マトワレ!

池田 蒼

エピソード2(脚本)

マトワレ!

池田 蒼

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〇けもの道
「フンッ!」
「フンッ!」
龍人「フンッ!」
「お兄ちゃん・・・」
龍人「フンッ!」
龍人「フンッ!」
「お兄ちゃん!!」
龍人「おお!妹よ!」
楓「朝っぱらから・・・何やってんの?」
龍人「見てわかるだろう!素振りだ!」
楓「鎧、重くないの?」
  楓の言葉には抑揚がない。
龍人「おう!この鎧とは一心同体だからな!」
龍人「ハァッ」
楓「あ、そう。そりゃ良かったわね」
楓「わたし、学校行くからねー・・・」
龍人「おう!わかった!いってらっしゃい!気をつけてな!」
楓「はぁーーーー・・・」
楓(変わらんなぁ・・・)
  楓は龍人を横目に一人学校へ向かう。

〇通学路
  楓は龍人を置いて森を抜け、住宅街を学校へ向かって歩く。
楓「家の近くにあんな大きな森があるってのも悪影響なのよね」
  龍人が鍛錬をしていた森は、彼らの住む家の近くにあった。
  通学にあたって森を迂回すると、遠回りになるため、龍人も楓も小学生の頃から毎朝通り抜けてきた森だ。
楓「まあ、生まれてこの方あの森と一緒に育ってきたわけで、森自体が悪いわけじゃないんだけど」
楓「そういえば、あの森って何か名前でもあるのかしら」
楓「神社とかがあるわけでもないし。ただ木の多い場所ってだけで名前なんてないのかもしれないわね」
「おーい。漣(さざなみ)ー!」
  誰かが楓を苗字で呼び、近づいてくる。
真中「おはよう!漣」
楓「あ、先生おはようございます」
真中「今日はお兄さんは一緒じゃないのか?」
  真中 修一。楓の担任であり、過去龍人の担任も務めた高校教師だ。兄弟揃って世話になっている人物である。
楓「え、あ、はい、今日は先に行きましたので・・・」
  遠くから聞き慣れた音が聞こえる。
  ガッチャガッチャガッチャ・・・
真中「ん?これは・・・」
  ガッチャガッチャガッチャガッチャ!!
「おー!!おはようございますー!真中先生ーーー!」
真中「おお!龍人!久しぶりだな!相変わらず重そうなもの着てるな!」
龍人「はい!大学は私服なので!」
真中「ははっ。高校の時も着てただろうが。あんまり妹を困らせるなよ」
龍人「大丈夫です!」
楓「大丈夫じゃねーわ!」
  楓は兄も兄だが、その兄を咎めようとしない真中に対しても腹が立っていた。
龍人「おお!そうだ!楓忘れ物を持ってきてやったぞ!」
龍人「さあ!」
楓「何よこれは・・・」
龍人「食パンだ!」
楓「みりゃわかるわよ!朝ご飯なら食べたわよ!」
龍人「ああ、知っている!」
楓「じゃ何でまた持って来んのよ」
龍人「女学生といえば、朝寝坊して朝ご飯が食べれずに、急いで食パンを食しながらも走って学校に向かうのが礼儀であろう!」
楓「だーかーらー・・・朝ご飯食べたゆーとろーが・・・」
龍人「いらないのか!?」
楓「ええ・・・」
龍人「何と仕方がない!では私が!!あ、一枚残っている!先生!どうぞ!」
真中「え!な、ふぐぅ!」
龍人「へふぁはひひまひょう!」
  では走りましょうと言っているようだ。
真中「ふ!ふぐう!?」
  ガッチャガッチャガッチャガッチャ・・・・・・
  龍人たちは走り去っていった。
楓「はー・・・」
  楓は既に昨日からの回数が数えられ無くなっていたため息の数にうんざりしていた。

〇教室の教壇
楓「はぁ〜。やっと授業が終わったわ。なんか、疲れたわね」
楓「きっと、朝っぱらから熱苦しいやり取りがあったせいね」
楓「ん。何あれ。子供?」

〇教室の外
  楓が目を落とした先に一人の子供がグラウンドにいた。校門へ向かって歩いている。
男の子「・・・」
  子供は校門を超えてすぐ右折し見えなくなった。楓の帰路も同じ方角だ。

〇教室の教壇
楓「高校に男の子なんて珍しいわね。誰かの兄弟かしら」
楓「まあ、いっか。とりあえず今日は早く帰って休もっと」
  楓は早々に帰ることにする。

〇けもの道
  楓は帰り道いつもの森に差し掛かる。
楓「ふぅ、今日は流石にお兄ちゃんもいないみたいね」
楓「もう先に家に帰ったかな」
楓「ん」
男の子「・・・」
楓「あら、あの男の子学校で見かけた子だわ。家が近いのかしら」
  男の子は茂みをかき分け道なき道を構わずに進む。
楓「どこに行くのかしら」
  もう間も無く日が暮れる。男の子を気にかけずに帰ることも出来たが、昨日の化物との遭遇が頭をかすめる。
  元より心配性なところのある楓は、男の子を追う事にする。
楓「放っておけない気がするわ。家に帰るのか見届けてから帰ろう」

〇黒背景
  ガサガサガサガサ
  茂みを抜け、楓は見慣れない場所に出る。

〇洞窟の入口
  そこには大きな洞穴があった。
楓「何ここ。この森の中にこんな場所があったなんて・・・」
楓「あの子、もしかしてあの中に入って行ったのかしら」
楓「おーい!君ー!危ないよ!そこにいるの!?」
  ・・・
  返答は返って来ない。
楓「えー・・・大丈夫なのかな・・・」
楓「し、仕方ないなあ。気が引けるけど見に行くか・・・」

〇暗い洞窟
楓「わ!暗!」
  楓は携帯のライトを点けた。
楓「うーん。あんまし明るくなんないわね。仕方ないゆっくり進むか」
楓「おおーい。君ー!!いるのーー!?」
  ・・・
  変わらず返答はない。
楓「もー・・・進むしかないわけね・・・」
  楓は恐る恐る奥へと進んだ。
  5分程進んだだろうか。いや30分程だったかもしれない。暗闇は楓の時間の感覚を狂わせる。
  携帯の時刻を見れば済む話だが、どこか気が動転していたのだろうか。気が回らないでいた。
  その時だ・・・
「う、うあわぁぁーー!!」
楓「え!!」
  楓の探す子供が奥から悲鳴を上げて駆けてくる。
楓「え、どうしたの!?大丈夫!?」
男の子「か、か、かかか、怪物が、緑色の怪物が!!」
緑の肌の生物「ギギギ!!」
  間髪いれずに、子供の背後から昨日見たそれと同じ風貌をした緑の肌の生物が現れる。
緑の肌の生物「ギァース!!」
楓「えー!!またー!!」
楓「とにかく逃げるわよ!いい!?」
男の子「うう・・・」
楓「泣いてる場合じゃないでしょ!さ、早く!!」
  楓はそう言って子供の腕を掴んで入口へ走った。
緑の肌の生物「ギャギャ!!」

〇洞窟の入口
楓「洞窟を抜けたわ!!」
男の子「うう・・・」
  ガサガサガサ!
  茂みから何かが現れる。
緑の肌の生物「グルゥゥ・・・」
楓「え!なんで!?」
  ・・・ギァース!!
  背後の洞窟からは未だおぞましい咆哮が近づいている。
楓「二匹もいるの!?」
  刹那、前に立ちはだかった二匹目と思しき生物が楓と子供に襲いかかった。
楓「危ない!!」
  楓は咄嗟に男の子に覆いかぶさった。
楓「う・・・・・・」
  どこに何が当てられたのか理解ができずに、考える暇も無く意識が遠のく。
男の子「お姉ちゃん!!」
  耳が膜に覆われたように子供の叫び声が遠くに聞こえた。
  やがて闇が訪れた。

〇黒背景
  ・・・
  ・・・
  ・・・ガ
  ・・・チャ
  ・・・ガ・・・・・・チャ
  ガチャガチャガチャガチャガチャ
楓「う、うーん・・・」
  ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!!
楓「あー!!うるさーい!!」
「おお!カエデニア!気がついたか!」

〇空
龍人「大丈夫か!?」
  楓が気がつくと、龍人の顔が目の前にあった。
楓「お、お兄ちゃん・・・私、どうしたんだっけ・・・」
龍人「帰りが遅いので探しに来たら森の中で倒れていたのだ!」
龍人「もうすぐ救急車が来る!死ぬな楓!」
楓「え、ええ。大丈・・・痛い!」
龍人「楓!楓ーー!!」
楓「ツ、ツツツ。頭が痛いけど、それ以外はなんとか大丈夫そうだわ・・・」
龍人「かえでえええーーーーーーー!!!」
  ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!!!!!!
楓「あーもーだからうるさいって!!激しく動くなーー!頭に響くわ!」
龍人「す、すまん!しかし、心配なのだ!」
楓「救急車呼んでくれたのよね。大丈夫だと思うから。ほんとーーに静かにしてくれる」
龍人「う、うう。分かった」
楓「そういえば、男の子はどうしたの?近くにいなかった?」
龍人「男の子だと?洞窟の前で倒れていたのはお前だけだったぞ。一体何があったのだ」
  楓は先程起きた出来事の一部始終を話した。
龍人「なるほど、またあの生物がな・・・。しかし、そいつも、男の子もどこへ消えたのだろうか」
龍人「考えられるとすると、その洞窟の中か・・・」

〇洞窟の入口
  洞窟の入り口は何かを物語るように不気味な暗闇で包まれていた。
龍人「中にいるかもしれんが、今はお前の治療が優先だ。今聞いた話は警察へ話しておこう」
楓(・・・緊急事態の時は、頼りになる兄なのよね)
  ウー・・・ピーポーピーポー
  遠くから救急車の近づく音が聞こえて来る。
  つづく

次のエピソード:エピソード3

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