第八話 桜は綺麗?(脚本)
〇病院の廊下
空「まだ、着いてくるの?」
奏羽「うん、いいかな?」
空「別にいいけど。遠回りして帰るよ」
〇研究施設の玄関前
奏羽「はい」
奏羽が夕凪に手を差し出す。
夕凪「お世話かけます」
夕凪が差し出された手をとる。
〇桜並木
桜の花びらが舞うなか多くの人々が行きかっている。
空「去年、凪と一緒にココに花見に来たんだ。『来年も一緒に来ようね』って言ってたのに」
奏羽(一緒に来てるよ)
空「ねぇ、桜、綺麗?」
奏羽「綺麗だよ」
空「そう・・・ 変だな、凪と見た時みたいに綺麗に感じない」
奏羽「・・・」
奏羽「空君に申し訳ないよ 今まで見た桜で一番綺麗に感じる」
奏羽は夕凪と繋いだ手を見つめる。
奏羽「ゆー君は? 桜、綺麗?」
夕凪「綺麗だよ 去年見た桜の次に・・・」
桜並木を歩く空の後ろ姿を奏羽と夕凪が見つめる。
〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
奏羽「ご飯、そんだけ?」
空「別に食欲無いし、死なない程度に食べればいいんだよ」
奏羽「よかった。生きる気はあるんだな」
空「大丈夫。自殺したりしないよ 自殺だと天国に行けないかもしれないからね」
奏羽「信心深いんだな」
空「夕凪と同じ所に行くため 念の為だよ」
空は、無表情でカップ麺をすする。
空「ねぇ、君と凪はただの幼馴染じゃないよね?」
奏羽「残念ながら、夕凪にとって俺は ただの幼馴染だよ」
空「君にとっては? だって、生霊って恋敵を呪い殺しに来るものでしょ?」
奏羽「知らんし、そんな常識」
空「知らない? 源氏物語? 六条御息所が夕顔と葵の上を・・・」
奏羽「いや俺、古典苦手だったし」
空「ああ、ごめん」
奏羽「俺は・・・ずっと好きだったよ」
空「じゃ、もっと前に君に会ってたらライバルだったんだ」
奏羽「それはないよ。夕凪は俺とは友達でいることを望んでたからね」
空「でも、凪は君にだけ手紙を残した 凪にとっても君は特別だったんじゃない?」
奏羽「特別な・・・親友だよ」
空「僕に会うよう頼まれたって言ってたけど、凪といつあったの? 凪から病気のこと聞いてたの?」
奏羽「聞いてないよ。事故って病院に運ばれた時、凪の幽霊に会って、君のこと頼まれた」
空「そんな話信じられないよ」
奏羽「今さら? 生霊の存在は受け入れてるのに?」
空「じゃ、なおさら君は凪にとって特別な存在ってことだね 僕の所に凪の幽霊は来てくれなかった」
奏羽「違うよ。俺が、事故った時、夕凪のことを強く思ったから・・・俺が執着したからだよ」
空「もういないんだから、嫉妬しても仕方ないね」
奏羽「嫉妬してるのは、こっちだよ 夕凪が最後に頼んだのは空君の事なんだから」
空「今夜もいてくれる? 一人じゃ眠れそうにないんだ」
奏羽「いいの?」
空「君がいると、何故か凪といるみたいで・・・ 君が凪の特別だからかな」
奏羽「呪い殺すかもしれないよ」
空「やれるものならやってみて」
空がリビングを出ていく。
奏羽「ゆー君。辛いよ 空君を騙してるみたいで・・・ お前は隣にいるのに・・・」
夕凪「そーちゃん。ゴメン 手を離せば俺はココから消えるよ」
奏羽「病院で一人になってもいいの?」
夕凪「それは・・・ でも、空の側にいてやって欲しい」
奏羽「ゴメン、脅すようなこと言って お前の側にいたいから、この手は離さないよ」
〇一人部屋
奏羽「眠れないの? 空君の話してよ?」
空「つまんないよ」
奏羽「いいじゃん時間はたっぷりあるんだし」
どんどん三人の心がすれ違っていってしまうような描写、とても切ないですね。
『早ければ』という、時折出てくるワードが余計に悲しくて、胸がキュウッとなりました。
どんなエンディングに向かっていくのだろう、まだまだ分かりませんね……(;_;)