後宮!功夫娘娘物語

秋山ヨウ

第三話『いえ、ただの宮女です』(脚本)

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秋山ヨウ

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〇後宮の廊下
皇后「そこのおまえ。お立ちなさ──」
  ぞくぞくっと玉兎のうなじの毛が逆立つ。
玉兎「──伏せてくださいっ!!」
男性「なっ・・・!」
  ──風切り音を立てて、一本の矢が飛来する。
玉兎「見えていますよ!」
  玉兎が手刀で矢を払いのけると同時に──
  ギラリと光る刃を手にした凶手が姿を現した。
玉兎「・・・危険な場所だというのも、案外嘘ではなさそうですね」
凶手・一「宮女か。死にたくなければそこをどけ」
玉兎「生憎ですが、それはできません」
凶手・二「徒手空拳の女に何ができ──」
  凶手に肉薄した玉兎は、握りこんだ拳をその腹に叩き込む。
玉兎「この拳だけで十分。 武器など必要ありません! いざ!」
  電光石火のごとく地を蹴る玉兎。
玉兎「──はっ!」
  凶手に肉薄した玉兎は、握りこんだ拳をその腹に叩き込む。
凶手・一「かはっ・・・!」
凶手・二「ただの宮女ではないようだな。かかれ!」
男性「衛兵!! 彼女を援護しろ!!」
衛兵「陛下のおそばを離れるわけにはまいりません」
玉兎「ご心配なくー! どうやらこの凶手、手練れではないようです!」
凶手・二「抜かせ・・・!」
  颯々と振るわれた刃を素早くかわしながら、玉兎は攻撃の機会をうかがう。
玉兎「ふむ・・・ふむふむ!」
  鼻先をかすめる刃を見もせずに、玉兎は覆面の凶手をじっと観察していた。
玉兎「──南州華門(なんしゅうかもん)の刀術ですね」
玉兎「しかし、もったいないです! 修行が足りていませんね。内力が備わっていないから、刃が軽いんですよ」
凶手・二「・・・っはあ!」
  刃を握る手ごとヒョイと掴み、玉兎は凶手の腕をひねり上げた。
  ──ゴギリ。
凶手・二「いっ・・・ぐああああっ!?」
凶手・三「ちっ、油断するからだ!」
玉兎「いえ、ただの実力差です──せいっ!」
  掴んでいた腕を、肩に担ぐように体をひねる。そして思い切り──凶手を投げつけた。
凶手・三「う、うわあああ!?」
  ──ドサッ。
玉兎「結局、三人きりですか。無謀ですねえ」
玉兎「みなさん、ご無事でしたか?」
男性「あ、ああ・・・」
衛兵「女、それ以上陛下に近づくな! 貴様も仲間ではないだろうな!?」
玉兎「はい? 玉兎はただの宮女です! それに、陛下って・・・」
男性「・・・・・・」
皇后「あらあら、まあ」
玉兎「・・・皇帝陛下!?」
皇帝「衛兵、あの自称・宮女を拘束しろ」
玉兎「ままま待ってくださいー!!」

〇皇后の御殿
玉兎(まさか皇帝陛下だったなんて・・・男性がいるのはおかしいと思いましたが!)
玉兎(うう、これからどうなってしまうのでしょう!?)
皇帝「・・・案内ご苦労。 皇后以外の人間は、全員下がれ」
皇后「大人しくしているわね。 お利口さんじゃない」
玉兎「は、はぁ」
皇帝「さて。まずはおまえの名と所属を言え」
玉兎「葉玉兎(ようぎょくと)と言います。新入り宮女で、まだ所属は決まっていません。尚服局で下働きをしています」
皇后「ということは、洗濯女ね。 なぜ夜間に外出を?」
玉兎「先輩に、殿舎の掃除をしろと言われたんです。その殿舎で井戸に突き落とされまして、友達がケガをしたんです」
皇帝「・・・情報量が多いぞ」
玉兎「その友達を連れて医局に向かう途中、またまた! 誰かに突き飛ばされまして」
皇帝「・・・・・・」
玉兎「殺意がないと、あまり気が付けないんですよね。はぁ、玉兎もまだまだ未熟者です・・・」
皇后「面白い子ねえ。 どうしてあんなに戦えたの?」
玉兎「それは・・・実家が武門でして」
皇帝「どこの出身だ。 おまえの技は北州の拳法に見えたが」
玉兎「あ、あれはつい先日北州を旅していた時に、意気投合したご老体から教えてもらいまして」
玉兎「実家は・・・そのう・・・」
皇帝「破門でもされたか」
玉兎「ど、どうしてそれをっ!」
皇后「ふふ、それで後宮に来たのね」
玉兎「はい・・・それに、後宮は天下一のおなごが集まる場所と聞き、てっきり武闘会でもあるのかと」
皇帝「・・・皇后、本当にコレでいいのか?」
皇后「まあ陛下、眉間にシワが。 わたくしは気に入りましたわ」
皇帝「・・・あなたがそう言うのなら」
玉兎「あのう、玉兎はこれからどうなるのでしょう? お勤めに戻していただけますか?」
皇帝「それはできない」
玉兎「わあ、ありがとうございます!」
皇帝「できないと言ってるだろうが。 人の話を聞け!」
玉兎「どうしてですか!? 天地に誓って、玉兎は無頼の輩ではありませんよー!」

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コメント

  • マイペースを崩さない主人公ちゃんよ……!😇
    要求が図々しい可愛い……。
    『ドキッ!女だらけの武闘会』では勿論ありませんでしたが、本当にそんなんあっても面白そうですね(笑)。

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