第七話 親友でいい(脚本)
〇一人部屋
空が眠るベッドの脇で体育座りをする奏羽と夕凪。
空「うっ、うー・・・ なぎ──、なぎ──」
夕凪「空、うなされてる」
奏羽「ああ」
夕凪「見守るだけで何もしてやれない」
奏羽「何で、ゆー君がいること言っちゃダメなの?」
夕凪「言ったところで、空には見えないんだよ 混乱させるだけだよ」
奏羽「それもそうだけど・・・ 空君の前で話せないのは不便だよ」
夕凪「俺達さ、魂どうしなんだから、テレパシーみたいなの使えないのかな?」
奏羽「よし! やってみるか」
奏羽「んー」
奏羽「ゆー君聞こえる?」
夕凪「おー! 聞こえるよ」
奏羽「やれば出来るもんだな」
夕凪「うん」
奏羽「でも、ゆー君はテレパシーじゃなくてよくない? 空君には聞こえないんだし」
夕凪「それもそーだけど・・・ そーちゃんだけってのも何だし、つれテレ」
奏羽「うん?」
夕凪「そーちゃん、お願いがあるんだ」
奏羽「何? 嫌な予感しかしないけど」
夕凪「空の力になってくれないか? 高一の時、俺にしてくれたように・・・」
奏羽「俺じゃムリだよ」
夕凪「空にはそーちゃんだけ見える それには何か意味があるんだよ」
奏羽「そんな事言われてもなぁ」
夕凪「そーちゃんにしか頼めないんだ」
空「うぅ・・・」
空がベッドから起き上がる。
奏羽「大丈夫?」
空「凪が・・・凪が・・・」
奏羽「落ち着いて」
空「──まだ、いたんだ?」
奏羽「どこにも行くとこないんだ。いさせてよ」
空「うん」
奏羽「ありがと まだ夜中だよ」
空「本当は、寝たくないんだ」
奏羽「寝ないと体に悪いよ」
空「夢を見るんだ。凪がいなくなる夢」
奏羽「じゃ、話でもする?」
空「僕、何でこんな非現実的なこと受け入れてるんだろ?」
奏羽「受け入れたくない現実があるからじゃない」
空「生霊だなんて・・・」
奏羽「そうだ! 俺宛の手紙、明日、病院に届けてくれない?」
空「凪が入退してた病院?」
奏羽「そう。俺、そこに入退してるから 行けば俺が本当に生霊だってことがわかるよ」
空「凪の幼馴染なんでしょ? 入院中に凪にあったの?」
奏羽「うん、会ったよ。君たちの関係は聞いてる」
空「そうなんだ。凪が話したなんて意外だな」
奏羽「君の力になって欲しいって・・・・・・ 君に会いに行くよう頼まれたんだ」
夕凪を見る奏羽。
奏羽「これで、いいんだよな!」
頷く夕凪。
空「凪が幽霊になって来てくれたらよかったのに・・・」
奏羽「見ず知らずの、しがない生霊でゴメンな」
空「こっちこそ。せっかく来てくれたのにゴメン」
奏羽(生霊が押しかけてるのに、謝っちゃうなんて)
奏羽「空君って、ちょっと天然?」
夕凪「純粋って言って!」
〇一人部屋
夕凪「おはよう」
奏羽「おはよう」
空がベッドから起き上がる。
空「寝たくないけど、目を覚ましたくもない 凪がいないから・・・ でも・・・君がいて、すこしはマシだよ」
奏羽「そっ、居座った甲斐が少しはあったよ」
空「やる事もないし、病院に行くよ」
奏羽「ほんとにいいの? だって、あの病院・・・辛くない?」
空「行かなきゃ、君が本当に風見奏羽の生霊かわからないでしょ?」
奏羽「まぁ、そうだけど」
空「用意するから」
空がベッドルームを出て行く。
夕凪「そーちゃん、ありがと」
奏羽「何が?」
夕凪「いや・・・ そーちゃんが親友でよかった」
〇病院の廊下
夕凪「そろそろ、手離してもいいんじゃない?」
奏羽「あっ、ああ」
〇病室(椅子無し)
奏羽の後について空が病室に入ってくる。
夕凪は少し離れて二人を見守る。
ベッドには(風見奏羽)のネームプレートが付いている。
空「ほんとに風見奏羽くん入院してるんだ」
奏羽「ああ、俺だろ!」
奏羽がベッドに横たわる自分の顔を指す。
空「ちょっと目瞑ってみて」
空がベッドに横たわる奏羽と生霊の奏羽を見比べる。
空「うーん、そうかな」
奏羽「でしょ」
空「で、確認したはいいけど、この後どうしたらいいの?」
奏羽「あっ、何も考えてなかった」
「・・・・・・」
奏羽の母「あら? 奏羽のお友達?」
奏羽の母が病室に入ってくる。
空がペコリとお辞儀をする。
空「あっ、あの・・・ 夕凪君の友人で新倉空といいます」
奏羽の母「ゆー君のお友達? 奏羽の母です」
空「えっと・・・ 夕凪君に頼まれて、これを渡しに」
空が奏羽宛の手紙を手渡す。
奏羽の母「ゆー君から? 何かあったの?」
空が奏羽をチラリと見る。
奏羽は首を横に振る。
空「いえ 夕凪君ちょっと会いに来られなくて・・・ 代わりにきました」
奏羽の母「そうなの・・・ 奏羽とゆー君、小さい頃から本当に仲が良くてね」
奏羽の母「奏羽、ゆー君から手紙もらったわよ」
空「あの、奏羽君の容体は?」
奏羽の母「怪我は大した事なくて、脳にも異常はないようなんだけど、意識が戻らなくて」
空「そうなんですか・・・」
奏羽の母「目を覚ましたら、この手紙渡すわね」
空「よろしくお願いします」
奏羽の母「ゆー君とも、会いたいわね」
空「すいません じゃ、失礼します」
奏羽の母「来てくれてありがとね よかったら、また来てね」
空「はい」
ペコリと頭を下げると病室を後にする空。
その後ろを奏羽と夕凪がついて行く。
奏羽「ゆー君、あの手紙に何が書いてあるの?」
夕凪「内緒。早く体に戻って読んでよ」
奏羽「──ゆー君は、それでいいの?」
夕凪「何が?」
奏羽「何でもない」
奏羽(体に戻ったら・・・ 生霊じゃ無くなったら・・・ もう会えなくなるかもしれないよ)