メイド・ザ・リッパー

雛夢

#20 朝顔と夜顔が同時に咲く場所(脚本)

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〇豪華な部屋
  善哉寺が震える手で、夜留に拳銃を向けた。
北園夜留「やっと・・・お話、できそうです」
北園夜留「お姉ちゃんを殺したのは、善哉寺さん、ですよね」
善哉寺鏡日「な、何を今更・・・」
善哉寺鏡日「そうですわ・・・き、北園朝咲が怖かったのです! 勝てないと思った!」
善哉寺鏡日「だから最初に殺したのですわ!」
善哉寺鏡日「でも・・・それの何が悪いの・・・?  私の戦略は間違ってなかったはずですわ」
北園夜留「戦略を考えるなら、まず、相手の先を読まなきゃいけない、です」
北園夜留「善哉寺さんは、夜留と真桜の存在を、見据えていなかった」
善哉寺鏡日「偉そうに・・・貴女だって、最初は怯えているだけだった!」
北園夜留「うん・・・今もそう」
北園夜留「・・・善哉寺さんの得意な戦略はサクリファイス、駒を犠牲にする戦い方をよくされますよね」
善哉寺鏡日「もう、貴女の戯言には付き合っていられませ──」
北園夜留「善哉寺さんは自分を犠牲にして、何を、求めているのですか・・・?」
善哉寺鏡日「・・・ふん」
善哉寺鏡日「貴女のような下級貴族にはわからないでしょう」
善哉寺鏡日「私は、プルミエにならなければ、価値の無い人間なのですわ!」
善哉寺鏡日「・・・四年前、優しかったお姉様は失敗しました」
善哉寺鏡日「ただの一度の失敗で、お姉様は追放されたのです! もう・・・どこで何をしているかもわかりません」
善哉寺鏡日「私が生きるためには、プルミエになるしかなかったのですわ!」
善哉寺鏡日「善哉寺家のトップになって・・・また・・・あの大きな家で、お姉様と要と暮らしたかった」
善哉寺鏡日「そのためなら、どんな犠牲でも払おうと思った!」
善哉寺鏡日「なのに・・・貴女が邪魔をした!」
北園夜留「・・・辛かったんですね」
善哉寺鏡日「やめなさい。同情などは必要ありません!」
善哉寺鏡日「奪うか、奪われるかの世界でしか生きられない私たちに、優しさなど不要です」
善哉寺鏡日「さあ、撃たれたくなければ、私をプルミエにするよう、学園長に掛け合いなさい」
北園夜留「・・・・・・」
善哉寺鏡日「早く!」
北園夜留「・・・それは、できません」
善哉寺鏡日「な・・・撃ちますわよ・・・!  ほ、本気じゃないと思ってるんでしょう!」
善哉寺鏡日「貴女を殺して、私がプルミエになることだってできますわ!」
北園夜留「はい、撃っていいですよ」
  夜留はまっすぐに善哉寺を見つめている。
善哉寺鏡日「・・・なぜ、そんなに落ち着いているの」
北園夜留「善哉寺さん、人を殺したことはありますか?」
善哉寺鏡日「・・・ふ、ふふふ・・・! なるほど、どこまでも私を馬鹿にするつもりなのですわね」
善哉寺鏡日「ええ、自らの手で殺したことなどありません」
善哉寺鏡日「・・・貴女が、最初になりますわ」
北園夜留「その銃、どこにありましたか?」
善哉寺鏡日「え・・・? 私の部屋の引き出し──」
善哉寺鏡日「なぜ、そんなことを聞きますの・・・」
北園夜留「引き出し、でしたよね」
  夜留がチェスの盤面に視線を戻す。
善哉寺鏡日「ど、どういうこと!?」
  夜留がポケットから取り出したものを、床にばら撒いた。
  複数の軽い金属音が部屋に響く。
善哉寺鏡日「・・・嘘、ですわ・・・弾を抜いていたの・・・?」
北園夜留「だからね、善哉寺さん」
北園夜留「戦略を考えるなら、まず、相手の先を読まなきゃいけないんです」
善哉寺鏡日「そんな・・・また・・・」
  善哉寺が持っていた銃を床に落とした。
善哉寺鏡日「貴女は・・・どこまでも私の上を行くというの・・・!?」
北園夜留「夜留の番」
北園夜留「c7にナイト」
善哉寺鏡日「・・・・・・」
  俯いた善哉寺が目にしたのは、夜留がばら撒いた、弾丸によく似た金色の8個のネジだった。
  刹那、善哉寺の瞳孔が開いていく。
善哉寺鏡日「騙したの──」
北園夜留「チェックメイト」
  夜留がナイトを動かすと同時に、真桜が勢いよく部屋に飛び込んでくる。
  善哉寺の身体にタックルをするようにのしかかり、マウントポジションを取った。
善哉寺鏡日「ぐぅ・・・」
佐倉真桜「あろうことか、この部屋に入り込もうとは」
佐倉真桜「死ぬ覚悟ができた、ということですか」
善哉寺鏡日「ぶ、無礼者! どきなさいっ!」
佐倉真桜「・・・あとは貴様だけです、善哉寺鏡日」
佐倉真桜「懺悔を聞くつもりはありません」
善哉寺鏡日「ひ・・・」
  善哉寺は瞳を揺らして、恐怖に怯えている。
  振り上げた真桜の腕から流れた血が、善哉寺の顔に滴り落ちた。
北園夜留「真桜! 大丈夫だから」
佐倉真桜「・・・お嬢様、この女は──」
北園夜留「夜留、全部知ってる」
佐倉真桜「・・・!」
  真桜が善哉寺の上から飛び退いて、銃を回収する。
佐倉真桜「この女が、朝咲お嬢様を殺した!」
北園夜留「うん」
佐倉真桜「この女は、お嬢様達を侮辱したんです!」
北園夜留「うん」
佐倉真桜「・・・私は、沢山の人間を殺しました」
北園夜留「うん」
佐倉真桜「私は、大人の政治に利用されていただけの、幼気な少女達を・・・殺しました」
北園夜留「うん」
  真桜が夜留から目を逸らして、俯いた。
佐倉真桜「私は・・・私は──」
北園夜留「真桜」
  夜留が覗き込むようにして、真桜を見上げる。
佐倉真桜「はい・・・」
北園夜留「頑張ったね」
佐倉真桜「・・・・・・」
北園夜留「夜留、知ってたよ」
佐倉真桜「・・・はい」
北園夜留「もう、大丈夫だから」
北園夜留「夜留、プルミエになったから」

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