one phrase ~言葉より前の物語~

本間ミライ

第12話 『one phrase』前日譚 後編(脚本)

one phrase ~言葉より前の物語~

本間ミライ

今すぐ読む

one phrase ~言葉より前の物語~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇諜報機関
バベル「クレアと過ごした翌日のこと、 彼は突然やって来た・・・」
バベル「彼は祖父の助手の一人で、 名をシモンと言った。 僕達の研究内容に強く惹かれたらしく、」
バベル「シモンは祖父に内緒で“禁句”のデータを 持ち出し、自ら実験の被検体になる事を 志願したんだ・・・」
カイン「良いのか? 本当に・・・」
バベル「本人たっての希望だしね。 僕達としもありがたい話じゃないか」
カイン「そうだけど・・・。ダンさんの言っていた 事が気がかりでな・・・」
バベル「危険なのは最初から分かっていた はず・・・何よりこの実験は クレアのため・・・そうだろ?」
カイン「・・・ああ。そうだな。やろう」
バベル「先ずは禁句のデータをこの人に インストールするよ」

〇黒背景
バベル「これが全ての元凶だった・・・ この時、僕は理解していなかったんだ。 人の心の闇と言うものを・・・」

〇化学研究室
バベル「ん・・・。ううーん」
クレア「良かった! 目を覚ましてくれて」
バベル「あれ? 何で僕はここに・・・?」
クレア「頭を殴られて気絶したみたい」
バベル「え・・・? どう言うこと?」
クレア「シモンさんに襲われたの・・・。私が 駆けつけた時には兄さんと倒れていたわ」
バベル「カインは!? カインは無事なのか?」
クレア「まだ気を失ってるけど、 命に別状はないみたい」
バベル「良かった・・・」
クレア「禁句のデータには、危険な思想を生む 言葉も入ってるって ダンさんが言っていたわ・・・」
クレア「その人の心の闇に作用して、 攻撃的な行動を取るようになるって・・・」
バベル「僕のせいだ・・・。 それで、シモンさんは今どこに?」
クレア「情報管理センターに武器を持って 立てこもってる。 今、ダンさんが交渉に向かっているわ」
バベル「一体何の目的で・・・」
クレア「詳しくは分からないけど・・・ 恐らく言葉を広めるため・・・」
バベル「・・・行かなきゃ」
クレア「バベル?」
バベル「お爺ちゃんを助けないと!」
クレア「だったら私も行く!」
バベル「危険だ! 君はここに残るんだ!」
クレア「私も助けたいの! ダンさんだけじゃない・・・ シモンさんも!」
クレア「あの人は私にとっても、大切な人なの! お願い協力させて!」
バベル「・・・分かった。 でも危ない事はしちゃダメだよ」
クレア「うん! 分かってる」
バベル「こうして僕達は 情報管理センターへと向かった」

〇高層ビルのエントランス
バベル「僕達が情報管理センターに着くと、 逃げ惑う人や、治療を受けている人が 大勢居て、現場は大混乱だった」
バベル「お爺ちゃん!」
ダン「バベル・・・ 全くとんでもないことをしてくれおって」
クレア「ケガしてます・・・」
ダン「大丈夫だ。大した事はない」
バベル「すみません。僕のせいで・・・」
ダン「説教なら後でたっぷりしてやる。 とにかく今はシモンを止めてくれ!」
ダン「ワシじゃ、ヤツの心を開くことは 出来んかった・・・」
クレア「私とバベルでシモンさんを説得します」
ダン「ああ・・・頼んだぞ。 ヤツはいま自分を見失っておる」
ダン「これ以上被害者を出さない為にも、 ヤツを止めてくれ!」
「はい」

〇近未来施設の廊下
バベル「僕達が中に入るとそこには、 ナイフを持ったシモンさんが人質を取り、 立てこもっていた」
クレア「シモンさん! 私です! クレアです!」
シモン「クレア・・・」
バベル「気を付けて、やっぱり様子がおかしい」
クレア「シモンさん! 本当の貴方はこんな事を する人じゃありません! 心の闇に負けないで下さい!」
シモン「ああ・・・。クレア・・・ もう分からないんだ・・・」
シモン「何故こんな事をしているのか・・・。 言葉が私を蝕んでゆく・・・」
バベル「アナタは禁句のデータによって おかしくなってるだけだ! 本来の自分を取り戻して下さい!」
シモン「いや・・・違う。そうじゃない・・・。 これは元々僕にあったものだ・・・」
シモン「恨み・・・憎しみ・・・悲しみ・・・ 怒り・・・。醜い私の本当の姿なんだ!」
クレア「違います! アナタは優しい人でした! 言葉に不慣れだった私に、優しい言葉を かけてくれたじゃないですか!」
シモン「君は知らないんだ! 支援体制が整う前、 我々テレパシー障害の人達が どんな扱いを受けて来たのか!」
シモン「社会から断絶され、コミュニケーションを 取る事も出来ず・・・。 あれは人間を見る目じゃ無かった・・・」
クレア「・・・・・・」
シモン「そうだ・・・。ちょうどこんな目だ・・・」
バベル「すると突然シモンさんは、 怯えた目をした人質の一人を殴り始めた」
シモン「そうやって見下して・・・、 死ね! 死んでしまえ!」
クレア「シモンさん! 止めて下さい!」
バベル「クレア!」
バベル「クレアは一目散に駆け出し、 シモンさんの腕にしがみ付いた」
シモン「何をする! 離れろ!」
クレア「どんなに分かり合えなかったとしても、 暴力だけは選んじゃダメなんです!」
シモン「離せ! お前も殺すぞ!」
クレア「アナタは決して一人なんかじゃ ありません!」
クレア「どんなに孤独に思えても、 私達は言葉で繋がってるんです!」
クレア「思い出して下さい! 優しい言葉の一つ一つを・・・」
シモン「優しい言葉・・・?」
バベル「クレアの言葉で、 シモンさんの動きが止まった・・・」
シモン「クレア・・・私は・・・何を・・・?」
クレア「大丈夫・・・。悪い夢を見ていただけです」
バベル「はぁ・・・ヒヤヒヤしたよ。 凄いねクレアは」
クレア「でしょ? 一番弟子だからね」
バベル「フフ、そうだね」
バベル「僕達が安堵したその時だった」
バベル「殴られていた人質がナイフを拾い、 シモンさんに襲い掛かったのだ」
クレア「シモンさん! 危ない!」
バベル「刃はシモンさんに向けられていた。 しかし、ナイフはシモンさんでは無く、 クレアの胸に突き刺さった・・・」
バベル「クレア!」
クレア「あはは・・・ごめん・・・バベル・・・私・・・ダメかも・・・」
バベル「クレア! しっかり! 死んじゃダメだ!」
クレア「バ・・・ベル」
クレア「大丈夫・・・。 古文書で・・・読んだ事があるの・・・」
クレア「死んでも・・・ 居なくなる訳じゃない・・・って・・・」
クレア「忘れないで・・・居てくれたら・・・ 私は永遠に・・・生きる事・・・ 出来るから・・・」
バベル「じっとして! 喋っちゃダメだ!」
クレア「ねぇ・・・バベル・・・私ね・・・。 バベルに・・・ 伝えたいこと・・・あるの・・・」
クレア「でも・・・上手く言葉に・・・ 出来ないや・・・」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第13話 言葉より前… 前編

成分キーワード

ページTOPへ