死神の娘

Akiyu

直せなかったもの(脚本)

死神の娘

Akiyu

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〇古風な和室(小物無し)
  今日も私は、現世で亡くなった魂を死後の世界へ導く仕事をしている。
  お父さんってば顔が怖いし鎌を持ってるから、亡くなった魂達から不評なんだ。
  だから最近は、私も魂を導く仕事をしている。
死神の娘「こんにちは。私は死神です」
おばあちゃん「こんにちは。おやおや・・・・・・随分可愛らしい死神さんだねぇ。ホッホッホ」
死神の娘(穏やかなご老人だ。この魂は、現世では老衰で亡くなっている)
死神の娘(余生を心穏やかに過ごしてきたのだ。もう思い残すことはないのだろう)
死神の娘(泣きわめいたり取り乱したりしないから、扱いやすそうだ)
死神の娘(やれやれ・・・。今日の仕事は、久しぶりに楽できそうだ)
死神の娘「私は、死後の世界へ案内する仕事をしています」
おばあちゃん「おお、それはそれは・・・。小さいのに偉いねぇ。私の孫くらいの歳の子だねぇ」
  そう言って老婆は、私の頭を撫でた。
  私は、お父さんみたいな立派な死神ではなく、まだまだ未熟な死神だけど、死神を小さな子供扱いして頭を撫でられるのは困る。
死神の娘「ちょ、ちょ、ちょっと・・・!!」
死神の娘「あ、頭を撫でないでください」
おばあちゃん「ほほほ。可愛らしいねえ」
死神の娘(これでは、死神としての威厳がまるで保てない。もう少し恐れて頂かなければ・・・)
死神の娘(あ、そうだ。良い事を思いついた)
死神の娘「死者の魂は死神が守る。だから死神への敬意は、忘れないように」
おばあちゃん「ええ、そうなんですねえ。ありがたいことですねえ」
死神の娘「もしも死神に逆らうようなことがあれば、舌を引っこ抜かれて地獄へ落ちる事を覚えておくように」
死神の娘(うんうん。ちょっと怖そうなイメージも持たせておかなくちゃね)
おばあちゃん「ほほほ。死んだのに舌を引っこ抜かれても何も怖くないねえ」
死神の娘(うそぉ!?おばあちゃん、肝座ってるーー!!)
死神の娘「と、とにかく・・・。死神には逆らわないように」
おばあちゃん「はいはい。分かりましたよ。そういう決まりなんですねえ」
死神の娘「では改めまして・・・。死者の魂について説明したいと思います」
死神の娘「死者はその通り、現世での人生を全うし、亡くなった者の事を指します」
死神の娘「そして死者の魂となり、亡くなる直前の容姿の状態で魂となり、あの世へ導かれる存在となります」
死神の娘「そしてあの世へ導く案内役が私達、死神なのです」
おばあちゃん「偉いねえ。噛まずによく言えたねえ」
  そう言っておばあさんは、私の頭を撫でてくる。
死神の娘「だ、だから頭を撫でないで下さい!!」
死神の娘「そして次が重要です。よく聞いてください」
おばあちゃん「うんうん。何かねえ?」
死神の娘「死者の魂は、最後に一人、会いたい人に会う事ができます」
死神の娘「ほら、夢枕に立つって言葉聞いた事ないですか?あれです」
おばあちゃん「おおー、夢枕に立てるんだねえ。あれ一度やってみたかったんだよ。ほほほ」
死神の娘「一度限りで一人の人にしか立てませんから、よく考えてくださいね」
おばあちゃん「うーん、そうだねえ・・・」
死神の娘「最後に誰に会って何を伝えますか?」
おばあちゃん「理香・・・」
おばあちゃん「孫娘に会いたいねえ」
死神の娘「お孫さんですか。娘さんでなくていいんですか?」
おばあちゃん「ああ。娘とは長い時間を過ごしたからね。理香に最後のお別れを言いたいね」
死神の娘「分かりました。では今晩、夢枕に立ちましょう。夢枕に立てるタイムリミットは、死んでから24時間以内ですからね」
おばあちゃん「ほほほ。さてどう伝えたものかねえ・・・」
  私達は、夜が来るのを待った。おばあさんの孫娘の理香さんに最後の言葉を伝える為に。
  そしていよいよ、夢枕に立つ時がきた。

〇幻想空間
おばあちゃん「理香。理香や」
理香「んっ・・・。おばあ・・・ちゃん?」
理香「おばあちゃん!!!!!!!!」
おばあちゃん「最後に会いに来たよ。もうお別れだからね」
理香「ううっ・・・ううっ・・・」
おばあちゃん「おやおや。泣くんじゃないよ」
おばあちゃん「せっかくのおばあちゃん似の美人が台無しじゃないか」
理香「ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・」
おばあちゃん「もういいんだよ。おばあちゃんの力不足だったんだよ。理香の大切なぬいぐるみ、直してあげられなくてね」
理香「ううっ・・・。違うの。私がおばあちゃんに酷い言葉を言ったから。それで・・・ぐすっ・・・」
理香「おばあちゃん死んじゃって。もう謝る事もできなくて・・・。ぐすっ・・・」
おばあちゃん「私がもっと裁縫が上手ければねえ。おばあちゃん不器用だからごめんねえ」
おばあちゃん「理香に最後に謝りたくて、おばあちゃん理香に会いに来たんだよ」
理香「ありがとう・・・。ありがとう。おばあちゃん・・・」
おばあちゃん「おばあちゃんね。可愛らしい死神さんに会ったんだよ」
理香「ぐすっ・・・。死神さん?」
おばあちゃん「ああ。その子はね、とても良い子で、理香と同い年くらいの良い子でね」
おばあちゃん「死神さんを見てると、理香に会いたくなっちゃったんだよ」
理香「ふふ、そうなんだ」
おばあちゃん「これでもう心残りはないねえ」
おばあちゃん「理香、身体に気を付けるんだよ。人間、健康が一番大事なんだ」
理香「うん・・・」
おばあちゃん「最後にひとつ、理香にプレゼントがあるんだよ」
理香「プレゼント?」
おばあちゃん「おばあちゃんの家のタンス、見てごらん」
おばあちゃん「それじゃあね。そろそろお迎えが来たようだ。おばあちゃんは行くよ」
理香「待って!!!おばあちゃん!!おばあちゃああああん!!!」

〇幻想2
死神の娘「ねえ。おばあちゃん。聞いても良い?」
おばあちゃん「ん?どうしたんだい?」
死神の娘「最後に理香さんにプレゼントがあるって言ったけど、タンスには何が入っているの?」
おばあちゃん「ああ、それかい。それはねえ・・・」
おばあちゃん「理香が気に入ってくれるものだといいんだけどね」
死神の娘(何だろう・・・)
おばあちゃん「最後にもう一つ、可愛い死神さんに頼みがあるんだけどいいかね?」

〇古風な和室(小物無し)
理香「タンスの中・・・?」
理香「でもあれは、ただの夢・・・だよね?」
理香「まさか何かが入っているなんてことないと思うんだけど」
  理香はタンスを開けた。
理香「あっ・・・。ああっ・・・!!」
理香「うっ・・・。ううっ・・・。おばあちゃん・・・」
  タンスの中から出てきたのは、理香が大切にしていたぬいぐるみが綺麗に直されたものだった。
理香「でもどうして?」
理香「おばあちゃん。お裁縫苦手だったはずなのに・・・」
  まさか私にぬいぐるみを直してくれと言われるとは、思わなかった。
  幸いにも、お裁縫は得意だからぬいぐるみを直すなんて簡単な事だった。
理香「手紙が入ってる」
理香「何だろう?」
理香「死神さんにぬいぐるみ直すのを手伝ってもらいました。おばあちゃんより」
理香「ぷっ。あははは。あはははは」
理香「おばあちゃんったら、死神さんに何させてるのよ」
  理香は手紙を読みながら涙を流しながら笑っていた。
  その涙の意味は、嬉しい意味と悲しい意味の二つの意味を持った涙だろう

〇幻想2
死神の娘「はぁー・・・。終わったぁ・・・」
死神の娘「まさか最後にお裁縫させられるとは思わなかったなあ・・・」
死神の娘「お父さんだったら絶対できてないからね」
死神の娘「さてと・・・ 次の魂を導きに行こうかな」

次のエピソード:愛されてない私

コメント

  • とてもいいお話でした。これアニメにしたら絶対泣いちゃうやつです。死神の娘さん、これからも楽しいことや辛いこと、いろいろな出会いが待っているんでしょうね。

  • 夢枕のチャンスがあるって素敵。それで心残りがなくなるのであれば更に良し。人間味のある死神さん。続きが楽しみです^_^

  • おばあさんと死神さんの心温まる会話に感動。おばあさんが死神さんに手伝ってもらって、孫娘のぬいぐるみを直したのに感動。全てのお話に感動しました。

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