消える探偵2

ゆきんこ

消える探偵 後編(脚本)

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〇西洋の住宅街
霧子(きりこ)「春夏秋冬の暗号は、英語に直すこと」
霧子(きりこ)「あと、真ん中のゼロみたいなマルは、アルファベットの『オー』」
霧子(きりこ)「春はSPRING 夏はSUMMER 秋はFALLかAUTUMN 冬はWINTER」
霧子(きりこ)「あとはアルファベットの順番を数字にあてはめれば・・・」
新(あらた)「秋がFALLなら、『SLONE』 AUTUMNなら、『STONE』」
新(あらた)「『SLONE』って単語あるかな? 『STONE』は石でしょ?」
新(あらた)「秋の庭に大きい石あったよな! あの下掘る?」
新(あらた)「掘るの、得意!」
霧子(きりこ)「石が答えだとして、庭にある石が答えかな?」
霧子(きりこ)「もっと意味のある、もっと特別な石って何かしら・・・」
霧子(きりこ)「・・・」
新(あらた)「きっ、霧子!消えそうだぞ!!」
霧子(きりこ)「あービックリした!」
霧子(きりこ)「最近、深く考え事すると、消えちゃうことがあるなあ」
霧子(きりこ)「事情知ってる新が一緒で良かった!!」
新(あらた)「だろ〜!えっへん!!」

〇綺麗なダイニング
千鶴(ちづる)「あ、あなたは誰なの!?私を監禁したのはアナタ!?」
聖子(せいこ)「また発作起こしてるのね・・・はああ、疲れちゃう」
千鶴(ちづる)「助けてくださーい!誰かあっ、助けて!!」
聖子(せいこ)「ほんっとに、イライラする!」
聖子(せいこ)「あんたなんて、お金さえなければ、山に捨てに行きたいよ!!」
聖子(せいこ)「こう言ったところで、どうせ覚えていないんだから、言わせてもらうけど」
聖子(せいこ)「アンタの署名がないと、死んだ後の相続やら無くなった通帳の中身やらが、全部アンタの兄弟に行っちゃうのよ」
聖子(せいこ)「今日こそは、署名か拇印もらうわよっ!」
千鶴(ちづる)「きゃああ!」

〇結婚式場の廊下
霧子(きりこ)「ど、どうしよう新!千鶴さんが危ない!!」
新(あらた)「危ない・・・けど、危害を加えるワケでもないし、」
新(あらた)「今の千鶴さんの状態じゃ、俺たちがなぜこの場に居るか説明できなさそうだ」
新(あらた)「ここで、割って入っても」
新(あらた)「俺たちこそ、聖子さんには不法侵入罪で通報されてしまう・・・」
霧子(きりこ)「どうしよう、どうしよう!」
新(あらた)「クソ、夜で満月なら、俺がオオカミになってひと暴れするのに!」
霧子(きりこ)「私なんて、透明人間の一族なのに! こういう時こそ透明になりたいのに!」
新(あらた)「霧子って、最近、深く考えたら消えそうになるんだっけ?」
霧子(きりこ)「多分・・・」
新(あらた)「じゃあ・・・」
新(あらた)「霧子!聞いてくれ!!」

〇綺麗なダイニング
千鶴(ちづる)「イヤアッ!何するの、ヤメて!!」
聖子(せいこ)「さあ、この書類に指をつけるのよ!」
千鶴(ちづる)「痛いわ、ヤメて!」
聖子(せいこ)「うっ!?」
聖子(せいこ)「きゃあっ!?」
聖子(せいこ)「あ、あれは、お義父さまが大切にしていた西洋の剣!?」
聖子(せいこ)「まさかっまさかっ!!」
聖子(せいこ)「助けてー!!」

〇屋敷の寝室
千鶴(ちづる)「うう・・・」
千鶴(ちづる)「あっ、佐川さん」
千鶴(ちづる)「私、いつの間に寝室に?」
千鶴(ちづる)「確か、聖子さんが帰ってきたまでは覚えているんだけど」
霧子(きりこ)「聖子さん、大騒ぎして出て行きました!」
新(あらた)「具合はどうですか?」
千鶴(ちづる)「なんだかボウっするけど、大丈夫よ」
霧子(きりこ)「千鶴さん、お聞きしたいことがあります」
霧子(きりこ)「ご主人のお墓は、この敷地内にあるんですか?」

〇華やかな広場
千鶴(ちづる)「この下に主人は居るの。変わり者でしょ?」
千鶴(ちづる)「みんなが集う、小さな中庭」
千鶴(ちづる)「いつまでも、楽しい仲間や家族と一緒に居たかったのよね」
霧子(きりこ)「ご主人のキモチ、分かります。暗号も、遺産を探してほしいのではなく、」
霧子(きりこ)「『自分の墓参りに来いよ』というメッセージなのかもしれませんよ?」
千鶴(ちづる)「ええ、そうね。──正直遺産なんて、あってもなくても構わないの」
千鶴(ちづる)「もし本当にあったら、アナタたちに全部あげても良くってよ」
霧子(きりこ)「アハハ・・・それは置いておいて」
霧子(きりこ)「それにしても、千鶴さん、あなたは本当は千鶴さんなんですか?」
新(あらた)「霧子、何言ってるの?」
霧子(きりこ)「痴呆症とも違う、自分では制御出来ない人格──」
霧子(きりこ)「解離性同一性障害なのでは?」

〇華やかな広場
千鶴(ちづる)「佐川さん・・・いえ、本当は違う名前のお嬢さん、」
千鶴(ちづる)「正解よ。アナタって、親切なだけでなく、頭までキレるのね」
千鶴(ちづる)「昔から二重人格の兆候はあったのだけど、息子の死を前にして、千鶴は耐えられなかった」
千鶴(ちづる)「完全に私と離れて、妄想の世界・・・囚われのお姫様にならなければ、生きていけなかったのね」
千鶴(ちづる)「私は私で、千鶴を聖子の魔の手から助けなきゃならなかったから、忙しかったのよ?」
千鶴(ちづる)「なんとかボケたフリをしていたけど、苦手な聖子の声でスイッチが切り替わるようになってしまって、そろそろ限界だったわ」
千鶴(ちづる)「そんなとき、アナタに会えた」
千鶴(ちづる)「アナタなら、私の話を聞いてくれそうだったと思って招待したのだけど、」
千鶴(ちづる)「主人の謎解きと聖子の追い出しを同時にやってくれるなんて、期待以上よ!」
千鶴(ちづる)「ホントに、ありがとう。私は安心して、施設に入ります」
  私はご主人のお墓であるアーチ型の石段を触って、遺産があるか調べようかと思ったのだが
  ちょっと無粋な気がして、それはやめることにした。

〇高級マンションの一室
霧子(きりこ)「あ、二階堂さんのニュースやってるわ」
新(あらた)「結局、聖子さんは蒸発したし、千鶴さんの要望で、あの豪邸は取り壊すことになったみたいだね」
霧子(きりこ)「ん?」
アナウンサーの声「な、なんと取り壊された中庭から一億円もの金貨が見つかり──」
霧子(きりこ)「イッ!」
「一億円〜!?」
アナウンサーの声「千鶴さんの要望で、全て児童養護施設などの団体に寄付されることになりました」
霧子(きりこ)「・・・・・・」
新(あらた)「1割だけでも・・・もらっとけば・・・」
霧子(きりこ)「そ、そういえば、新」
新(あらた)「何?」
霧子(きりこ)「私が消える前に言ったあの言葉」
新(あらた)「あっ・・・あれのこと?」
霧子(きりこ)「あれは、私がふかーく考えるように、」
霧子(きりこ)「ウソだけど、言ってくれたんだよね?」
新(あらた)「・・・え?」
新(あらた)「俺、なんて言ったかな?」
霧子(きりこ)「ウソ!覚えてるくせに!! ──こう言ったじゃない」
霧子(きりこ)「a.俺と付きあってくれない? b.俺と結婚しよう! c.ナスカの地上絵って、オジサン2人で書けるって、ホントかな?」
霧子(きりこ)「最後の問題はあなた次第です!」
霧子(きりこ)「あなたならこの2人を、どんなエンディングにしますか?」
  Fin

コメント

  • 驚きの展開ですね!3話連載でもダレることなく、終始楽しませてもらいました。ラストの3択は、"C"を選ぶような無粋な人間ではいたくないですね。(本当は”C”だったらどうしよう…)

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