映像記録

kowaaa

1(脚本)

映像記録

kowaaa

今すぐ読む

映像記録
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇渋滞した高速道路
  今日は混んでるな・・・

〇海岸線の道路
  今日は海沿いの金田さん家か・・・

〇住宅街の道
  今日は松田さんの家か・・・

〇サイバー空間
  これは行き過ぎた恋心
  いけないと分かっている
  それでも
  ヤメラレナイ

〇住宅地の坂道
  そろそろ着く
  その坂道を超えたら
  僕の家だ

〇本棚のある部屋
カナコ「よっ」
カナコ「元気? 今日も来てやったぞー親友!」
  うん
カナコ「聞いてよーっ ホームヘルパーで行ってる松田さんなんだけどさ──」
  昨日は松田さんの家だったもんね
カナコ「でさー! コタツの上がお餅の粉だらけでさぁーっ!」
  はははっ
  松田さんは相変わらずだねぇ
カナコ「笑えるでしょーっ」
カナコ「あ、水飲む?」
カナコ「はいどーぞ」
  カナコはひとしきり仕事の愚痴とも
  笑い話ともつかない話をして
カナコ「あ、もー次の家行かなきゃっ! また近くに来たら寄るからね! じゃねっ」
  まるで台風のように部屋を出ていく
  カナコが巻起こす風は
  僕がまだ生きてる事を感じさせてくれる
  心地良い

〇本棚のある部屋
  たくさんの管に繋がれて
  たくさんの機械に繋がれて
  うまく喋れない口を持て余しながら
  ぼんやりと画面を眺める
  そう
  カナコが私物化している
  会社の軽自動車から見える景色を
  ドライブレコーダーからの景色を

〇ゆるやかな坂道
  あ、また曲がる道間違えてる
  また会いに来てくれたら
  『また道間違えちゃってさー』
  なんて言ってくるだろう
  楽しみだな・・・

〇階段の踊り場
  『不慮の事故』
  ただそれだけ
  誰も悪くない
  飲み込めないけど
  動かない足も
  うまく動かない口も
  わずかにしか動かない指先も
  今の医療じゃどうにもならないらしい

〇高速道路
  僕には友達がたくさんいる
  そのうちの1人が面白半分で
  カナコのドライブレコーダーの映像を
  僕のパソコンに繋いでくれた
  もちろん内緒で
  まるでカナコと一緒にドライブしているかのよう
  狭い部屋からちょっと抜け出すような

〇中規模マンション
  朝車のエンジンがついて
  夜カナコのマンションで止まるまで
  わずかな時間
  映像の断片の集まり
  すぐに消えて無くなる記録

〇街中の道路
  それでも
  カナコが日々生きている事
  安全に過ごせている事
  平凡な毎日
  変わらない風景
  ちょっとでも共有したい
  画面越しで良いから・・・
  僕のこの気持ちを伝えることは無いから
  少しだけ一緒にいさせて・・・

次のエピソード:カナコの日常

コメント

  • 冒頭の幾つかのエピソードが、後半お見事なくらい収斂されていって読んでいてスッキリでした。また、考えさせられるテーマも含有しており、密度の濃い物語だと感じました。

  • 最初は物語自体がどう進んでいくのか、全く予想できていなかったのですが、すぐに理解できました。一見異常な行動でも、誰しも理由がある。背景が伝わることでこんなにも感情移入ができるのだと、作品を読んで気づくことができました。

  • 人それぞれ自分が楽しむ限界ラインで生きていると思います。
    何不自由ない生活をしてればそのラインは広くなりますが、広くならない、広くすることができない人もいます。
    そんな人に協力できる人、私は尊敬します。

コメントをもっと見る(6件)

ページTOPへ