読切(脚本)
〇住宅街
死神(縞)「・・・・・・ここか」
〇女性の部屋
高見 涼音「あぁー、またSSR出なかった」
高見 涼音「こうなったら・・・・・・恒例の願掛けしよ」
涼音は、スマートフォンの点滅にあわせてリズムゲームのように画面をタップする。
死神(縞)「・・・・・・おい」
高見 涼音「SSR、SSR・・・・・・ウィルガ様のカード来い・・・・・・」
死神(縞)「おい、人間」
高見 涼音「うー、ダメだ」
死神(縞)「おい、聞いているのか!」
高見 涼音「なに! って・・・・・・え?」
涼音がスマートフォンから顔をあげると、目の前に青年が立っていた。
死神(縞)(口を開けたまま固まっている。 アゴでも外れたか)
死神(縞)「やっと気がついたか人間。 お前に話が・・・・・・」
高見 涼音「ウィルガ様っ!?」
死神(縞)「は?」
高見 涼音「え、顔が似て・・・・・・」
死神(縞)「ジロジロ見るな」
高見 涼音「あ、ごめんなさい。 いや、そうじゃなくて普通に誰!?」
死神(縞)「俺は、死神だ」
高見 涼音「なんて?」
死神(縞)「・・・・・・死神だ」
高見 涼音「死神・・・・・・? ゲームのやり過ぎでついに幻覚が・・・・・・?」
死神(縞)「これは現実だ」
高見 涼音「本当に言ってるの?」
死神(縞)「信じていないようだな」
死神(縞)「高見涼音、19歳。 現住所はーー。 ○○大学に通う学生。 身長156cm、体重は・・・・・・」
高見 涼音「わー! わかった、わかったからこれ以上しゃべらないで」
高見 涼音「死神が私の家に来たということは、つまり・・・・・・」
死神(縞)「お前の魂を回収しに来た」
〇メイド喫茶
死神(縞)「・・・・・・なぜ俺はここにいる」
高見 涼音「え、私の最期のお願い聞いてくれるんじゃないの?」
〇女性の部屋
死神(縞)「魂を回収する前に、最後の願いを聞いてやる」
高見 涼音「意外と良心的」
高見 涼音「そうだなぁ。 あ、死神とデートしてみたい!」
死神(縞)「は?」
高見 涼音「せっかくだし、最期まで一緒に過ごしてよ」
死神(縞)(死が近づいているというのに、ちっとも臆さないこいつは何なんだ)
死神(縞)「・・・・・・わかった、叶えてやろう」
〇メイド喫茶
死神(縞)「たしかに言ったが・・・・・・なんだこの眩しい部屋は」
高見 涼音「コラボカフェだよ!」
死神(縞)「こらぼかふぇ?」
高見 涼音「そうそう。 むこうに貴方に似てるって言った、私の推しのパネルがあるでしょ?」
死神(縞)「あぁ・・・・・・」
高見 涼音「ウィルガっていってね、顔に縞模様のアザがあるキャラなんだけど本当にカッコよくて・・・・・・」
高見 涼音「あぁ、ウィルガっていうのは縞模様って意味なんだけど・・・・・・アザがあるのには理由が・・・・・・」
涼音のマシンガントークがはじまり、死神はひどく混乱した。
高見 涼音「そういえば、貴方はなんて名前なの?」
死神(縞)「言わない」
高見 涼音「なんで?」
死神(縞)「ふん、・・・・・・人間如きが俺の名前を知る必要はない」
高見 涼音「ふぅん。 じゃあ縞さんって呼んじゃお」
死神(縞)「は? し、まさん・・・・・・?」
高見 涼音「うん。 ウィルガ様に顔も似てるし、呼びやすいし。 やだ?」
死神(縞)「・・・・・・面倒だ。 それでいい」
〇メイド喫茶
死神(縞)「おい、人間。 ・・・・・・これは何だ? 毒薬か?」
高見 涼音「いやいやフロートだよ。 知らないの?」
死神(縞)「知るか」
高見 涼音「人間界によく来るんでしょ? 食事とかしないの?」
死神(縞)「・・・・・・人間界には興味がない」
高見 涼音「そうなんだ。 でもせっかくだし、飲んでみたら?」
目の前で涼音が飲んでいる姿を確認した死神(縞)は、おそるおそるストローに口をつける。
死神(縞)「・・・・・・!!」
死神(縞)(なんだこの液体は・・・・・・! どぎつい色をしているのに・・・・・・美味い)
高見 涼音「ね、美味しいでしょ?」
死神(縞)「ふん、まぁまぁだ」
高見 涼音「それね、隠し味に毒が入ってるんだ」
死神(縞)「ブフォっ!!」
高見 涼音「うそうそ。 冗談」
死神(縞)(こいつ・・・・・・!)
高見 涼音「ごめんごめん、はいティッシュ」
高見 涼音「ねぇ、せっかくだからもっと人間界に触れてみたら?」
死神(縞)「結構だ」
高見 涼音「じゃあ、次のお店いこー」
〇水中トンネル
涼音は、死神(縞)を色々なところへ連れまわした。
死神(縞)「・・・・・・ほう。 これが水族館か」
高見 涼音「ねぇ、人間界に興味がないって言ってたけどうそでしょ」
死神(縞)「・・・・・・! 嘘じゃない」
高見 涼音「だってさっきから目の奥が輝いてるよ」
死神(縞)「そんなことはない」
高見 涼音「本当? でも楽しそうだよ」
死神(縞)「あぁ、もう煩い! お前は何なんだ! これから魂を回収されるのに、全然未練がましくしない」
死神(縞)「人間の世界に興味がないのはお前のほうだろう!」
高見 涼音「・・・・・・」
死神(縞)の言葉に、涼音はしばらくの間
黙りこんでいた。
高見 涼音「縞さんが言ったとおりだよ」
高見 涼音「現実世界は大変なことがたくさんあるからね。 ソシャゲに逃げてたというか・・・・・・まぁ、ゲームは本当に楽しんでるけど」
高見 涼音「現実はそうじゃないのかも」
死神(縞)「・・・・・・」
高見 涼音「あ、今の生活が嫌なわけじゃないよ」
高見 涼音「ただ、魂が回収されるって知って少しホッとしちゃったのは事実」
死神(縞)「・・・・・・やめだ」
高見 涼音「え?」
死神(縞)「お前の魂を回収するのはやめる」
高見 涼音「急にどうして?」
死神(縞)「つまらないからだ。 生き生きしていない魂は回収しても価値がない」
涼音が、死神(縞)の顔をじっと見つめている。
死神(縞)「俺は、ウィルガじゃない」
高見 涼音「それはわかってるよ」
死神(縞)「・・・・・・俺が、お前の推しになってやる」
高見 涼音「へ?」
死神(縞)「俺は、まだ・・・・・・行きたいところがある。 食べたいものもある」
死神(縞)「だから、お前は次会うまでこの世界で下調べをしておくんだな!」
高見 涼音「・・・・・・なにそれ。 推しってどんな存在かわかってる?」
死神(縞)「あぁ。 お前がさんざん語っていたからな」
高見 涼音「推しっていうのは・・・・・・」
高見 涼音「日々の生活で支えになる存在・・・・・・」
高見 涼音「・・・・・・!」
死神(縞)「ふん、俺はそこまで言ってない」
高見 涼音「あーあ、魂回収されると思ってゲームのデータ消しちゃったのになぁ」
死神(縞)「またやり直せるだろう」
高見 涼音「それもそっか」
そう言って涼音が振り返ると、死神(縞)の姿はどこにもなかった。
〇渋谷の雑踏
死神(縞)「縞さん、か。 次は名前教えてやるよ」
死神さんはミイラ取りがミイラになった状態ですね。現実生活に辛さを感じソシャゲが唯一の癒しだった彼女を助けてあげたくなったのですね。二人がめでたく再会できるの祈ってます。
死神さんかわいいですね!
ドリンク飲む時のリアクションに萌えました。
こんな素敵な死神さんが推しになってくれたら、日常も楽しくなりそうです!
素直じゃない感じが死神ぽくもあり、可愛いなぁとも感じました。実際には、よほどふたりのおでかけ(デート)が楽しかったんでしょうね。死神さん、今後も地球をどうぞ満喫してください。