第二話 カルアミルクの最適なレシピとは?(脚本)
〇シックなバー
チア娘「おじさん!」
おじさんじゃないんだけどなぁ・・・
なんか、今日はボンボンを持ってるし・・・
ぱす氏「ご注文はいかが致しましょうか」
チア娘「カルアミルク!」
成金野郎「やーれやれ、わかってないぜ」
カウンター右端に座っている恰幅の良い男性が、ウィスキーグラスを片手に、大きな独り言を呟く
成金野郎「オーセンティックバーで、そんな大衆カクテル頼むなんて、どーかしてるっ」
チア娘「えっ・・・」
チア娘「た、頼んじゃダメだったのかな?」
ぱす氏「そんなことはありませんよ。でも・・・」
チェイサーを片手に、ぱす氏が先ほどの大きな呟きをした男性の目の前に移動する。
ぱす氏「もしよければ」
成金野郎「ぉん?」
ぱす氏「最近考案した、面白いカクテルがあるんです」
ぱす氏「試してみませんか?お代は要りませんので・・・」
成金野郎「おお!面白そうだな?」
ぱす氏「チア娘さんも、いかがですか?」
チア娘「じゃぁ、とりあえずそれで・・・」
ぱす氏「かしこまりました」
レシピ:①カルア 30ml ②ミルク 90ml ③インスタントコーヒー 適量④ホイップクリーム適量 ⑤白い氷
なければ次の材料は用意しなくてもOK
⑥エスプレッソエキス ⑦ミント ⑧チョコレートリキュール(ビター系) ⑨チョコクランチ
成金野郎「え?そのレシピって、あれかい?」
ぱす氏「シェイクでお出ししようと思うのですが」
成金野郎「わかっちゃいねーな」
店内に広がる大声
成金野郎「そのレシピ、カルアミルクだろ?」
成金野郎「それをシェイクでやった日にゃ、水っぽくて飲めたもんじゃないぞ?」
シェイクとは、いわゆる「シェイカーでシャコシャコするカクテル」である。
カクテルが 「キンッキンッに冷えてやがるぜ状態」 にはなるものの
氷を使って冷やすため、希釈を嫌うカクテルには適さない。
ぱす氏「今回はティスティング用なので、ショートスタイルでお出ししましょう」
ぱす氏「お待たせしました」
成金野郎「やれやれ、あんだけ言ったのに・・・」
丸いコースターに置かれた三角のカクテルグラスには
いつもと違う装いの2つの茶色のカクテルが置かれていた
ぱす氏「チア娘さんは、ホイップクリームを乗せて、その上からインスタントコーヒーを振りかけて、デザート仕立てにしました」
ぱす氏「焼肉の香りがしましたので、食後ですよね?」
チア娘「あっ。バレた(汗」
ぱす氏「今日は特別に、清涼感を出すためにミントを飾っておきますね」
チア娘「カクテルグラスに注がれると、高級感が出てくる!何これ!」
チア娘「上品なカフェラテ?フラペチーノ?みたいなものが出てきたよっ!」
ぱす氏「成金さんには、素で試していただきたいので、デコレーションはしてません」
成金野郎「一応、読者に言っておくが、成金(なるかね)が苗字なんだよ。俺」
ぱす氏「どさくさに紛れて、読者に説明しないでください!」
気を取り直して。。。と
ぱす氏「では、お試しください」
成金野郎「やれやれ・・・」
成金野郎「あんなに、氷入れたものを飲ますなんてどうかしている」
チア娘「ゴクリっ」
チア娘「美味しい!なにこれ!?ホイップで甘いけれども」
チア娘「上にかかっているインスタントコーヒーが、単純なクリームの甘さを複雑かつ妙味にしている!」
なにそのグルメ家も顔負けのコメント
成金野郎「まぁ、ホイップがかかってりゃ、そりゃ飲料としては成立するよな」
成金野郎「だけどな、俺が頼んでいるのは 「酒」 なんだぜ?」
ぱす氏「どうぞ、そのままでも美味しいですよ」
成金野郎「わかった、わかったよ。試してやるよ」
成金野郎「ゴクリっ」
成金野郎「あれ?」
成金野郎「ゴクリっ」
なんでハートのエフェクトなんだろう
成金野郎「うまい!うまいぜこりゃあ!」
成金野郎「水っぽくない!でもキンキンに冷えてる!アルコール感もある!」
ぱす氏「お客様が、お酒が強いとお見受けしましたので、このカクテルにはエスプレッソとチョコレートリキュールを少しだけ入れております」
エスプレッソがない場合は、アイスコーヒー希釈液でも良いですよ!
成金野郎「なんで、これは水っぽい感じがしないんだ?」
ぱす氏「実は、氷に秘密があるんです」
成金野郎「これは?」
ぱす氏「私のおやつです」
ぱす氏「レシピ ⑤白い氷 はこれからヒントをもらいました」
ぱす氏「牛乳を製氷トレイに入れて凍らせたものを、シェイカーに入れる氷として使ってます」
成金野郎「そうか!そう言うやり方があったか!」
ぱす氏「お客さまが、イメージされているカクテルは、メーカーやカクテルブックが公表しているレシピのものだったりするわけですが」
ぱす氏「それがお客様にとってベストとは限りません」
ぱす氏「一人一人の、お客様に合わせ、考えながら作ることが最適なレシピだと思います」
ぱす氏「レストランだと、コックは調理に集中するので、レシピを調整するなんてことはできませんが」
ぱす氏「作り手とお客様が対面できる「バー」と言うスタイルだからこそ、これができるんです」
参 考:
「お食事は済みました?」「普段お酒は何を飲まれますか?」 等を会話で、相手の趣向を把握することが多いぞ!
成金野郎「なるほどな。一人一人な・・・」
成金野郎「チア娘さんには、食後と分かってたからデザート風レシピを」
成金野郎「俺には、オーダーがウィスキーばっかりだから、アルコールとビター感の強いレシピ」
成金野郎「何も考えてなさそうなツラして、やるじゃないか!」
地味にひどい・・・
成金野郎「いやぁ、参ったぜ。まさか、カルアミルクがこんな味になるなんてな!」
成金野郎「悪かったな、チア娘さんよ!これは、立派なカクテルだよ!」
成金野郎「お詫びに今日の、お代は俺が全部持とう!」
チア娘「ええー!ありがとぅございますぅ〜」
チア娘「じゃぁ、マスター・・・」
チア娘「ルイ13世とドンペリとロマネコンティ持ってこーい!」
ぱす氏「やめてあげて」
読んでいると無性にバーに行きたくなってしまいます!
いつもシングルモルトばかり頼んでしまうので、こういうカクテルも惹かれます。まずはカルアミルクが似合うようになりたいです;;
シリーズ化したんですね。一話完結のグルメ漫画みたいで楽しいです。知識も増えますし。次も楽しみにしています。
コーヒーを使ったカクテルがあるとは初耳でした!
お茶目なチア娘カワイイ。