死神の娘

Akiyu

愛されてない私(脚本)

死神の娘

Akiyu

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〇市街地の交差点
死神の娘「新谷満里奈。16歳。トラックに轢かれて即死。事故死かあ・・・。若いのに可哀想に」
死神の娘「はぁ・・・。きっと泣きわめいてなだめるの大変なんだろうなあ」
死神の娘「気が重いよ・・・。嫌だなあ・・・」
死神の娘「こんにちは」
新谷満里奈「こんにちは」
死神の娘「私は死神です。お迎えに上がりました」
新谷満里奈「おおっ!!死神!!本当にいるんだあ!!」
新谷満里奈「でも死神って鎌とか持っててもっと骸骨みたいな怖い感じの化け物かと思ってた」
死神の娘「それはお父さん」
新谷満里奈「えっ、そうなの!?新説だー!!」
死神の娘「あなたは死にました。今から死後の世界へご案内します」
新谷満里奈「おお、死後の世界!!やっぱりあるんだ!!私、信じてたんだぁ!!」
死神の娘「・・・ふ、普通はこう・・・もっと泣きわめいたり取り乱したりするんですけどね」
死神の娘「おかしいな。あなたみたいなタイプの魂は、見た事がない」
新谷満里奈「だって死後の世界だよ!!見た事ない世界ってワクワクするじゃない!!」
死神の娘「ワクワク・・・?」
死神の娘「あなたは若くして亡くなったのに、どうしてそんなに楽しそうなのですか」
死神の娘「もっと現世でやり直したかった事とか後悔の気持ちがあるんじゃないですか?」
新谷満里奈「ない。私、早く死にたかったから」
死神の娘「でも死因は、自殺じゃないですね」
新谷満里奈「だって自殺はいけない事でしょ?」
  私は首を傾げた。
死神の娘(なんか・・・よく分からない不思議な子・・・)
死神の娘「と、とにかく・・・。説明させて頂きますね」
死神の娘「死者の魂は、最後に1回だけ夢枕に立つことができます。そこで最後のお別れをしてください」
死神の娘「誰の枕元に立ちたいですか?」
新谷満里奈「うーん、別にいいよ。いらない」
死神の娘「えっ!?」
新谷満里奈「私は誰からも愛されてないから」
死神の娘「そんなことないですよ。誰にも愛されない人なんていません」
新谷満里奈「どうかな。皆私が死んで厄介事がなくなって清々してるんじゃないかな」
死神の娘「だったらお葬式の様子を見に行ってみますか?」
新谷満里奈「そうね。じゃあ行ってみようかな」

〇葬儀場
担任の先生「まさか事故死とは・・・」
教頭先生「先生も大変ですね。自分のクラスの子が事故死だなんて」
担任の先生「ええ。ですがここだけの話。新谷は問題児でした。好奇心旺盛で何にでも首を突っ込み、トラブルメーカーでした」
教頭先生「つまり正直なところ、今回亡くなってくれて少しホッとしているわけですな?」
担任の先生「あまり大きな声では言えませんがね」
教頭先生「新谷の素行の悪さは、上にもあがってきてましたからな」
担任の先生「ええ。次はどんな問題を起こされるのかと思うと頭が痛くて痛くて・・・」
教頭先生「トラックの運転手、居眠り運転だったらしいですな」
担任の先生「ブラック企業の社員だったらしいです。無茶苦茶な勤務体系のせいで、疲れていたとか」
教頭先生「ほう。ブラック企業も役に立つじゃないか」
担任の先生「全くです。ははは」
死神の娘「ひどい・・・」
新谷満里奈「ほらね。先生たちなんてそんなものだよ。厄介事がなくなって清々してるんだって」
死神の娘「学校で問題ばかり起こしていたんですか?」
新谷満里奈「うーん。まあね。私、学校嫌いでさ。よく授業サボって街をぶらついて遊んでたんだよね」
死神の娘「なるほど。いわゆる不良だったのですね」
新谷満里奈「学校に行けばクラスの子達にはいじめられるし、先生も私の事嫌いだし」
新谷満里奈「私に居場所なんてなかったんだ。だから早く死にたいなって思ってた」
死神の娘「そんな・・・。でも悲しんでくれる人も絶対いるはずだよ。お母さんとかさ」
新谷満里奈「お母さん。私に厳しいんだもん。私の事なんてきっと嫌いだよ」
死神の娘「どうして?」
新谷満里奈「私ね。小さい頃に生んでくれたお母さんが死んじゃって、今のお母さんは、再婚したお母さんなんだ。だから血は繋がってないの」
新谷満里奈「お父さんは私の事なんて、ずっと放置だし。興味ないんだよ」
新谷満里奈「だから家族にも愛されてないの」
新谷幸恵「満里奈・・・。満里奈・・・。ううっ・・・ううっ・・・」
新谷幸恵「うわあああああーー・・・。満里奈ぁ・・・」
運転手「申し訳ございませんでした・・・」
新谷幸恵「人殺し!!人殺し!!出て行ってよ!!なんであんたが生きてて、満里奈が死ななきゃいけないのよ!!」
運転手「申し訳・・・ございませんでした・・・」
新谷満里奈「おかあ・・・さん?」
死神の娘「あんなに取り乱して・・・。やっぱり満里奈さんの死が悲しいんだよ」
新谷満里奈「そんなことない!!お母さんは私の事が憎いはずなんだよ」
新谷幸恵「満里奈・・・。ごめんね・・・。ごめんね・・・」
新谷幸恵「お母さんが悪いの・・・。ごめんね・・・。ごめんなさい・・・。うっ・・・ううっ・・・」
死神の娘「どう?これでも誰からも愛されてないって思う?」
新谷満里奈「わかんない・・・。わかんないよ」
死神の娘「だったらさ、夢枕に立って直接お母さんと話してみたら?」
新谷満里奈「そんなの・・・。怖いよ・・・」
新谷満里奈「また私が愛されてないことが分かったら、私辛いよ」
死神の娘「そんな事ないと思うな。勇気出してみようよ。ね?」
新谷満里奈「わかった・・・。お母さんの夢枕に立って話してみる」
  こうして、満里奈さんはお母さんの夢枕に立つ事にしたんです。

〇幻想空間
新谷満里奈「お母さん」
新谷幸恵「満里奈・・・?満里奈なの!?」
新谷満里奈「うん。そうだよ」
新谷幸恵「ううっ・・・ごめんね・・・。ごめん・・・」
新谷満里奈「なんで謝るの?」
新谷幸恵「お母さん。満里奈にちゃんと学校に行って欲しかったの。何でも話して欲しかった」
新谷幸恵「そうしたらいじめられてた事も相談に乗れてたし。気づいてあげられなかった・・・。ぐすっ・・・」
新谷満里奈「いいんだよ。言わなかった私が悪いんだし」
新谷幸恵「お母さんね。満里奈に厳しくしてたでしょ?実はね。お母さんも昔、学校よくサボってたんだ」
新谷幸恵「そのせいで苦労してね。だから満里奈にはきちんと学校に行って欲しかった」
新谷幸恵「将来、立派な大人になって欲しかった。だから厳しくしすぎたんだ」
新谷幸恵「私が満里奈のお母さんになるって決めてから、必死だったの」
新谷満里奈「そっか・・・。じゃあ私の事、嫌いなんじゃなかったんだ」
新谷幸恵「大好きに決まってるじゃない。血は繋がっていないけど、満里奈を世界一愛してるわ」
新谷満里奈「えへへ。よかった」
新谷満里奈「冥土の土産にってやつかな?良い言葉聞けちゃった」
新谷幸恵「もういくの?」
新谷満里奈「うん。そろそろ時間みたい」
新谷幸恵「満里奈ぁ・・・。嫌だよ・・・。行かないで・・・。お母さん、満里奈ともっと一緒にいたかったよ・・・」
新谷幸恵「ううっ・・・ぐすんっ・・・」
新谷満里奈「お母さん。あのね?」
新谷満里奈「今まで育ててくれてありがとう。厳しかったけど、私の為を想って愛してくれてありがとう」
新谷満里奈「今度また生まれてくる時は、またお母さんの子がいいな」
新谷幸恵「満里奈・・・。満里奈ぁ・・・ぐすっ・・・」
新谷満里奈「じゃあね。私、あの世で先に楽しんでるから。お母さんは、ゆっくり来てね」
新谷満里奈「あっ、そうだ。来た時には、私があの世の良いスポットを案内してあげるね。それじゃあね」
新谷幸恵「もう・・・。あの世は観光地じゃないのよ」
新谷満里奈「それじゃ、いってきます」

〇幻想2
死神の娘「ほらね。お母さん、満里奈さんの事を大事に思っててくれたでしょ?」
新谷満里奈「そうだねえー。あーあー、せっかくあの世に行く気満々だったのに、ちょっと帰りたくなっちゃったよ」
新谷満里奈「そうだ!!ねえ、死神さん。ひとつだけお願いして良いかな?」
死神の娘「お願い?」

〇女の子の一人部屋
新谷幸恵「あら?満里奈の机の上に何か置いてあるわ」
新谷幸恵「これは・・・?写真?」
新谷幸恵「私と満里奈が写ってるわ。どうやって撮ったのかしら」
新谷幸恵「全く覚えがないわ」
新谷幸恵「・・・でも良い写真。飾っておこうかしら」

〇幻想2
死神の娘「まさかお母さんとのツーショット写真を撮ってくれだなんて」
死神の娘「死神界にある特殊なカメラで撮った写真だから、魂と現世で存在する人が一緒に写せるカメラだけど」
死神の娘「お父さんが大切にしてるカメラだったから、こっそり借りてくるの苦労したんだからね」
死神の娘「ま、多分大丈夫でしょ」
死神の娘「そういえば私もお父さんとのツーショット写真なんて撮った事ないなあ」
死神の娘「でもお父さんって写真に撮っても映えなさそう」
死神の娘「ただの心霊写真みたいになりそうだなあ」
死神の娘「さてと・・・。 次はどんな魂に出会えるかなあ」

次のエピソード:最後の一球

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