one phrase ~言葉より前の物語~

本間ミライ

第11話 『one phrase』前日譚 前編(脚本)

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本間ミライ

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〇古書店
カイン「言葉はクレアを殺したんだぞ!」
ミア「クレア?」
バベル「・・・・・・。カイン。情報管理局の 人間がここに何の用なんだい?」
ミア(情報管理局・・・)
カイン「白々しいな。お前を連行する理由は いくらでもあると思わないか?」
バベル「全部、法の範囲内でやっている事だ」
カイン「フン。どうだかな。 何しろ言葉は嘘をつけるからな・・・」
バベル「・・・・・・」
カイン「まあ良い・・・。 今日来たのはお前を連行する為じゃない」
カイン「ペドロ邸で見つかった新たな古文書。 それを渡して貰おうか? アレは我々がずっと探していた物だ」
バベル「・・・・・・!」
カイン「まあ拒否した所で、 無理矢理持って行くだけだがな。おい!」
  カインさんの呼び声と共に、
  スーツの男達がぞろぞろと入って来ては、
  店内を荒らし始めた。
ミア「ちょっと、いきなり来て、何なんですか! 止めて下さい!」
カイン「ん? 君は・・・」
ミア「バベルさんの助手です!」
カイン「そうか。君も言葉に取り憑かれたと 言う訳か・・・。今からでも遅くは無い。 言葉は捨てろ。それが君の為だ・・・」
ミア「?」
  スーツの男の一人が、
  古文書をカインさんに渡した。
バベル「カイン・・・。君は一体何がしたいんだ? 古文書なんて情報管理局にとって 必要の無い物のハズだ!」
カイン「白を切るな。バベル・・・。 これがどれだけ重要な物か、 お前は分かってるはずだ」
バベル「それは・・・」
カイン「“ノアの開発者の日記” これがあれば例の研究を進められる・・・」
バベル「カイン、まさか君は・・・」
カイン「お前にはもう関係の無い事だ」
バベル「・・・・・・」
カイン「貰う物は貰った。ここにもう用はない」
バベル「クレアは最後まで言葉を信じていた」
カイン「っく・・・! まだそんなことを・・・!」
  カインさんは勢いよくバベルさんの
  胸倉を掴み、壁に叩きつけた。
ミア「バベルさん!」
カイン「良いか? 俺が何故、今でもこの忌々しい 言語を使ってるか分かるか!?」
カイン「自分を戒めるため・・・。 お前にこの怒りをぶつけるためだ!」
カイン「言葉が・・・! クレアは・・・俺達の せいで死んだんだ! それを忘れるな!」
  カインさんはバベルさんを突き飛ばす。
カイン「良いか? 俺は、必ずこの世界から 言葉を失くす・・・。 この店もたたむ準備をしておくんだな」
ミア「バベルさん・・・大丈夫ですか?」
バベル「うん。ありがとう・・・」
バベル「はぁ~。 随分と散らかしてくれちゃって・・・。 全く掃除する身にもなって欲しいよね」
ミア「バベルさん・・・」
バベル「やれやれ。あーあ、腰痛い」
ミア「バベルさん! あの人・・・! 言葉を失くすって・・・もしかして この店、潰す気なんじゃないんですか!?」
バベル「・・・・・・。うん、多分ね・・・」
ミア「何でですか! 何でそんなこと・・・! 大体あの人とバベルさんに何があったん ですか! それにクレアさんって人も・・・」
バベル「ごめんね・・・。訳分かんないよね・・・」
ミア「教えて下さい! 一体何があったのか・・・ カインさんがどうしてあんなにも 言葉を憎んでいるのかを・・・」
バベル「・・・・・・」
バベル「そうだね。ミアちゃんにも知る権利がある よね。『one phrase』の立派な一員だし」
ミア「はい」
バベル「クレアはね、カインの妹で テレパシー障害だったんだ。 そして・・・僕の大切な人だった・・・」
バベル「もう10年以上前になるかな・・・。僕と カインはある研究を進めていたんだ・・・」

〇塔のある都市外観
バベル「当時、テレパシー障害の人々を支援する 体制は整っていたが、言葉の存在を知る 人間はほとんど居なかったんだ」
バベル「それで祖父は言葉を広める為に、何人かの 優秀なテレパシー障害の人達と共に 『one phrase』を起ち上げたんだ・・・」

〇古書店
バベル「その中の一人にクレアも居たんだ・・・」

〇古書店
カナタ「返してよ! 僕の本だぞ!」
カイ「嫌だね。返して欲しかったら、 力づくで取ってみな」
カナタ「この~」
クレア「コラ! 二人とも! 喧嘩はダメでしょ?」
カナタ「だってクレア先生・・・カイが無理矢理、 僕の本を取ったんだよ?」
カイ「でもよぉ、先生。カナタのヤツ、 ずっとひとり占めしてるんだぜ?」
クレア「二人ともちゃんと話し合ったの? お互い読む時間とか。 ほら思い出して、何の為に言葉があるのか」
カイ「・・・・・・」
カナタ「お互いをよく知るため・・・」
クレア「そう。時間をかけてゆっくり話し合えば、 どんな事でも分かりあえるんだから」
カナタ「はい」
カイ「分かったよ」
バベル「フフ、君も大変だね」
カイン「お前も随分と先生ってのが、 板に付いてきたな」
クレア「あ、バベル。それに兄さんまで・・・」
バベル「お爺ちゃん居るかい?」
クレア「ダンさんなら書斎に居るけど・・・、 また例の研究のこと?」
カイン「まあな」
クレア「本当なの? テレパシー障害の人でも テレパシーが使えるようになるって・・・」
バベル「うん。その為にも基本言語プログラムから 排除された“禁句”のデータが必要なんだ」
クレア「禁句!? そ、それって・・・大丈夫?」
バベル「言いたい事は分かるよ」
カイン「あんまり心配するなクレア。 バベルは天才だ」
カイン「こいつならテレパシー障害の人を もっと良い環境に導いてくれるさ」
クレア「でも・・・」
バベル「カイン。そろそろ行こう」
クレア「・・・・・・」
バベル「心配そうに見つめる彼女の気持ちなど、 この時の僕には分からなかった」

〇豪華な社長室
ダン「ダメだ! 禁句のデータは渡せない!」
バベル「やはりそう来ますか・・・」
カイン「そこを何とかなりませんかね・・・」
ダン「ダメだ! 第一、そんな危険な実験に 私の同僚を巻き込む訳にはいかない」
バベル「シミュレーションはほぼ完璧です」
バベル「あとは基本言語プログラムの 欠損している部分があれば 完璧なシステムの構築が出来るんですよ?」
ダン「そんなのは机上の空論に過ぎん・・・。 良いか? 人間の感情と言うのは計算なんかで推し量れる程、簡単な物じゃないんだ!」
ダン「それにな・・・禁句は欠損などではない! 然るべき処置だったんだ。お前には散々、 言って聞かせたハズだがな」
バベル「またそれですか・・・」
ダン「人を傷つける言葉、憎しみや怒りと言った 負の感情を増幅させる言葉なんだ!」
カイン「・・・ゴクッ」
ダン「お前らが考えているよりも、 ずっと危険な物だ。だからやれん!」
バベル「良いですか? お爺ちゃん。テレパシー障害には分かっていない部分が多すぎます! 何故、ノアと結合出来ないのか・・・」

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