異世界行ったら死にました。だから今度は君に告白を。

霜月りつ

読切(脚本)

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〇学校脇の道
  朝の通学路。
  大勢の学生たちが行き来している。
  「おはよう」「明日のテストだけどさあ」
  なんて賑やかな会話が聞こえてくる。
タカシ「今日もいい天気だな」
トモカズ「よう、タカシ! おはよう!」
  クラスメイトのトモカズが声をかけてくる。
  
  そんな中、僕は彼女を見つけた。
タカシ「あ、渡辺さんだ」
渡辺 愛「おはよう!」
タカシ「今日もかわいいな・・・・・・」
  君に告白できたらいいのに。
  だけど僕にはそんな勇気もない。
  僕が例えばファンタジー世界のヒーローだったら、君に好きだと言えるのに。
  そんなことを考えている僕に向かって
  トラックが突進してきた!
  トラックだ・・・死ぬ・・・小説だったら
  死んだ僕は異世界に転生してヒーローに。
  ああ、もしほんとにそうなら・・・
タカシ「うわああああっ!」

〇森の中
タカシ「うーん・・・・・・」
タカシ「あれ・・・生きてる・・・」
タカシ「ここはどこ・・・?」

〇幻想空間
タカシ「つ、月が二つある・・・ここは地球じゃないのか!?」

〇森の中
タカシ(ま、まさか本当にファンタジー世界に転生したのか?)
タカシ「やった、これで僕はヒーローだ!  転生ものといえば主人公は必ずチートな能力を・・・」
  そんな僕の耳に巨大な生物の咆哮が聞こえてきた。
  バサバサと大きな羽を振う音・・・
タカシ「ド、ドラゴンだ! うっそ!」
  竜が目の前に迫り口を開ける。
  口の中に炎!!!!
タカシ「うそだ――――――ッ!!!!!」
タカシ「うわあああっ!」

〇ヨーロッパの街並み
  ざわざわと人の声がする・・・
  僕はドラゴンに襲われて死んだのでは・・・?
  僕はそっと目を開けた・・・
タカシ「うわあっ!」
  そこにいたのは蛙のような人間たちだった。
タカシ「か、蛙が服を着て・・・話している。 蛙人間?」
  ゲッゲッと蛙のような人のような声が激しくなる。
タカシ「また転生したのか?」
タカシ「ここが本当の俺の世界・・・・・・?  こんどこそ俺はヒーローに・・・・・・」
  周りで蛙たちの悲鳴があがる。
  振り向くと巨大な化物が町の建物を
  破壊しながら進んでくる。
タカシ「ま、まさか・・・」
  進んでくる化物。建物の崩れる音。
タカシ「そんなばかなー!」

〇草原
  大草原で大勢の兵士たちが
  剣や弓で戦っている。
  どうやら戦争のようだ・・・
タカシ「今度は戦場か・・・・・・。 いくら転生が流行りだからって、 こんなに転生しまくるものなのか?」
  大勢の軍隊がこちらへ向かってくる。
タカシ「うわ、うわっ、うわわ!」
  僕は逃げ出した。
  そのあとを兵士の群れが追いかけてくる。
タカシ「かんべんしてくれー! もうたくさんだ!」
  戦士の劔が僕目掛けて振り下ろされた!
タカシ「うわああっ!!!」

〇幻想
  そのあとも僕はさまざまなファンタジー世界に転生した。
  しかしどこも同じだった。
  転生したとたん、化け物、猛獣、あるいは荷馬車、あるいは暴れ牛、あるいは戦車に襲われて死亡、そしてまた転生・・・・・・
  僕はどの世界でもヒーローにはなれなかったのだ。

〇学校脇の道
  交通量の多い通学路。
  車の音や学生たちの会話でにぎやかだ。
タカシ「ここは・・・・・・」
トモカズ「よう、タカシ。おはよう!」
  元の世界だ。あの朝だ・・・。
  全部ここから始まったんだ・・・
  道路の向こうに渡辺さんが友達と笑っている。
タカシ「ああ、・・・また同じことの繰り返しか・・・」
  僕の目が走ってくるトラックを捕えた。
  渡辺さん・・・・・・こんなことなら君に言えばよかった。
  君が好きだって。
  君のヒーローになりたかったって・・・
  トラックが迫ってくる。
  みんながこちらを見て叫んでいる。
  君に言いたい。君に伝えたい。
タカシ「いやだ、死にたくない、 転生なんかしたくない、 僕は、僕はこの世界で君に・・・!」
通行人「だれかが車の下敷きになっているぞ!」
タカシ「・・・・・・え?」
  トラックに轢かれたのはクラスメイトの
  トモカズだった。
  今回は僕じゃない?
タカシ「トモカズには悪いけど・・・ 言わなきゃ。 君に・・・今、言わなきゃ・・・」
  僕は渡辺さんに駆け寄った・・・

〇幻想2
女神「うふふ。やっと本来のターゲットである君を死なせることができました💖」
トモカズ「ええっと?」
女神「最初にミスって別な人間を転生させちゃって、修正するのに時間がかかってちゃいましたー💖」
トモカズ「転生・・・・・・?」
女神「君を異世界に転生させますよ💖 もちろん、チートな能力はつけるからね!」

〇学校脇の道
タカシ「あの、あの、渡辺さん。 僕は僕はずっと君が・・・・・・」
  おしまい。

コメント

  • なんだか大変な目に遭ってますよね!
    修正するためには、何度も転生しなくちゃいけないとか、死ぬたび痛いんじゃないかな?と思いました。

  • 王道転生ものだと思ったら…こんな展開に。結果全員がwin-winだったのでしょうか? 楽しいストーリーでした。

  • 人間死んだら今より楽になると想いこんでいるところありますよね。私もそうかも。でも実際、このように転生繰り返しても大して変わらないのかも知れませんね! 

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