後宮!功夫娘娘物語

秋山ヨウ

第十一話『狙われる理由』(脚本)

後宮!功夫娘娘物語

秋山ヨウ

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〇皇后の御殿
  ある日の午後。
  特に何事もなく、玉兎たちはのんびりと過ごしていた。
麗華「・・・戻ったわ。娘娘はいらっしゃる?」
玉兎「おかえりなさい! 娘娘は奥の部屋で休まれてますよ!」
小宝「ほれ、おまえも茶を飲め、麗華。 茶菓子もあるぞ」
麗華「サボり中なわけね。 玉兎、悪いけど湿布を作ってくれない?」
玉兎「ほえ? ・・・どうされたのですかっ!? 足首が腫れてますよ!!」
麗華「大きな声を出さないで。 ちょっと突き飛ばされただけよ」
小宝「なんだなんだ、麗華が標的にされるなんて大ごとではないかっ!!」
麗華「だから、あなたまで大声を出さないでったら!」
玉兎「まさか、嫌がらせを?」
麗華「最悪よ。娘娘を軽んじるような空気が蔓延してるわ。この私に、こうも簡単に手出しをしてくるんだから」
  麗華は語気荒く強がってみせるが、落ち込んでいるのは玉兎の目にも明らかだった。
小宝「なあ麗華よ、医官に診せなくていいのか?」
麗華「そんなことをすれば大ごとになるわ。 玉兎、小宝、二人とも娘娘には黙っていなさいよ」
小宝「だがなぁ・・・」
麗華「いいから、黙っているのよ! いいわね!?」
玉兎「・・・・・・」

〇皇后の御殿
玉兎「娘娘、今晩寒月さんは来ますか?」
皇后「ええ、来るわよ。 今日は事前に連絡があったから」
玉兎「娘娘のお話が済んだら、少し寒月さんとお話する時間をいただけませんか?」
皇后「構わないわ。 ふふっ、どんなお話をするのかしら?」
玉兎「そっ、それは秘密です・・・!」
皇后「まあ・・・本当に? いつの間に寒月とそんな仲になっていたの?」
玉兎「はい? へ、変なことじゃないですよ?」
皇后「いのよ、誤魔化さなくても。わたくしはそういったことには寛容なの。二人きりの時間を作ってあげるから、楽しみなさい」

〇後宮の一室
寒月「人を密室に呼び出して、何をするつもりだ・・・?」
玉兎「そ、そんなに警戒しないでくださいよー! 娘娘に寒月さんとお話したい、とお願いしたら、こんなことに・・・」
  部屋に鎮座する寝台を横目に、寒月が腕を組む。
寒月「それで、話とは何だ」
玉兎「・・・今日、麗華さんが後宮で突き飛ばされて、怪我をしたんです」
寒月「何だと? 麗華は娘娘の第一の侍女だぞ」
玉兎「娘娘に矛先が向いているのはなぜですか? 麗華さんが嫌がらせを受けるなんて、おかしいです!」
寒月「後宮を平穏に治めるのは娘娘の責務だ。 よって、何か起これば娘娘のせいになる」
玉兎「この噂話も、誰かの良からぬたくらみ・・・なのですよね」
寒月「そうだろう。おそらく後宮の内部に、扇動している者がいる」
  玉兎はごくりと唾を飲みこむと、思い切って寒月を見上げた。
玉兎「・・・娘娘が狙われる理由は、『秘花宝典』だけなのですか?」
寒月「何が言いたい? 先ほどから回りくどいぞ」
玉兎「秘伝書が目的ならば、娘娘を襲いにくればいいじゃないですか。なのになんだか・・・おかしい気がするのです」
寒月「・・・はぁ」
玉兎「玉兎だって一応、考えるのですよー!!」
寒月「ああ、それは十分わかった。わかったから、大声で自分の名前を叫ぶな」
玉兎「はぁっ! す、すみません・・・!」
寒月「説明する。おまえは陛下が皇太子だった頃のことを・・・知らないのだったな」
玉兎「はい、まったく知りません!」
寒月「威張るな。陛下が皇太子だった時、太子妃がいたのだ。今の・・・おまえとは別にな」
玉兎「・・・もしかして、太子妃の幽鬼って」
寒月「ああそうだ。陛下が即位なさったすぐ後、立后(りっこう)の儀を目前にして・・・太子妃は亡くなった」
玉兎「ご病気ですか・・・?」
寒月「おそらくはな。その後釜に座ったのが、今の皇后だ。そして皇后は長らく・・・太子妃を殺したのではないかと噂されていた」
玉兎「え?」
寒月「おかしな話でもないだろう。 太子妃が死に、すぐ後に皇后になったのだから疑われもする」
玉兎「で、でも・・・そんなことしてないですよね!?」
寒月「当然だ。だが、今でも皇后を疑い、恨んでいる者もいる。その筆頭が──太子妃の父である、尹宰相」
玉兎(・・・あれ? 尹宰相の娘は、確か淑妃さまでは?)
玉兎「もしかして太子妃さまは、淑妃さまの・・・」
寒月「なんだ、ちゃんと覚えているのだな。おまえの言う通り、太子妃は淑妃の姉だった」
玉兎「つまり・・・淑妃さまも娘娘を恨んでいると?」
寒月「その可能性は高いだろう」
寒月「秘伝書『秘花宝典』は代々皇后に受け継がれるもの。いわば、皇后の証だ」

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