チャリキルアニキの大車輪

快亭木魚

第一輪 荒野に咲いた一輪花 (脚本)

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快亭木魚

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〇シックな玄関
  人は輪に入らずにはいられない
マキ「兄!来たよ」
マキ「玄関開けてすぐ。私は驚愕の光景を目にした」
マキ「兄貴!その姿は・・・!」
マキ「頭から両手、腰から足先まで。兄は全身にチャリを身にまとったチャリ着る人間になっていたのだ」
チャリキルアニキ「久しぶりだな!マキ!」
マキ「どうなってんのそのチャリ?触るよ」
マキ「うわ!自動的に各チャリの車輪が回ってる!」
チャリキルアニキ「マキに会ったら元気出てきたぜ」
チャリキルアニキ「どうだ。「いいチャリ乗ってんね」と思ったろ?」
マキ「いやそんな「いい波乗ってんね」風に言われても」
マキ「兄大丈夫か?確かに兄は昔からチャリで走り回る人間だったけど」
マキ「全身にチャリを着る狂った人間じゃなかっただろ!兄どうした?」
チャリキルアニキ「心配するな!俺は大丈夫。車輪の回転のおかげで頭の回転も速くなってる!」
チャリキルアニキ「今日もチャリキッていくぜ!」
マキ「やべえよこの兄!しゃべりまでチャリに侵されてるよ!」
マキ「チャリキるって何だよ!チャリを着て張り切るの意味かよ!意味が何となく通じるのが逆に嫌」
チャリキルアニキ「チャリを着てから楽しくてさ。心のペダルを踏みっぱなしだ!」
マキ「マジどこからツッコんだらいいのか」

〇明るいリビング
マキ「色々確認したい!」
マキ「全身にチャリを着たら重いだろ!ちゃんと動けるのか?」
チャリキルアニキ「見ろよこの動き!」
マキ「兄は全身にチャリを着たまま軽々と宙を舞った!」
マキ「しかも車輪をうまく使い壁や天井も乗りこなしてる!」
マキ「驚くしかなかったよね」
チャリキルアニキ「うん!調子がいい!」
チャリキルアニキ「全身立ち漕ぎ状態だぜ!」
マキ「確かに元気だ。むしろ身体能力が上がってる」

〇アパートの台所
マキ「兄!食事は大丈夫なのか?チャリ着て味覚変わってるんじゃないか?」
チャリキルアニキ「心配すんなよ!毎日食のペダルを踏みっぱなしだ!」
チャリキルアニキ「最近はドーナツにハマってる!」
チャリキルアニキ「見ろよ!この艶やかな輪!惚れ惚れするだろ?」
チャリキルアニキ「輪(りん)としている!」
マキ「車輪から離れろよ!」
マキ「食事の好みまで車輪絡みになってる!ヤバいぞこれは!」

〇一人部屋
マキ「兄!まさか寝る時もずっとチャリを着たまま?」
チャリキルアニキ「おいおい妹よ・・・」
チャリキルアニキ「俺が全身放置自転車をやらかすような男だと思ったのか!」
チャリキルアニキ「駐輪!」
マキ「身体中のチャリが兄の背中に集まっていく!」
チャリキルアニキ「安心しろ!シャワーや寝る時はこうやって背中に縦列駐輪してあるぜ!」
チャリキルアニキ「全てのチャリが付くように極めた俺の背中は・・・」
チャリキルアニキ「付極(つきぎめ)駐輪場だ!」
マキ「「うまいこと言った」って顔すんな!」
チャリキルアニキ「寝る時に沢山の車輪で背中をマッサージするんだ!」
チャリキルアニキ「気持ち良くて毎日快眠できるよ!」
マキ「いや背中にチャリ駐輪したら寝にくいだろ!」
チャリキルアニキ「むむ。そう言われると最近確かに疲れがとれにくい」
チャリキルアニキ「記憶もちょいちょい飛んでる気がする・・・」
マキ「ヤバいよ兄それは!」
マキ「兄!3か月前に会った時はまだ普通だった!最近何が起きてチャリキルアニキになったんだ?」
チャリキルアニキ「チャリキルアニキ!いい響きだ!」
チャリキルアニキ「よし!何があったか思い出す為に外に出よう!」

〇開けた交差点
  マルチャリが外に出た。監視を続ける。どうぞ
マキ「外に出る際は大きいリュックで背中に停めたチャリを隠そう」
チャリキルアニキ「全身にチャリを着たい・・・」
チャリキルアニキ「身体で車輪を感じたい!」
マキ「禁断症状みたいになっとる!」
マキ「我慢だ兄!全身にチャリを着てたら怪しまれる!」
チャリキルアニキ「兄として妹の意見は尊重しねえとな」
マキ「さすが兄!」
マキ「チャリキルアニキになったきっかけは思い出せる?」
チャリキルアニキ「たしかいつもみたくチャリで大学に向かって・・・」
チャリキルアニキ「そうだ!クノウから・・・友達からサークルの新歓のチラシをもらったんだ!」
マキ「何だこのサークルは?「人の輪を広げよう」しか書いてない!うさんくさい」
チャリキルアニキ「このサークルの部室に行ってから・・・おかしくなった」
マキ「よし。この部室に行ってみよう」
マキ「バンド仲間に練習遅れるって留守電しとく」
マキ「トイ遅れる!ごめん」

〇ジャズバー
トイ「マキ、プレスト気味の急いだ口調だった」
トイ「嫌な予感がする・・・」

〇生徒会室
チャリキルアニキ「こんにちは!」
フカダ「人との輪を広げるサークル『エキスパンズ』にようこそ!」
フカダ「支部長のフカダです」
ミツワ「挨拶係のミツワだ」
フカダ「あなた達は新入生?」
チャリキルアニキ「はい。1年のリキです」
マキ「私は高3のマキ。兄の付き添いです」
フカダ「あら。きょうだいで見学!」
フカダ「お茶をどうぞ」
チャリキルアニキ「いただきます!茶が理にかなったうまさだ!これぞ茶理(チャリ)!」
マキ(兄!チャリから離れろよ!)
マキ「美味しいですね!兄も喜んでいます!」
フカダ「喜んでもらえて嬉しいわ」
チャリキルアニキ「実は・・・先日ここのサークルの新歓に参加してからちょっと身体の調子がおかしくて」
マキ「何か心当たりはありませんか?」
フカダ「さあ?分からないです」
フカダ「ミツワさん、何か心当たりあります?」
ミツワ「うーん。残念ながら君の体調不良の原因は分からない」
ミツワ「ただ一つ分かったことがある」
ミツワ「お前らきょうだいが警戒心のゆるいおバカさんだってことがな!」
チャリキルアニキ「ちくしょう!なんだか眠くなってきた!」
マキ「茶に何か入れたな・・・!ダメだまぶたが重くて目を開けられない・・・!」
ミツワ「すぐに眠ったな。バカな奴ら」
フカダ「計画通り。ミツワさん、あとはよろしくお願いします」

〇荒廃した教室
チャリキルアニキ「むにゃ・・・先生・・・『車輪の下』を読んだよ・・・」
チャリキルアニキ「はっ!いかん!眠っていた!」
チャリキルアニキ「どこだここは?」
ミツワトライク「やっと起きたな。この旧サークル棟に人はいない。助けを呼んでも無駄だぜ」
チャリキルアニキ「なんだこれは!輪で身体を縛られてる!しかも頭に三輪車が乗ってる!」
ミツワトライク「そうだ。輪とは人を縛るもの・・・」
ミツワトライク「輪ゴムは小物を縛り、婚約指輪は相手を縛る」
ミツワトライク「そして支部長のフープと俺の三輪車はお前を縛るのさ」
ミツワトライク「俺はミツワトライク!三輪車を着こなすミラクルな男だ!」
チャリキルアニキ「妹の姿が見えねえ。てめえ!妹をどこにやった!」
ミツワトライク「さあな。知りたければ自分で輪から脱出してみろチャリキル!」
ミツワトライク「お前がチャリ着る人間だということは調べ済みだ!」
チャリキルアニキ「さん、に、いち」
チャリキルアニキ「スタート!」
ミツワトライク「何ぃ!一瞬で全身にチャリをまとい支部長のフープと俺の三輪車を吹っ飛ばしただと!」
ミツワトライク「チャリキル・・・てめえは噂通りに危険な奴だ!」
ミツワトライク「俺の三輪パンチを喰らえ!」
ミツワトライク「三輪車で勢いをつけたパンチを3回浴びせる!」
ミツワトライク「三輪車をなめるなよ!世界中で三輪車レースが開催されてる程奥深い乗り物なんだ!」
チャリキルアニキ「効かねえ!」
ミツワトライク「何ぃ?俺の三輪パンチを全て身体中のチャリで防いだというのか!」
  チャリーン
チャリキルアニキ「自転車をなぜチャリンコと呼ぶのか・・・」
チャリキルアニキ「諸説あるが最も有名なのがベルのチャリーン音を表しているという説だ・・・」
チャリキルアニキ「そう・・・チャリの本質はベルの音にあり!」
ミツワトライク「おう!ベル鳴らしてんじゃねえ!むやみに鳴らすのはマナー違反だ!」
チャリキルアニキ「いや!歩行者に危険が迫っているならベルを鳴らすのが自転車の義務!」
チャリキルアニキ「てめえに危険が迫っているとベルで警告してやってんのさ!」
ミツワトライク「こいつ!俺とやるってのか!」
ミツワトライク「なんだ?何が起きた?俺が尻餅をついている!」
チャリキルアニキ「チャリの回転の勢いを利用してケリを喰らわせてやった」
チャリキルアニキ「チャリの回し蹴り・・・回転チャリキックだ!」
ミツワトライク「既にここまでチャリを使いこなしているのか!」
ミツワトライク「とんでもねえ野郎だ、てめえは!」
チャリキルアニキ「俺のスマホが鳴ってる!」
チャリキルアニキ「もしもし!誰だ?」
フカダ「監視ドローンで観ました。流石総帥の予言通りの危険人物」
チャリキルアニキ「おいてめえ!妹をどこにやった?」
マキ「兄!こいつらヤバい!関わっちゃダメだ!」
フカダ「全く騒がしい妹さんですね」
フカダ「妹さんは預かっております。車輪の力でここまで辿り着けたら解放しましょう」
チャリキルアニキ「あ!切れた!ふざけんな!どこにいる!」
チャリキルアニキ「気がついたら三輪野郎もいねえ!逃げたなあの野郎!」
チャリキルアニキ「妹はチャリキルになった俺を心配してくれるいい奴なんだ!」
チャリキルアニキ「例えるなら!俺の人生の荒野に咲いた一輪花!」
チャリキルアニキ「そんな妹をさらうのは許せん!」
チャリキルアニキ「待ってろ!必ず見つけて助け出してやる!」
チャリキルアニキ「さあ!チャリキッていくぜ!」
  かくしてチャリキルアニキは走り出す。
  彼は無事に妹を救い出すことが出来るのか?

〇謁見の間
総帥「チャリキルはどうだった?」
ミツワ「手ごわい男でした。奴に自覚はないですが」
ミツワ「間違いなく『ワキルスト』です」
ミツワ「奴の妹は指示通りに確保してます」
総帥「ご苦労。よくやった」
総帥「我々ワキルストは輪を着るスペシャリスト。人類の進化系だ」
総帥「輪を広げる為にあのきょうだいは必要不可欠」
総帥「幹部に告ぐ!チャリキルとの戦闘に備えよ!」
総帥「チャリキルよ。妹を助けに来い!そして実力を見せてみろ!」
総帥「お前の輪の力を見極めてやる!」
  続く!

次のエピソード:第二輪 俺の二輪が火を吹くぜ

コメント

  • スチルが衝撃的でした! こんなすごいの初めて見ました!

  • 朝起きてすぐで読んだら、まだ夢でも見ているのかと自身を疑う衝撃でした(笑)
    妹さんの『こいつらヤバい!関わっちゃダメだ!』のセリフに物語の全てが集約されている気がします😂
    ことある毎に兄が上手いこと言ってくるのが、なんかムカつくwwww
    効果音にベルの『チリンチリン』がなかったことが悔やまれる…あったら笑い死んでました。゚(゚^Д^゚)゚。
    大賞おめでとうございます!!

  • チャリキルアニキ……チャリを着る兄貴!
    一部始終笑いが絶えませんでした……笑
    「チャリを着る」というパワーワード、それでいてチャんとリに適った設定や言い回しが大変印象的でした!
    そしてワキルスト……輪を着るスペシャリスト!笑
    今後、敵対勢力はどのような『輪』を使い熟すキャラクターが立ち塞がるのか、楽しみで仕方がないです!
    笑いと感動をありがとうございます😊

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