したい物もある」
真仁「え!?」
真仁「あ、あなたココで何を──」
真仁「グァッ!!」
ミーコ「マサヒト!」
真仁「ま、待て!」

〇らせん階段
  どうしたアレックス
  何があった
アレックス「援護しろスナイダー!」
アレックス「”スーツ”だ! 野郎──この”スーツ”を着てる!」
  バカな
  どこで手に──
アレックス「猫のホログラムも見えた!」
  猫、だと・・・?
  まさか軍人か?
  民間で介助用に開発されているA.I.は
  同調しやすいチンパンジーのはずだ
アレックス「知らねぇよ! 少なくとも老人を担ぐ為じゃねぇ!」
真仁「待て──!!」
真仁「ミーコ頼む! 60%までサポート上げてくれ!」
ミーコ「マサヒトの身体が壊れちゃうニャ! スポーツ選手じゃニャいんだから!」
真仁「アイツなにか知ってる! パソコン持ってった!」
真仁「この2週間で唯一の手掛かりだ!」
真仁「頼む!!」
  筋力サポート上昇
  40%・・・
  50%・・・
真仁「おぉぉぉアアアッ!!」
アレックス「速い! ──くそっ!!」

〇屋上の端(看板無し)
  スナイダー!
  “視えてる”か!?
スナイダー「待て 今・・・確認する」
スナイダー「ボリス」
ボリス「北側の通路なら もっとクッキリ“視える”ゼ」
スナイダー「だ、そうだ」
  “スリーカウント”で殺れ
スナイダー「了解」
スナイダー「3──」
スナイダー「・・・」
スナイダー「2──」
スナイダー「・・・」
スナイダー「1──」

〇黒

〇廃墟の廊下
真仁「このぉ!!」
真仁「大人しくしろ!」
アレックス「に、人間の身のこなしじゃねぇな “猫”の身体サポートか」
真仁「お前── そのパソコン・・・!」
真仁「優希のキーホルダーだ」
ミーコ「ミ、ミーコ以外にも猫を──」
真仁「ちょっと黙ってて」
アレックス「関係者か」
アレックス「生かす理由がねぇな」
真仁「パソコンをどうするつもりだ」
真仁「答えろ!!」
アレックス「お、お前」
  冷却ファンを起動します
  風量レベルMAX
アレックス「”ピット器官”って」
アレックス「知ってるか?」
真仁「・・・何の話だ」
アレックス「サーモカメラのが分かるか 20年前の新型コロナでよく使ったからな」
真仁「温度を映すカメラだろ? それが何だ!」
アレックス「“視える”んだよ」
アレックス「粉塵の中でも」
ミーコ「マサ──」
真仁「──ァガッ!!」
アレックス「“蛇”のサポートでな」
ミーコ「マサヒト!」
  胸部損傷
  心臓より出血を確認
  バイタルサイン低下中
真仁「────ァ・・・ァ!」
アレックス「瞬時に身体を捻ったな ライフル弾に反応するか」
ミーコ「マサヒト─! マサヒト──!!」
アレックス「放っといても 出血で死ぬだろうが」
アレックス「死体がここにあると 後で不自然か」
ミーコ「シャアァァ!! やめろー!!」
アレックス「スナイダー、 銃声で人が来る」
アレックス「撤退だ」

〇空
  死ぬのか・・・俺・・・
  優希──

〇綺麗な部屋
優希「単身赴任?」
真仁「というより 出張に近いかな 1ヶ月だから」
真仁「新型介助スーツの 実用化試験があるんだ」
真仁「広島の工場へ研修だって 一応、俺は主任だから」
優希「1ヶ月も・・・」
真仁「そんな顔するなよ すぐ帰ってくるから」
優希「誰が私のご飯作るの・・・?」
真仁「あ、貴女ですけど・・・?」
優希「そう・・・ 真仁は私に 1ヶ月もゼリー飲料で 耐えろと言うのね」
真仁「な、何故・・・ 興味のある研究以外は まるで向上心が生まれないんだ・・・」

〇綺麗なキッチン
優希「私・・・天才じゃない?」
真仁「・・・たしかに」
真仁「切って煮るだけだもんな・・・」
「あはは」
優希「食べよ!」
優希「私ね」
優希「猫好きなの」
真仁「まさか入れたの!?」
優希「入れないよ」
優希「好きだけど飼えないって話 何故だと思う?」
真仁「け、経済的な問題でしょうか」
優希「それもあるけど」
真仁「あるんだ」
優希「私ね」
優希「”失いたくないの”」
優希「きっと私より先に死ぬもの」
優希「大好きな誰かがいなくなって」
優希「独りぼっちで残されて」
優希「それが・・・」
優希「堪らなく怖い」
真仁「優希・・・」
優希「“死が2人を分かつまで”って 言うじゃない?」
優希「私は、死ぬ時も一緒がいい」
優希「そのためのA.I.研究なの」
真仁「そうなんだ・・・」
優希「真仁ともずっと一緒がいいな」
「・・・」
優希「はいっ!」
優希「どうぞ!」
真仁「なにが?」
優希「今だっ!」
真仁「えっ、なに、怖い!」
優希「今しかないだろ~!!」
優希「プロポーズ!!」
真仁「えぇっ!?」
優希「絶妙なパス出してるでしょ!」
真仁「ご、ごめん──」
真仁「あぁ!? 違くて! そういう意味でなくて!」
真仁「お、俺は優希のこと──」

〇荒廃した市街地
真仁「優希──!!」
真仁「どこだ──!!」
真仁「返事してくれ──!!」
真仁「お願いだから・・・」
真仁「お前が言ったんじゃないか・・・ 独りぼっちは嫌だって・・・」
真仁「猫・・・?」
真仁「・・・飼わないって・・・」
真仁「──凍ってる? なんで・・・」
真仁「優希との唯一の繋がりだ」
真仁「独りぼっちには・・・しないよ」

〇空
ミーコ「マサヒト・・・!」
ミーコ「絶対に──」
ミーコ「死なせない!!」
  筋力サポートMAX
  同調率上昇中
真仁「ニャアアアア──────!!!!」

〇黒
  ミーコ・・・

〇黒背景
  真仁をよろしくね──

〇黒背景

〇黒背景

〇近未来の手術室
???「起きたか」
真仁「い、生きてる・・・」
???「残念だが その解釈は違う」
真仁「えっ?」
???「君の身体は既に死んでいる」
???「“スーツ”の機能で 生命活動だけを維持している状態だ」
???「解るかい?」
???「脱げば死ぬ」
???「壊しても死ぬ」
???「バッテリーが切れても──」
???「死ぬ」
  俺は状況を飲み込めず
  早く優希を探さなきゃ
  それしか頭に浮かばなかった

次のエピソード:2話『メメント・モリ』

コメント

  • 素晴らしいです・・・映画を見ているようです・・・目で楽しめて、ストーリーでも楽しめて、音でも楽しめて・・・正にTapNovelの機能も、最大に引き出して凄いです・・・!!!!!!

    緊迫したシーンなのに、ミーコが猫のキーホルダー持ってたことにショック受けるシーンには癒されました・・・

    これからどうなるのだろうと気になります!!

  • 良い物語をありがとうございます。正直、最近は文字を読む事も、文章を書くことにも疲れていて、物語は殆ど読んでいなかったのですが、様々な演出と強いストーリーに惹かれ最後まで読む事が出来ました。続きを後日にでも読ませて頂きます。

  • 素材の制約の中で、スーツと猫を使ってこれだけのアイデアを!仮面ライダー的な世界観に引き込まれました。
    主人公の体の制約……これは婚約者が見つかっても生身で抱き合うことができないってことですよね。つらい……けどそういう切なさは大好物だったりもするので、どう料理されるのか楽しみです!
    まずは二話を読んできます。

コメントをもっと見る(28件)

成分キーワード

ページTOPへ