DetectiveAlchemist −錬金術師の推理−

在日ミグランス人

EP2 ヘルメスの秘密 (脚本)

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〇闇の要塞
  シタデル砦
ヘルメス「御免」
ヘルメス「興信ギルドから来た、探偵のヘルメスという」
ヘルメス「自警団の者に目通り願えるか?」
ソフィア「んえ?」
ヘルメス「ぬお!?」
ソフィア「何だ。ヘルメスじゃん」
ヘルメス「ソフィ・・・・・・ またお主か・・・・・・」
ヘルメス「自衛騎士は余程の人材不足なのだな」
ソフィア「言うじゃない」
ソフィア「あんたこそ、またおカネなくなったの?」
ヘルメス「うぐぅ・・・・・・」
ソフィア「まあいいわ。入って。事件の説明をするから」

〇闇の要塞
ソフィア「どうでもいいけどさ、」
ソフィア「あんたって本業は錬金術師なんでしょ?」
ソフィア「なんでそんなおカネに困ってるの?」
ソフィア「錬金術で金とか作ったらいいじゃん」
ヘルメス「錬金術に於ける金とは不老不死の肉体、或いは賢者の石の暗喩だ」
ヘルメス「実際に物理的な金が作れる訳ではない」
ソフィア「へぇ〜」
ヘルメス「仮に作れたとしても、あっという間に価値が暴落してしまうだろう」
ヘルメス「金は希少だからこそ価値がある」
ソフィア「成程ね」
ソフィア「で、何でおカネないの?」
ヘルメス「へぐっ・・・・・・」
ヘルメス「いや、だから、その、あ〜・・・・・・ 研究とか色々?」
ヘルメス「そんな事より、ここはどういう場所なのだ?」
ソフィア「えっとね・・・・・・」
ソフィア(誤魔化しやがったわね・・・・・・)
ソフィア「シタデル砦。昔は戦争の要所だったけど、今は殆ど使われていないわ」
ソフィア「一応、戦闘施設としての機能は維持している様だけど」
ヘルメス「戦争など、もうここ何十年と起きていないからな」
ソフィア「そ。だから半分はテーマパークみたいになってるらしいわ」
ヘルメス「てぇまぱぁく? 娯楽施設なのか?」
ソフィア「戦闘施設としては維持しなきゃいけない」
ソフィア「でも大きな戦争はないから、予算は割けない」
ソフィア「維持費を捻出する為の、苦肉の策らしいわ」
ヘルメス「なんとまぁ・・・・・・」

〇上官の部屋
ソフィア「自衛騎士です。失礼します」
「入れ」
クトイテ「子供?」
ヘルメス「興信ギルドから来た錬金術師のヘルメス・トリスメギストスという」
ヘルメス「今回の事件を担当する」
クトイテ「女子供に付き合っている暇はないのだが・・・・・・」
ソフィア「お言葉ですが、腕は確かです。お許し下さい」
クトイテ「ふむ。ではお手並み拝見といこう」
クトイテ「責任者のクトイテだ。宜しく頼む」
ヘルメス「2つ程訂正したい」
クトイテ「何だね?」
ヘルメス「儂は子供ではない。お主の倍以上は生きている」
クトイテ「面白い冗談だ」
ヘルメス「それから女でもない」
「・・・・・・」
「えぇ!?」
クトイテ「な、何故君まで驚くんだ?」
ソフィア「え? いや、どう見ても、え?」
ヘルメス「では捜査を始めよう」
ソフィア「ちょま・・・・・・ 置いてかないでよ〜」

〇城壁
ヘルメス「ここが事件現場・・・・・・」
ヘルメス「矢を討つ為の高台か」
ヘルメス「どうやって登るのだ?」
ソフィア「ちょっと待ってね」
ヘルメス「これで登るのか?」
ソフィア「しょーがないでしょ。ハシゴとかないんだから」
ソフィア「んしょ・・・・・・」
ヘルメス「どっこらせっと・・・・・・」
ヘルメス「ふぅ・・・・・・」
ヘルメス「ハシゴくらい事前に用意しておいてほしいものだな」
ソフィア「現場保存よ」
ヘルメス「・・・・・・」
ヘルメス「被害者は?」
ソフィア「この人ね」
ソフィア「最近雇われたゼロさんよ」
ソフィア「何者かしら? エルフ?」
ヘルメス「・・・・・・」
ソフィア「どうしたの?」
ヘルメス「ああ、いや。なんでもない」
ヘルメス「心臓を一突き。見事なものだな」
ヘルメス「他に外傷は見当たらない」
ヘルメス「で、凶器はこれか」
ヘルメス「事件があったのはいつ頃だ?」
ソフィア「昨日の深夜ね。ゼロさんが歩哨に立っていた時間らしいわ」
ヘルメス「歩哨って・・・・・・ 娯楽施設なのだろう?」
ソフィア「半分は、ね」
ヘルメス「本格派、という訳か」
ヘルメス「目撃者は? 深夜ではおらんか?」
ソフィア「そうね。矢を討った音なんて、誰も気づかないだろうし」
ヘルメス「しかしどこから・・・・・・」
ソフィア「矢を討つ為の高台で、矢を討たれた・・・・・・」
ソフィア「結構謎な状況よね」
ヘルメス「ハシゴがなければ登れないのだから、実質密室みたいなものだな」
ソフィア「何か魔法でも使ったのかしら?」
ヘルメス「調べてみよう」
ソフィア「何だっけ? ナントカ・パピルス」
ヘルメス「ゴニディオン・パピルス。触れたものの魔紋を検出する」
ヘルメス「何の魔法もかかっていない」
ソフィア「純粋に放っただけ、なのね」
ソフィア「でもどうやって・・・・・・」
ヘルメス「ざっと見渡しても、矢で狙える位置などないな」
ヘルメス「あの反対側の高台からならどうだ?」
ソフィア「多分届かないわね」
ソフィア「思いっきりバフでもかけないと・・・・・・」
ソフィア「でもそれだと威力がありすぎて、建物ごと壊しちゃいそう」
ヘルメス「見たところそんな痕跡はないな。多少の乱れはあるが」
ソフィア「それか必中のスキルとか?」
ヘルメス「そんなのあるのか?」
ソフィア「いや、知らんけど・・・・・・」
ヘルメス「むむむむむ・・・・・・」

〇西洋風の部屋
ソフィア「こちらは従業員のモブミさんよ」
ヘルメス(要するに容疑者か)
モブミ「どうも・・・・・・」
ヘルメス「宜しく頼む」
モブミ「あの! 信じて下さい! 私、犯人じゃありません!」
モブミ「弓は使いますけど・・・・・・」
ソフィア「証拠もないのに疑ったりしませんよ」
ソフィア「皆さんにお聞きしています」
ソフィア「昨晩は何をされていましたか?」
モブミ「何って・・・・・・」
モブミ「ここで寝ていました」
ヘルメス(アリバイはなし、と)
ソフィア「住み込みなんですか?」
モブミ「従業員はみんなそうです」
ソフィア「被害者のゼロさんとの関係は?」
モブミ「関係もなにも・・・・・・」
モブミ「最近入ったばかりの人ですから、話した事もないです」
ヘルメス「もし仮に・・・・・・」
ヘルメス「お主があの被害者を殺害するとしたら、どんな手を使う?」
モブミ「そんな・・・・・・ 殺すだなんて・・・・・・」
ソフィア「ヘルメス!」
ヘルメス「仮の話だ」
ヘルメス「例えば、必中のスキル、とやらを使えば?」
モブミ「・・・・・・」
モブミ「・・・・・・不可能です」
モブミ「私は習得していませんし、」
モブミ「仮に持っていたとしても、必中は矢の射程範囲内の話です」
モブミ「そもそも届かなければ、当てる事など出来ません」
ヘルメス「それもそうか・・・・・・」
モブミ「バリスタとか、投石器の類を使えば、可能かも知れませんが・・・・・・」
ヘルメス「命中率は著しく低下するだろうし、大きな音が鳴ってしまう・・・・・・」
ヘルメス「バレずに犯行、とはいかんか」
モブミ「その通りです」

〇兵舎
ソフィア「こちら従業員のモブジロウさんよ」
モブジロウ「どうも! パラディンのモブジロウです!」
モブジロウ「ライデイン!」
モブジロウ「ギガデイン!!」
モブジロウ「パラデイン!!!」
モブジロウ「っつってねっ」
モブジロウ「何でも聞いて下さい!」
モブジロウ「あ、恋人はいませんよ!」
モブジロウ「絶賛募集中です!!」
「・・・・・・」
(早めに終わらせよう)
ソフィア「昨晩は何をされていましたか?」
モブジロウ「ここで筋トレをしていました!」
モブジロウ「大胸筋のレベリングですね!」
ヘルメス「もし仮に、お主が被害者を殺害するとしたら、どうやってやる?」
モブジロウ「そうだなぁ・・・・・・」
モブジロウ「レベルを上げて物理で殴る、かな?」
ソフィア「とても参考になりましたありがとうございます失礼しました」

〇兵舎
ソフィア「こちらは元従業員のモブイチさんよ」
ヘルメス「元?」
モブイチ「先週、クビになったんです」
モブイチ「でも昨晩、あんな事件があって呼び戻されたんです」
ヘルメス「見たところ獣人のようだが、クラスは?」
モブイチ「盗賊です」
ヘルメス「成程。戦闘には不向きなクラスだ」
ヘルメス「クビになったのもそんな理由か」
ソフィア「ヘルメスってばっ!」
モブイチ「わかりません・・・・・・ でも多分そうだと思います・・・・・・」
モブイチ「戦いでは、直接役に立てる事は多くありません」
ヘルメス「昨晩は何をしていた?」
モブイチ「この部屋で待機していました」
ヘルメス「待機? 寝ていない?」
モブイチ「はい。夜行性なので」
ソフィア「何か、物音とかしませんでしたか?」
モブイチ「24時間営業なので、まったくなかった訳ではありませんが、」
モブイチ「でも、不審な点はなかったと思います」
ヘルメス「お主が被害者を殺害するとしたら、どうする?」
モブイチ「そんな! 無理ですよ!」
モブイチ「御自分も仰ったじゃないですか。戦闘には不向きだって・・・・・・」
ヘルメス「ああ。だが遠距離から矢を射るくらいは出来るだろう?」
モブイチ「・・・・・・それも無理です。僕にはそんなスキルも魔法も使えない」

〇上官の部屋
ソフィア「失礼します」
クトイテ「おお。君等か」
クトイテ「どうだね。捜査の進捗は?」
ソフィア「それは・・・・・・」
ヘルメス「下手人の目星はついた。後は証拠固めだけだ」
ソフィア「えぇっ!?」
クトイテ「それは凄い」
クトイテ「で? 誰なんだ?」
ヘルメス「その前に確認しておきたい」
クトイテ「何だね? 捜査に関係がある事なら、何でも答えよう」
ヘルメス「この施設の経営状況だ」
クトイテ「むむ・・・・・・」
クトイテ「芳しくはない。恥ずかしい限りだが、従業員の給料も満足に支払えていない」
ソフィア「それは・・・・・・」
クトイテ「言いたい事はわかるが、労働に関する事と、捜査に関する事は別の筈だ」
クトイテ「今は勘弁してほしい」
ソフィア「まあ管轄が違うので口は出しませんが・・・・・・」
ヘルメス「それで? あのモブイチとかいう獣人を解雇したのか?」
クトイテ「その通りだ。盗賊では直接、戦闘の役には立たない」
ヘルメス「その割には、すぐにあの被害者の男を雇ったようだが?」
クトイテ「うっ・・・・・・」
クトイテ「安くても良いからと、言ってきたからだ」
ヘルメス「ほう・・・・・・」
クトイテ「給料の話は良いだろう。それで犯人は誰なんだ?」
ヘルメス「・・・・・・」
ヘルメス「証拠を探して来る」
ソフィア「あ、ちょっと、ヘルメス?」
クトイテ「・・・・・・」
ソフィア「もう! 何なのよぉ〜」

〇城壁
ソフィア「ちょっとヘルメス」
ソフィア「犯人がわかったって、一体誰なのよ」
ヘルメス「モブイチか、モブミのどちらかだ」
ソフィア「あ、まだ候補が絞れただけ?」
ヘルメス「目星がついた、と言っただけだ。特定はできていない」
ソフィア「取り敢えず、あのモブジロウさんではないのね」
ヘルメス「恐らく。だがあやつのお陰で真相に近づけた」
ソフィア「へ? どゆこと?」
ヘルメス「それをこれから調べる」
ソフィア「あら、カワイイ」
ヘルメス「ミーミルの犬という。臭気を識別してくれる」
ソフィア「しゅーき? 臭いがわかるってコト?」
ヘルメス「そういう事だ」
ヘルメス「ほれ。このへんかな?」
「・・・・・・クセぇぜ イカ臭えオスの臭いがしやがる・・・・・・」
ソフィア(カ、カワイくない・・・・・・)
ヘルメス「オス? 種族は?」
「ケダモノの臭いだ・・・・・・ クソ雑食の亜人野郎だな・・・・・・」
ソフィア(クチ悪・・・・・・)
ヘルメス「間違いない。モブイチの犯行だ」
ソフィア「・・・・・・」
ソフィア「でも何でモブイチさんが?」
ソフィア「いや、どうやって・・・・・・」
ヘルメス「何の事はない。モブジロウが言っていたではないか」
ヘルメス「『レベルを上げて物理で殴る』と」
ソフィア「だから、どういう事よ」
ヘルメス「凶器が『矢』だったからといって、必ずしも『弓』を使ったとは限らない」
ソフィア「弓を使わずに? 矢を?」
ソフィア「・・・・・・投げるとか?」
ヘルメス「たわけ」
ヘルメス「直接手に矢を持って、突き刺せば良いではないか」
ソフィア「・・・・・・へ?」
ソフィア「そんだけ?」
ヘルメス「そんだけ」
ソフィア「えぇ〜・・・・・・」
ヘルメス「わかってしまえば、どうという事はなかったな」
ヘルメス「ロープを使わなければ、ここまで登っては来れない」
ヘルメス「獣人で盗賊のモブイチなら簡単だっただろう」
ヘルメス「或いはロープなどなくても可能だったかも知れん」
ソフィア「そっか。モブジロウさんの巨体では不可能か」
ソフィア「登れないか、途中で被害者に気付かれる」
ヘルメス「臭いのお陰で、モブミでない事も確定した」
ヘルメス「先週解雇された筈のモブイチの臭いが、昨夜の事件で残っているのが何よりの証左だ」
ソフィア「成程ね」
ソフィア「でも動機は何だったのかしら?」
ソフィア「やっぱり解雇された事?」
ソフィア「それなら雇用主のクトイテさんを狙うか」
ヘルメス「従業員に欠員が出れば補充するだろう」
ヘルメス「恐らくそんな理由だ」
ヘルメス「まあ、そのへんは任せる」
ヘルメス「じゃあな」
ソフィア「え? どこ行くのよ」
ヘルメス「事件は解決したんだから、儂の出番はもうないだろう」
ヘルメス「野暮用を済ませてくる」
ソフィア「ええっ・・・・・・ んもう! 勝手ね・・・・・・」

〇上官の部屋
ヘルメス「邪魔をするぞ・・・・・・」
クトイテ「君か・・・・・・」
クトイテ「事件を解決してくれた事は礼を言う」
クトイテ「だが少々無礼だったな」
クトイテ「なるべく早く帰ってもらえると嬉しいのだが」
ヘルメス「そうもいかん」
ヘルメス「あの被害者。ゼロという男について聞きたい」
クトイテ「む・・・・・・」
ヘルメス「あやつは・・・・・・」
ヘルメス「人造人間(ホムンクルス)だろう」
ヘルメス「髪が緑色なのは?」
ヘルメス「葉緑体でも仕込んであるのか」
ヘルメス「体内でグルコースが生成できれば食費が浮く・・・・・・」
ヘルメス「ついでに人権はないから給料を払う必要もない」
ヘルメス「さぞ楽にこき使える従業員だったろう」
ヘルメス「どこで手に入れた?」
クトイテ「何故それを・・・・・・」
クトイテ「いや、何故知っている・・・・・・」
クトイテ「はっ!!」
クトイテ「髪・・・・・・」
クトイテ「赤い髪・・・・・・ 赤い瞳・・・・・・」
クトイテ「赤い瞳・・・・・・ 赤い石・・・・・・」
クトイテ「賢者の・・・・・・」
クトイテ「ホムンクルス・・・・・・」
クトイテ「小さき人・・・・・・」
クトイテ「お前は・・・・・・」
クトイテ「一体・・・・・・」

次のエピソード:EP3 ヘルメスとソフィアとイリス

コメント

  • 以前、1話目を読んでいたので、2話目を読み、もう一度1話目に戻ったのでリアクションが前後しました。スミマセン。
    以前はヘルメスちゃんが可愛いのに儂キャラで、ギャップ萌えだな〜と思っていたのですが、読み返すとファンタジーの設定がめちゃくちゃ凝っていて、なおかつちゃんと探偵もしているのが面白いです。
    ヘルメスちゃんにも謎があって惹かれるし、この組み合わせはまさに新感覚ですよね。

  • モブジロウ……!
    愛すべき脳筋キャラですね。
    そしてまさか矢を直にとは読めませんでした!
    性別は文字色で気になっていたけれど最後でなるほどと納得しました。

  • 直で矢を!?前回とは打って変わって、ファンタジー要素がミスリード?という展開に驚かされました😆
    本筋のストーリー展開も気になります!

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