2人で見上げた空が晴れだといいねと君は言った

海坂依里

「あなたを好きになって」(脚本)

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〇レトロ喫茶
結人「大丈夫?」
結人「最近連絡がなかったから、頑張っているのかと思った」

〇店の入口
  彼女が好きだと言っていた、喫茶店の前を通りかかった。
  ただ通り過ぎるだけのはずが、喫茶店の中に彼女の姿を見つけた。
  好きな喫茶店にいるはずなのに表情が冴えない、寂しそうな表情を浮かべる彼女の姿を見つけてしまった。

〇レトロ喫茶
結人「俺に気を遣ってた?」
結人「気にしなくていいのに」
結人「俺は、君専属の愚痴聞き係なんだから」

〇桜並木
  彼女と出会って、数年が経つ。
  友人としての関係が続いていて、その関係性に心地よさを抱いた。
  異性として好意を抱いていたにも関わらず、俺は彼女に気持ちを伝えることを躊躇った。

〇レトロ喫茶
結人「空いてる席、座ってもいい?」
  彼女には、好きな人がいる。
  彼女には、大切に想っている人がいる。
  彼女の笑顔を見られることで得られる幸福に甘んじて、今日も俺は彼女の友人として接していく。
結人「この店のお勧め、教えて」
  互いに食べ物や飲み物の好みを熟知している仲なだけあって、彼女は俺の好みを踏まえつつ店の一押しを勧めてくる。
結人「相手に彼女でもできた?」
  これは、浮気の話をしているわけじゃない。
  俺が好きになった彼女も、彼女が好きになった相手も、そんなに不誠実な人間であるはずがない。
結人「そっか・・・・・・まだ彼女がいなくて良かったね」
  彼女は、片想い中。
  まだ、両想いではない。
  彼女が好きになった相手にも、特定の相手はいない。
  これは片想い同士が繰り広げる、何気ない会話。
結人「だったら、まだ諦めなくてもいいんじゃないかな」
結人(嘘つき)
結人(そんなこと、欠片も思ってもいない)
結人(早く相手のことを諦めて、さっさと俺のことを好きになればいいのにって思っている)
結人「ずっと一途に頑張ってきたんだから、あとは想いを伝える勇気を・・・・・・」
結人(彼女を励ますための言葉を送りたい)
結人(けど、心から思ってもいない言葉を口にして、彼女を悲しませるっていう結末だけは迎えたくない)
結人「あー・・・・・・ごめん、今のやっぱりなし」
  彼女は、自分に自信を持つことができない。
  それでも、とことん俺の前で落ち込んだあとは、相手の眼中に入ることができるように努力を積み重ねてきた。
  どんなに自分のことが嫌いでも、相手に振り向いてもらうために頑張ってきた日々を俺は知っている。
結人「選択肢の1つに、俺のことを入れてほしい」
  友人の特権だった。
  彼女の話を聞くという特権を得て、もっと彼女のことを好きになった。
  彼女は自分のことを嫌いだとよく言うけれど、俺は自分のことが嫌いな彼女のことをもっともっと好きになった。
結人「意味、分かる?」
  店員さんが注文の品を運んできたタイミングと、彼女が黙り込んだタイミングが重なった。
結人「ありがとうございます」
  彼女は俺から告白されると思ってもいなかったらしく、視線をどこにさ迷わせていいのか分からずに焦っていた。
  そんな様子すら可愛いと思うのだから、惚れた弱みってものが与える影響の大きさに気づく。

〇レトロ喫茶
結人「一緒に過ごしているうちに、君と過ごす時間に幸せを感じるようになったんだ」
  幸せって言葉を、改めて言葉にすることが恥ずかしい。
  けれど、自分の気持ちは包み隠すことなく伝えたい。
結人「恋愛相談を受けるようになってからは、もっと君のことを好きになった」
  赤裸々に自分の恋愛事情を語ってくれる彼女ばかりに勇気を奮わせるのは、なんだか違うと思ったから。
結人「・・・・・・俺と、付き合ってほしい」
  偽物の言葉ではなく、本物の言葉を伝えよう。
結人「あ・・・・・・」
結人「って、まだ片想いを頑張るのに、俺が告白してどうする・・・・・・」
  勢いに任せて告白したつもりはなくても、彼女の気持ちを無視した発言。
  今度は、俺の方が焦りだす。
  すると彼女は迷惑そうな落ち着いた表情ではなく、俺が惚れこんでいる笑顔を向けてくれた。
結人「あ・・・・・・」
  そして彼女の声は、俺が想像もしていなかった言葉を伝えてくる。
結人「え?」
  好きです、という彼女の言葉。
  彼女の声で、好きですという言葉が伝えられる。
結人「え? え? え!?」
  俺の告白は、受け入れてもらえないはずだった。
  彼女には、好きな人がいる。
  彼女には、大切に想っている人がいる。
  彼女は両想いになることを諦めていたはずなのに、俺の告白は受け入れられた。
結人「好きな相手は、俺!?」
  ずっと、すれ違っていた。
  ただ、それだけのこと。
  すれ違い続けていた片想いは、ようやく両想いになることができた。
結人「めちゃくちゃ幸せにするから」
  日本語が可笑しいって、笑いながら指摘する彼女。
  そんな彼女の笑顔が、凄く可愛く視界に映り込む。
結人「今日で、片想いは終わりにしよう」

コメント

  • 俺の事を選択肢に~という台詞から彼の優しさが現れているなと感じました。実は、両片思いであった彼らの距離感がとても良かったです。素敵な物語ありがとうございました!

  • 片想いだと思っていたけど、両想いだったんですね。
    恋って難しく、辛く、それでいて明るい物。
    その瞬間が、堪らなく幸福と言える時間なのでは無いでしょうか!

  • 思い込みでお互いにすれ違いだったのですね。好きな人に恋愛を応援される彼女もきっと寂しかったでしょうね。勇気を持って伝えることって大切ですね。

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