我はサブカル魔王、ラノベ勇者を滅する者なり

篠也マシン

第壱話 勇者、襲来(脚本)

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篠也マシン

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〇コンビニ
山田「くそっ・・・」
山田「またフラれた」
山田「僕を好きになってくれる人は、この世界にいないのか」
???「危ないっ!」
山田「えっ?」

〇ヨーロッパの街並み
山田「ここは?」
山田「たしか車に轢かれそうになって・・・」
山田「それにしても──」
山田「ラノベに出てきそうな街だな」
山田「・・・もしかして、」
山田「これって異世界転移!?」

〇秘密基地のモニタールーム
兵士ペイ「魔国と人間国の境界付近に、」
兵士ペイ「異常な魔力反応を確認!」
クマシロ博士「ついに来たようです」
魔王シン「間違いない──勇者だ」
魔王シン「総員、対勇者戦闘配備!」
魔王シン(ククク・・・)
魔王シン(我の『世界征服』の邪魔は誰にもさせんぞ)

〇沖合(穴あり)
  十五年前、
  『大崩壊』と呼ばれる巨大な災害が起こった

〇荒廃した街
  それは各地に大きな被害をもたらし、
  戦争状態にあった『魔国』と『人間国』は、休戦を余儀なくされた

〇惑星
  その後、大崩壊の原因は、
  日本という異世界と交わった影響と判明する
  当初、人々は異世界の存在を疑っていたが、
  この世界にない、とあるモノが次々に見つかったことで、
  信じる者が増えていった
  それが『聖典』
  日本ではライトノベルと呼ばれる書物である

〇上官の部屋
  ──勇者襲来の数年前
魔王シン「ククク・・・」
魔王シン「『機動魔人タプノベリオン』はやっぱ最高!」
魔王シン「聖典の中で一番だな」
魔王シン「・・・よし」
魔王シン「変身っ!」
魔王シン「博士に作らせたこの服、挿絵にそっくりで」
魔王シン「主人公のワタルになった気分だ」
魔王シン「誰もいなし、ちょっとマネしてみるか」
魔王シン「愛と友情と勇気の化身」
魔王シン「GO、タプノベリオン!」
魔王シン「GO、タプノ──」
クマシロ博士「・・・コホン」
クマシロ博士「シン様、随分お楽しみのようで」
魔王シン「──き」
クマシロ博士「き?」
魔王シン「記憶を消去する!」

〇上官の部屋
クマシロ博士「あれ? 何だか焦げ臭い・・・」
魔王シン「・・・博士、何用だ」
クマシロ博士「あ、はい」
クマシロ博士「実は新たな聖典が見つかりまして」
魔王シン「タプノベリオンの新刊か!?」
クマシロ博士「違います」
クマシロ博士「これを・・・」
魔王シン「なになに・・・」
  引きこもりの俺が異世界転移したら、最強の勇者になっていたので、ちょっと魔王軍を殲滅してきます
魔王シン「なんだこれ」
魔王シン「表紙にあらすじが書いてるぞ」
クマシロ博士「いえ、これがタイトルなのです」
魔王シン「恐ろしく長いな」
クマシロ博士「問題は表紙より中身です」
魔王シン「・・・ふむ」
魔王シン「異世界の者がこちらに来るとは、」
魔王シン「興味深いストーリーだ」
魔王シン「・・・」
魔王シン「おかしい」
魔王シン「今までの聖典には深いテーマがあったが、」
魔王シン「この物語からは何も感じられないぞ」
クマシロ博士「はい」
クマシロ博士「異世界から来た者──勇者と呼ぶようですが、」
クマシロ博士「努力もなしに強大な力を得て、」
クマシロ博士「周囲から絶大な信頼を得ています」
クマシロ博士「そして、理由なく魔族を滅ぼそうとする」
魔王シン「作者は何を考えてるのだ」
クマシロ博士「私はこれを予言と考えています」
魔王シン「予言?」
クマシロ博士「近い将来、」
クマシロ博士「この世界に恐ろしい勇者がやって来る」
クマシロ博士「それを警告しているのだと」
魔王シン「なるほど、あり得る話だ」
魔王シン「・・・魔王軍は対抗できるか?」
クマシロ博士「大崩壊により、軍は壊滅状態」
クマシロ博士「対抗する力はありません」
魔王シン「急ぎ、対策部隊を組織する必要があるな」
魔王シン「国中から強者を集めよ!」
クマシロ博士「御意」
クマシロ博士「あれ!?」
クマシロ博士「なんで毛の色が!?」
魔王シン「・・・」

〇児童養護施設
魔王シン「こんな辺境の村に、」
魔王シン「魔王軍に迎えるほどの剣士がいるのか?」
クマシロ博士「ええ」
クマシロ博士「身の丈ほどの剣を振り回す者らしいです」
魔剣士マナ「お前たち、この村に何の用だ」
魔王シン「・・・あの剣」
魔王シン「もしかしてこやつが?」
クマシロ博士「おそらく」
クマシロ博士「だが、警戒されていますな」
クマシロ博士「王都で商人をしているクマシロと申します」
クマシロ博士「こちらは息子のシン」
クマシロ博士「この辺りにめずらしい薬の材料があると聞き、」
クマシロ博士「探していたのですが、道に迷いまして・・・」
魔王シン(我が熊の息子とは・・・無理がないか)
魔剣士マナ「それは災難だな」
魔剣士マナ「貧しい村だが、しばし休むといい」
魔王シン(素直に信じるんかい!)
魔王シン「・・・」
魔王シン「ここには子供しかいないな」
魔王シン「それに──」
魔王シン「あれは魔族ではないな」
クマシロ博士「あの髪、瞳の色、人間の子供ですな」

〇暖炉のある小屋
魔剣士マナ「私はこの村を統べる、魔剣士マナと申す」
クマシロ博士「この村には、子供しかいないようですな」
魔剣士マナ「ああ」
魔剣士マナ「ここは廃村だったが、」
魔剣士マナ「戦争で親を失った子供たちのために、使わせてもらっている」
クマシロ博士「古より続く魔国と人間国の戦争・・・」
魔剣士マナ「幸いなことに、今は休戦状態だがな」
クマシロ博士「マナ殿は戦争が嫌いか?」
魔剣士マナ「・・・ああ」
魔剣士マナ「見てみよ」
魔剣士マナ「この村には人間の子供もいる」

〇児童養護施設

〇暖炉のある小屋
魔剣士マナ「種族が違えど、仲良く暮らしていける」
魔剣士マナ「なぜ国の偉い者たちは、戦争を望むのだ」
クマシロ博士「もし魔王軍の関係者に聞かれたら、」
クマシロ博士「粛清されるかもしれない発言ですな」
魔剣士マナ「その心配はない」
クマシロ博士「剣に余程の自信があるようですな」
魔剣士マナ「当代に並ぶ者なしと自負している」
魔王シン「面白い──博士、少し試すぞ」
クマシロ博士「やれやれ」
クマシロ博士「あまり無茶をせぬよう」

〇児童養護施設
魔剣士マナ「お前、何者だっ!」
魔王シン「魔王シン」
魔王シン「一応、この国の王である」
魔剣士マナ(こんな変な服を着てる奴が、王・・・!?)
魔王シン「我は次なる闘いに向け、強者を探している」
魔王シン「どうだ、我に仕えぬか?」
魔剣士マナ「戦争は嫌いだと言っただろう」
魔剣士マナ「力で私を屈服しようとしても無駄だ!」
魔王シン「やりおるわ」
魔王シン「だが、頭はそこまで回らないと見える」
魔王シン「博士!」
クマシロ博士「御意」
魔剣士マナ「な!」
魔剣士マナ「子供たちをどうするつもりだ!」
魔王シン「さあ、どうしてくれようか」
魔剣士マナ「魔王ともあろう者が人質を取るとは、」
魔剣士マナ「恥ずかしくないのか!」
魔王シン「我の目的は『世界征服』」
魔王シン「そのためには何だってする」
魔剣士マナ「くそ・・・」
魔王シン「ククク・・・早く我に従うと言え」
魔剣士マナ「いや・・・しかし・・・」
魔王シン「博士、やれ」
クマシロ博士「御意」
魔剣士マナ「や、止めろー!!」
「お、美味しいー!」
魔剣士マナ「え、食べ物を・・・?」
魔王シン「ここが廃村になったのは、作物が育たないからだ」
魔王シン「だから、飢えないギリギリの生活しかできてないだろう」
魔王シン「子供たちを王都で養ってやる」
魔王シン「そうすれば、お前は憂いなく我に仕えられるだろう?」
魔剣士マナ「・・・人間の子供はどうするつもりだ」
魔王シン「ククク・・・人間の子供は、もちろん」
魔剣士マナ「・・・」
魔王シン「一緒に養うに決まってるだろう」
魔剣士マナ「なな!?」
魔剣士マナ「お前たちは、人間を滅ぼすのが目的ではないのか?」
魔王シン「やれやれ、何か勘違いしているようだ」
魔王シン「人間との戦争を続けていたのは、先代までの魔王だ」
魔王シン「我は違う」
魔王シン「この姿を見て、分からないか?」
魔剣士マナ「歴代で一番趣味が悪い・・・?」
魔王シン「違うわ!」
魔王シン「この姿は、聖典『タプノベリオン』に出てくる戦闘服だ」

〇荒廃した街
  機動魔人タプノベリオン
ワタル「闘っても闘っても、憎しみの連鎖が続くだけ」
ワタル「なんて虚しいんだ」
機動魔人タプノベリオン「少年、我も同じ気持ちだ」
ワタル「きょ、巨大なロボット!?」
機動魔人タプノベリオン「闘いを終わらせたければ、我に乗れ」
ワタル「君に・・・?」
機動魔人タプノベリオン「我は愛と友情と勇気の化身」
機動魔人タプノベリオン「共に叫ぶのだ!」
「GO、タプノベリオン!!」

〇児童養護施設
魔王シン「我は知った」
魔王シン「この世で最も大切なのは、愛と友情と勇気なのだと」
魔王シン「魔国も人間国も関係ない」
魔王シン「この世界すべてを、愛と勇気と友情で満たす」
魔王シン「それが我の考える──」
魔剣士マナ「・・・」
クマシロ博士「マナ殿」
クマシロ博士「近い将来、この世界に恐ろしい危機が訪れる」
クマシロ博士「それと闘うために我々は強者を求めている」
クマシロ博士「決して戦争のためではない」
クマシロ博士「だから、力を貸してほしい」
魔剣士マナ「・・・分かった」
魔王シン「決まりだ」
魔王シン「皆の者、王都へ行くぞ!」
「おー!」
魔剣士マナ(おかしな魔王だ)
魔剣士マナ(私の剣を捧げる相手──)
魔剣士マナ(やっと見つかった)

〇荒野
  ──その後
  ある者は武を磨き、

〇英国風の図書館
  ある者は知を磨き、

〇源泉
  ある者は魔を磨いた
  ──そして、勇者襲来の日を迎えた

〇ヨーロッパの街並み
兵士ペイ「奴が勇者です」
魔王シン「一見、普通の青年だな」
魔剣士マナ「あの・・・シン様」
魔王シン「なんだ?」
魔剣士マナ「なぜ私もこの服に?」
魔王シン「カッコいいだろう」
魔王シン「対勇者部隊の証だ」
魔剣士マナ「・・・博士のそれは?」
クマシロ博士「私の分を作る暇がなくてな」
クマシロ博士「毛色だけは合わせてみたぞ」
魔剣士マナ(私達、目立ち過ぎでは・・・)
山田(この世界に来てから、)
山田(やたらと注目されるな・・・)
山田「ラノベの主人公みたいに、」
山田「モテモテになってたりして」
山田(・・・)
山田(いや、あり得ない話じゃないぞ)
山田「あのー、女性の皆さん」
山田「実は今日泊まるところがなくて、」
山田「どなたか紹介してくれませんか?」
女の子「ぜひ私の家に!」
女の子「いいえ、私よ!」
山田(おおっ!)
山田(まさにハーレム!)
山田「異世界転移・・・最高だっ!」
魔王シン「なんだなんだ」
魔王シン「急に女性が集まっていったぞ」
兵士ペイ「私が様子を見て参ります」
魔王シン「頼む」

〇ヨーロッパの街並み
魔王シン「どうだった?」
兵士ペイ「シン様、私はもう闘えません」
魔王シン「攻撃を受けたのか!?」
兵士ペイ「いえ、彼を愛してしまったのです」
魔王シン「は?」
兵士ペイ「ね、とても素敵な男性だと思いますよね?」
魔王シン「ひっ!?」
魔王シン「誰か、こやつを連れていけ!」
兵士ペイ「シン様! 聞いてくださ・・・!」
魔王シン「一体、何が起きたのだ」
クマシロ博士「おそらく勇者の特殊能力かと」
魔王シン「何だと!?」
クマシロ博士「この聖典が参考になります」
魔王シン「なになに・・・」
  彼女いない歴=年齢の俺が、異世界転移して妻を100人めとり、魔王軍をも無双する
クマシロ博士「奴は最強のハーレムタイプ」
クマシロ博士「老若男女、種族を問わず惚れさせる」
クマシロ博士「よって、接近は不可能です」
魔王シン「なんと恐ろしい・・・」
魔剣士マナ「これが勇者の力」
魔剣士マナ「・・・でも、」
魔剣士マナ「思ってたのとなんか違う・・・」
魔王シン「以降、第1の勇者を『ハーレム王子』と呼称する!」
魔王シン「距離を取りつつ、戦闘を開始する!!」
「はっ!」

次のエピソード:第弐話 絶対に惚れてはいけない戦いが、ここにある

コメント

  • 異世界転生は苦手ですが、異世界転移はわりと好きです😊
    読み始めたら面白いっっ!
    クマシロ博士が色変わるとこが好きですw
    しかしこれ、どうなるんだ〜。
    マナちゃん、勇者に惚れたりしませんよね!?🤣

  • 設定もですがキャラも良くて、面白かったです!
    魔王も博士も優しいし、ピンク髪の剣士(名前…忘れちゃった💦)もかっこいい女性で好きです😊
    次回も気になるタイトルで、楽しみです✨

  • すごく面白かったです(*^^*)!!
    それぞれのキャラが生き生きしていて
    個人的にクマシロ博士が可愛くて大好きです!笑
    焦げて茶色になった姿も可愛くて笑
    魔王も優しくて後半の話も感動しました(^^)!

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