我はサブカル魔王、ラノベ勇者を滅する者なり

篠也マシン

第弐話 絶対に惚れてはいけない戦いが、ここにある(脚本)

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篠也マシン

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〇ヨーロッパの街並み
魔王シン「『ハーレム王子』・・・」
魔王シン「近づいただけで惚れてしまうとは、なんと恐ろしい能力」
魔剣士マナ「遠くから強力な魔法を使ってみては?」
魔王シン「だめだ」
魔王シン「周りの民を巻き込んでしまう」
魔王シン「それに勇者を倒す必要はない」
魔王シン「異世界に帰すだけでよいのだ」
魔剣士マナ「でも、どうやって?」
クマシロ博士「──これを使います」
魔剣士マナ「銃?」
クマシロ博士「ええ」
クマシロ博士「ただし、飛び出すのは鉄の弾ではなく、とある魔法です」
魔剣士マナ「魔法・・・!」
クマシロ博士「私がこの日のために生み出した、『抗転移魔法』です」
クマシロ博士「この魔法の開発には──」
クマシロ博士「血と汗と涙の・・・」
魔王シン「博士──」
魔王シン「長くなるなら、別の機会に頼む」
クマシロ博士「え・・・はい・・・」
クマシロ博士「一言で言うと、勇者を元の世界に帰す魔法です」
魔剣士マナ「それなら倒す必要はありませんね」
クマシロ博士「ただ射程距離が短いので、かなり接近する必要があります」
魔王シン「・・・弾の数は?」
クマシロ博士「2発」
魔剣士マナ「たったそれだけ!?」
クマシロ博士「この魔法の生成には、莫大な魔力と時間が必要なのです」
クマシロ博士「そう」
クマシロ博士「開発には血と汗と涙に加え、少しばかりの笑いも──」
「・・・」
クマシロ博士「グスン」
魔王シン「──つまり、失敗は許されないわけだな」
クマシロ博士「安心してください」
クマシロ博士「いい作戦があります」
魔王シン「おお、さすが博士!」
クマシロ博士「私は見ての通り、巨大な熊の魔族」
クマシロ博士「雄叫びを上げて近づけば、彼らは飛び上がって驚くでしょう」
クマシロ博士「・・・そこに魔法を打ち込む隙ができる」
魔王シン「なるほど!」
クマシロ博士「フフフ」
クマシロ博士「感心するのはまだ早いですぞ」
魔剣士マナ「え?」
クマシロ博士「作戦は二段構えです」
クマシロ博士「私の精神力をもってすれば、勇者の能力に耐えられるでしょうが、」
クマシロ博士「万が一耐えられなかったとしても──」
クマシロ博士「こんな巨大な魔族に惚れられたら、勇者は逃げ出すに違いない」
魔王シン「なるほど、なるほど!!」
魔王シン「どう転んでも勇者に隙が生じるのか」
クマシロ博士「その通りです」
クマシロ博士「1発はマナ殿に渡しておこう」
クマシロ博士「もし私に不測の事態が起きた場合は頼む」
魔剣士マナ「心得た」
クマシロ博士「フフフ・・・」
クマシロ博士「素晴らしい戦果をご覧にいれましょう」

〇ヨーロッパの街並み
クマシロ博士「そろそろ、私の存在に気づく距離だな」
女の子「あれを見て!」
女の子「わ、本当だ!?」
クマシロ博士(ここで雄叫びをひとつまみ──と)
クマシロ博士(これで隙が・・・)
女の子「キャー! 大きな熊!」
女の子「かわいい!」
クマシロ博士「え」
女の子「すっごいモフモフ」
女の子「ぬいぐるみみたい」
クマシロ博士「く、私の邪魔を・・・!」
クマシロ博士「ええい、そこをどくのだ!!」
クマシロ博士「・・・」
クマシロ博士「ムフッ」
「・・・」
魔剣士マナ「何か喜んでるように見えませんか?」
魔王シン「・・・奴だけに魔法を当てられないだろうか」
山田「しゃ、しゃべる熊!?」
山田「異世界の魔物か!」
魔王シン「お、勇者も気づいたようだぞ」
クマシロ博士「いかんいかんっ!」
クマシロ博士「目的を忘れるところだった」
クマシロ博士「勇者を驚かせなくては・・・」
魔剣士マナ「勇者の射程距離に入ったようです!」
魔王シン「博士の精神力ならきっと・・・」
クマシロ博士「ス・テ・キ♡」
魔王シン「・・・」
魔剣士マナ「・・・全然ダメですね」
魔王シン「まあいい」
魔王シン「これで勇者が逃げ出せば・・・」
魔剣士マナ「はい」
魔剣士マナ「後は私の手で・・・」
山田「おお!」
山田「カワイイじゃないか」
山田「もっと近くに来い」
クマシロ博士「──御意♡」
魔王シン「・・・おい、なんだあれ」
魔剣士マナ「勇者は女性だけでなく、獣もお好きなようですね・・・」
魔王シン「くっ!」
魔王シン「総員、一時退却!」

〇立派な洋館

〇貴族の応接間
山田「いやー」
山田「こんな簡単に惚れてくれるなんてな」
山田「前の世界なら──」

〇コンビニ
女の子「ごめんなさい」
女の子「あなたのことよく知らないので」
女の子「はあ?」
女の子「あんたどこの誰よ」

〇貴族の応接間
山田「フッ」
山田「モテないと悩んでいたのが馬鹿みたいだ」
山田「・・・でも、なぜだろう」
山田「心がモヤモヤする・・・」

〇立派な洋館
兵士ペイ「勇者はあの屋敷に招かれたようです」
魔王シン「ペイ」
魔王シン「正気に戻ったようで良かったぞ」
兵士ペイ「はい」
兵士ペイ「ですが、今度は博士が・・・」
魔王シン「うむ」
魔王シン「博士の貞操を守るため、早く決着をつけなければな」
魔剣士マナ「・・・た、たしかに」
魔王シン「だが、」
魔王シン「博士の頭脳をもってしても勝てなかった相手だ」
魔王シン「我々だけで敵うだろうか」
魔剣士マナ「・・・」
魔剣士マナ「シン様」
魔剣士マナ「私に任せて頂けますか?」
魔王シン「何か良い作戦でもあるのか?」
魔剣士マナ「いえ」
魔剣士マナ「真正面からぶつかるつもりです」
魔王シン「・・・」
魔王シン「よし、マナを信じよう」

〇荒野
  ──勇者襲来前
魔剣士マナ「手合わせありがとうございました」
魔王シン「こちらこそいい修行になったぞ」
魔王シン「・・・まだ修行を続けるのか?」
魔剣士マナ「はい」
魔剣士マナ「私にはこれしかありませんので」
魔王シン「ふむ」
魔王シン「では剣を振るう必要がなくなれば、マナはどうするのだ?」
魔剣士マナ「・・・」
魔剣士マナ「敵を倒すため、子どもたちを守るため──」
魔剣士マナ「すべて剣が必要でしたので、考えたこともありません」
魔王シン「・・・そうか」
魔王シン「えいっ!」
魔剣士マナ「あ、剣の刃に氷が!」
魔剣士マナ「シン様、何を!?」
魔王シン「ククク・・・」
魔王シン「その氷は、夕刻まで溶けぬぞ」
魔剣士マナ「それでは修行が・・・」
魔王シン「これから王都を視察する予定でな」
魔王シン「マナにも付き合ってほしいのだ」
魔剣士マナ「・・・分かりました」

〇要塞の廊下
クマシロ博士「マナ殿が根を詰めすぎていたので、心配していたが・・・」
兵士ペイ「シン様が街へ連れ出したようですね」
兵士ペイ「きっと心配ないでしょう」
「・・・」
クマシロ博士「・・・念のため、後をつけよう」
兵士ペイ「・・・はい」

〇市場
魔剣士マナ「えっと・・・この格好は?」
魔王シン「視察はお忍びだからな」
魔王シン「異世界の一般人の服装なのだ」
魔剣士マナ(余計に目立つ気が・・・)
女店主「いらっしゃーい」
魔王シン「おばちゃーん、いつものヤツを頼む」
女店主「あいよ」
魔王シン「これは異世界でポピュラーな飲み物」
魔王シン「博士に頼んで再現したものだ」
魔剣士マナ「へえ」
魔剣士マナ「なんだか良い香りがしますね」
魔剣士マナ「とてもスパイシーな味」
魔剣士マナ「名前はなんというのですか?」
魔王シン「たしか──」
魔王シン「『カレー』だ」
魔剣士マナ「このままでも美味しいですが、お米と合いそうな味ですね」

〇古書店
魔王シン「ここでは、見つかった聖典の写本を販売している」
魔剣士マナ「これが聖典・・・」
魔王シン「マナも一度読んでみるといい」
魔王シン「特にこの『機動魔人タプノペリオン』がおすすめだ」
魔剣士マナ「はあ」
魔王シン「聖典が広まるにつれ、民の間に戦争反対の気運が高まっておる」
魔剣士マナ「それは素晴らしいことですね」
魔剣士マナ(・・・でも)
魔剣士マナ(争いがなくなれば、私の剣は何の役にも立たなくなる・・・)
魔王シン「・・・」

〇山の展望台(鍵無し)
魔剣士マナ「ここは見張り塔?」
魔剣士マナ「ですが、兵士の姿はありませんね」
魔王シン「今は休戦中だからな」
魔王シン「展望台として民たちに開放してるのだ」
「・・・」
魔剣士マナ「二人連れが多いのはなぜでしょう?」
魔王シン「ああ」
魔王シン「ここに来ると、必ず結ばれるという噂があるのだ」
魔剣士マナ「へえ」
魔剣士マナ(あ、あれは!)
魔剣士マナ(博士とペイ!?)
クマシロ博士「シン様とマナ殿、どうやら楽しく過ごしているようだな」
兵士ペイ「そうですね」
魔剣士マナ(あの二人、そういう関係なのか・・・)
魔剣士マナ(よし)
魔剣士マナ(見なかったことにしよう)
魔剣士マナ「素晴らしい景色ですね」
魔王シン「そうだな」
魔王シン「・・・」
魔王シン「マナよ」
魔剣士マナ「はい」
魔王シン「戦に使われていたものも──」
魔王シン「別の価値を見いだすことができるのだ」
魔王シン「この見張り台のようにな」
魔剣士マナ「・・・」
魔剣士マナ「さあ、どうでしょうか」
魔剣士マナ「争いのない世界で、剣に価値があるとは思えません」
魔王シン「ククク・・・」
魔王シン「我が言いたいのは、そういうことではない」
魔王シン「剣を握らなかった今日──」
魔王シン「マナには価値のないものだったか?」
魔剣士マナ「・・・」

〇宇宙空間
魔王シン「剣の氷・・・」
魔王シン「とっくに溶けていたようだな」
魔剣士マナ「・・・」
魔剣士マナ「そうですね」

〇立派な洋館
魔剣士マナ(・・・シン様)
魔剣士マナ(あなたは、私に剣を振るう場所を与えてくれた)
魔剣士マナ(そして、剣以外の価値を教えてくれた)
魔剣士マナ(私の中に生まれたこの想い・・・)
魔剣士マナ(勇者の力に負けるわけがない)
魔剣士マナ「この世界で最も大切なものは『愛』!」
魔剣士マナ「ハーレム王子は、私が打ち破る!!」

〇貴族の応接間
魔王シン「次回、『ハーレム王子山田編』完結!」
魔王シン「次も絶対タップしてくれよな!」

次のエピソード:第参話 愛

コメント

  • 次回はピンク髪の剣士マナさんが活躍しそうですね😊
    楽しみです✨

  • 自然な笑いが秀逸で2話もとても楽しませていただきました!
    そして、魔王の優しさに溢れた想いに胸がじわーんとしました😆
    聖典(ラノベ)がこんな風に異世界を変えていくなんて!
    でも、カレーは飲み物じゃないって誰か教えてあげて……(笑)

  • 篠也せんせのコメディパートがすごく自然で秀逸なので、面白かったです!実はラノベ系はあまり得意ではないので、この作品は読みやすくてお気に入りです!

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