第14話 博物館の意義(脚本)
〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
斎川理央「こんにちは~・・・」
生島宗吾「斎川さん、大丈夫か? かなり疲れているようだが」
斎川理央「朝から外回り続きで、でちょっと・・・」
生島宗吾「茶でも飲むか? ペットボトルだが」
斎川理央「いただきます~・・・」
斎川理央「ごく・・・ごく・・・ふう・・・」
斎川理央「あ~やっと人心地つきました」
生島宗吾「無理して水族館に来てもらっておいて申し訳ないが、小鳥遊は不在だ。 家から大荷物を運ぶと言っていたが」
生島宗吾「用件だけでも、俺が聞いておこうか?」
斎川理央「いえいえ~ 今日は生島さんに会いに来たんですよ」
生島宗吾「俺に?」
斎川理央「水族館の新規スタッフについて、 相談させていただきたくて」
生島宗吾「なるほど、人事なら俺の領分だな」
研究以外ポンコツの小鳥遊に、
人事採用の相談をしても、判断できない。
これは水族館に勤務経験がある、
俺の仕事だろう。
斎川理央「接客と清掃スタッフについては、 めどがつきました」
斎川理央「人材派遣会社Sから、 随時必要な人材を回していただく予定です」
生島宗吾「S社か。悪くないな。 あそこは、社員教育をしっかりするから」
斎川理央「それで・・・ 肝心の飼育補助なんですけど・・・」
はあ・・・と斎川は大きなため息をつく。
生島宗吾「あまりうまくいってないのか」
斎川理央「Deep Sea Islandもオープン間近でしょう?」
斎川理央「トリトングループとの、 人材争奪戦になってしまって」
生島宗吾「分の悪い戦いだな」
斎川理央「実績のあるトリトンと比較されると、 ど~してもウチが負けちゃうんですよね」
生島宗吾「実績ゼロだからな。しかも、古生物を飼育するなどと、世迷い事まで言っている」
斎川理央「ううう・・・悔しい。トリトンの実績は、半分くらい生島さんのものなのにー!」
生島宗吾「誰がどう裏方で活躍しているか、なんて外にいると、なかなか伝わらないものだ」
斎川理央「だからって、理不尽ですよ。はあ・・・ うまく人が集まらないからって、 いい加減な採用をするわけにもいかないし」
生島宗吾「生き物を扱う職場だからな」
斎川理央「生島さんのサポートをお願いするなら、 専門知識も必要でしょう?」
斎川理央「技能職となると、 途端に候補が少なくなっちゃうんですよね」
斎川理央「めぼしい人材は全部断られちゃったし、 次はどこから人を引っ張ってこよう・・・」
生島宗吾「・・・業務経験を採用条件から外してみたらどうだ」
斎川理央「え、本気ですか? それだと、素人集団になっちゃいますよ」
生島宗吾「素人結構。人格さえまともなら問題ない」
生島宗吾「必要な技術は、 俺が教育して身に着けさせればいい」
斎川理央「だ、ダメですよっ! そんなことをしたら、教育負荷を全部生島さんが被っちゃうことになります!」
斎川理央「ただでさえオープン準備で忙しいのに、 オーバーワークすぎです!」
生島宗吾「人が集まらなければ、 結局オーバーワークだろうが」
生島宗吾「気にするな、 小鳥遊のズボラを指導するよりずっと楽だ」
斎川理央「生島さん・・・!」
生島宗吾「おい、どうしていきなり俺を拝む」
斎川理央「神様仏様生島様です! やっぱり生島さんはプロジェクトの救世主でした!」
生島宗吾「そ、そうか」
斎川理央「そうと決まれば、行ってきます! 実は、スキルが足りなくて採用候補から外した方が何人かいるんですよ!」
生島宗吾「あ、おい。張り切るのはいいが・・・」
〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
ゴン!
斎川理央「きゃあっ」
小鳥遊遥「わあっ!」
研究室から勢いよく出ようとした斎川は、ちょうど入ってきた小鳥遊とぶつかった。
斎川理央「いたたた・・・」
小鳥遊遥「ごめーん、生島さん以外の人がいると思わなくって。怪我はない?」
斎川理央「だ、大丈夫です」
斎川理央「博士こそどうしたんですか? そんなに大きなキャリーケースを引きずって」
小鳥遊遥「ふふふー、 これは次に再生する生き物の参考資料!」
生島宗吾「資料なら、そっちに山積みにしてあるだろう。今更追加が必要なのか?」
小鳥遊遥「まあ見てよ、じゃーん!」
小鳥遊はキャリーケースを開けて、
中身を俺たちに見せてきた。
斎川理央「化石・・・ですか?」
小鳥遊遥「ボクのお宝、アノマロカリスの化石だよ!」
小鳥遊遥「いいでしょう、 こんなに状態がよくてキレイな化石は、 博物館でも滅多にお目にかかれないよ」
生島宗吾「体組織の分析はすんでるだろう。 やっぱり今更じゃないか」
小鳥遊遥「ボクの気分がアガる!」
生島宗吾「持って帰れ」
小鳥遊遥「いいじゃん。今までで一番の再生難度に挑戦する、ボクのココロを支えるお守りと思って、置かせて?」
斎川理央「アノマロカリスって、 そんなに難しいんですか?」
小鳥遊遥「難しいよ! も~今までの実験が子供のお遊びにみえてくるくらい!」
斎川理央「そんなに大変でも再生したいって、アノマロカリスは博士のお気に入りなんですね」
小鳥遊遥「うん。古生物の中では一番かな」
小鳥遊遥「再生したら、 中央ホールの大水槽で飼育するんだー♪」
斎川理央「そうなんですか、生島さん」
生島宗吾「体長1メートルの巨大生物だからな。 大水槽にいれるのは、妥当な判断だ」
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