DetectiveAlchemist −錬金術師の推理−

在日ミグランス人

EP1 探偵ヘルメス(脚本)

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〇巨大な城門
  城塞都市ウルプス
ヘルメス「たのも〜」
ソフィア「あら」
ヘルメス「たのも〜」
ソフィア「どうしたのかな? お嬢ちゃん?」
ソフィア「迷子かな? ここは危ないから入っちゃダメよ?」
ヘルメス「いや、旅の者なのだが・・・・・・」
ヘルメス「ヘルメス・トリスメギストスという」
ソフィア「ヘルメス? トリス・・・・・・ ?」
ソフィア「なんだかよくわかんないけど、兎に角、入っちゃダメ」
ソフィア「これから探偵さんが来るの」
ソフィア「お姉ちゃんもお仕事だから、邪魔しないでね?」
ヘルメス「儂がその探偵だ・・・・・・」
ソフィア「んえ?」
ヘルメス「旅をしていたが、路銀が尽きた」
ヘルメス「それで興信ギルドからクエストを受けて来たのだ」
ソフィア「んじゃ、お嬢ちゃんが探偵さんなの?」
ヘルメス「だから、そう言っている・・・・・・」
ヘルメス「そんでお嬢ちゃんではない!」

〇中世の街並み
ソフィア「先程は失礼しました」
ソフィア「私は治安維持自衛騎士団所属。ソフィア・ナハシュと申します」
ヘルメス「ヘルメスだ。改めて宜しく頼む」
ソフィア(妙な喋り方・・・・・・ ヘンなコねぇ・・・・・・)
ヘルメス「そう堅苦しくならんでも良い」
ヘルメス「気楽に話してくれて構わん」
ソフィア「んじゃ遠慮なく〜」
ソフィア「ここが事件現場なんだけどぉ・・・・・・」
ヘルメス「本当に遠慮ないな・・・・・・」

〇鍛冶屋
ヘルメス「随分暑いな・・・・・・」
ヘルメス「鍛冶工房か?」
ソフィア「お店もやっていたみたい」
ソフィア「尤も、職人気質で、商売っ気はなかったみたいだけど」
ヘルメス「詳しい情報が知りたい。捜査はどこまで進んでいる?」
ソフィア「未だ殆ど進んでないわ。半日程前に発見されたばかりだもの」
  工房には2つの死体が転がっている。
ソフィア「こっちがこの店の主人、サラマンダーのラケルタさん」
ソフィア「炎の精霊だから、鍛冶はまさに天職だったみたいね」
ヘルメス「これ・・・・・・ 本当に死んでいるのか?」
ソフィア「間違いないわ。神父様に確認してもらったもの」
ヘルメス「こっちは何者だ?」
ソフィア「わからないわ。土の精霊みたいだけど・・・・・・ 工房のお客さんかしら?」
  その手には一振りの剣が握られていた
ヘルメス「ふむ・・・・・・」
ヘルメス「状況的には土の精霊が、サラマンダーの主人を襲った・・・・・・ ?」
ヘルメス「よもや毒殺という事もあるまい」
ヘルメス「強盗目的か?」
ソフィア「でも店の売上金はそのままだったわ」
ソフィア「それに・・・・・・ 見て」
ヘルメス「・・・・・・」
ヘルメス「どちらの遺体にも傷がない?」
ヘルメス「どういう事だ。無傷なのに、二人共死んでいるとは・・・・・・」
ソフィア「即死魔法でも受けたのかしら?」
ヘルメス「調べてみよう」
ソフィア「なぁに? ソレ?」
ヘルメス「ゴニディオン・パピルスという」
ヘルメス「触れたものの魔紋を検出、識別する」
ソフィア「魔紋? 指紋の魔法版みたいなもの?」
ヘルメス「まあそんなところだ。見ていろ・・・・・・」
ヘルメス「闇属性!」
ソフィア「サラマンダーは炎の精霊なのに・・・・・・」
ヘルメス「いや・・・・・・ 確かに妙ではあるが、即死魔法は闇属性だから、ありえない事ではない」
ソフィア「それだけ強力な魔法だった、って事ね」
ヘルメス「こちらはどうだ・・・・・・」
ヘルメス「土属性・・・・・・」
ソフィア「どういう事? 即死魔法を受けたのはラケルタさんだけって事?」
ヘルメス「そういう事になる・・・・・・ のか?」
ソフィア「こっちの剣はどう?」
ヘルメス「反応がない・・・・・・」
ソフィア「未使用、って事?」
ヘルメス「少なくとも魔法は掛かっていない、という事だ」
ヘルメス「ならば・・・・・・」
ソフィア「今度は何? コロン?」
ヘルメス「吸血鬼の唾液を特別に調合したものだ。血液に反応する」
ソフィア「・・・・・・何の反応もないじゃない」
ヘルメス「たわけ。慌てるな」
ヘルメス「次にこの闇の蝋燭で照らせば・・・・・・」
ソフィア「やっぱり何ともないじゃん」
ヘルメス「おかしいな。血液が青白く光る筈なんだが・・・・・・」
ソフィア「剣は未使用って事ね」
ヘルメス「そうなるな」
ソフィア「ねぇ、あんたホントに大丈夫?」
ヘルメス「ひ、ひぎぃ・・・・・・」

〇中世の街並み
ヘルメス「聞き込みって・・・・・・ 他の騎士からの報告を待てば良いのではないか?」
ソフィア「捜査は足で稼ぐものよ」
ヘルメス(儂の一番苦手なやつ・・・・・・)
酒場の主人「土の精霊? そりゃゾーオンだな」
酒場の主人「それなりに有名な剣士だったと思う」
酒場の主人「最近は何の話も聞かなかったが・・・・・・」
酒場の主人「そうか。亡くなったのか」
酒場の主人「鍛冶屋との諍い? さぁ、どうだったかなぁ?」
ソフィア「土の精霊はゾーオン。剣士、と」
ヘルメス「有名ではあったが、最近は活躍していなかった・・・・・・?」
魔法屋「ラケルタ? 腕が良いのは確かだな」
魔法屋「だが自分では満足していなかった」
魔法屋「最近では黒魔術にも手を出したと聞いた」
魔法屋「やめておけ、と忠告はしたんだが・・・・・・」
ヘルメス「黒魔術とは聞き捨てならんな・・・・・・」
ソフィア「法律でも厳しく禁止されているわ」
ソフィア「余罪がありそうね・・・・・・」
傭兵「去年くらいだったかな? ゾーオンが急に強くなったのは・・・・・・」
傭兵「まるで別人だよ」
傭兵「噂では親兄弟、恋人まで死んじまって、色々吹っ切れたとか・・・・・・」
傭兵「ラケルタとの関係?」
傭兵「そりゃ剣士と鍛冶屋なんだから、少なからず関係はあっただろうさ」
ソフィア「ゾーオンは短期間の内に急に強くなった」
ヘルメス「黒魔術といい、雲行きが怪しくなってきたな」
猟師「ラケルタの仕事? 注文があれば何でも作る奴だよ」
猟師「日用品から、剣、鎧、合法から違法な物まで・・・・・・」
猟師「そうそう。丁度去年の今頃、ブラッド・ソードを作ったって聞いた事がある」
猟師「確か・・・・・・ 土の精霊からの注文だったか・・・・・・」
ヘルメス「繋がったな」
ソフィア「繋がったわね」
ソフィア「およそ1年前、土の精霊ゾーオンがラケルタに武器の制作を依頼した・・・・・・」
ソフィア「ゾーオンは急激に強くなったけど、親しい人を失った・・・・・・」
ヘルメス「恐らく黒魔術による呪い・・・・・・」
ヘルメス「パピルスの反応は呪いの痕跡だった・・・・・・」
ソフィア「ブラッド・ソードっていうとアレよね?」
ソフィア「斬った相手の体力を吸い取って、自分のものに還元するっていう」
ヘルメス「現場に残っていたあの剣がそうだったとすると・・・・・・」
ソフィア「でも遺体は2つとも無傷だったのよ?」
ソフィア「パピルスの反応が即死魔法の痕跡じゃないんだとしたら、やっぱり剣で殺害したって事じゃないの?」
ソフィア「あれ? どゆコト?」
ヘルメス「何か見落としている・・・・・・」

〇黒
  これ・・・・・・ 本当に死んでいるのか?
  間違いないわ。神父様に確認してもらったもの

〇中世の街並み
ヘルメス「そうか!」
ソフィア「え? 何? どしたの?」
ヘルメス「遺体を確認したのは神父だったな」
ソフィア「そ、そうよ」
ヘルメス「具体的にはどうやって調べた?」
ソフィア「どうって・・・・・・」
ソフィア「一目見るなり『嗚呼、亡くなっていますね』って・・・・・・」
ヘルメス「それだけ?」
ソフィア「それだけって・・・・・・」
ソフィア「遺体を見慣れている神父様なら一発でわかるでしょ?」
ヘルメス「だから詳しく調べなかったと?」
ソフィア「詳しくって・・・・・・」
ソフィア「え? 何? まだ生きてるっていうの?」
ソフィア「私達だって調べたじゃん」
ヘルメス「ああ。だが状態異常までは調べなかった」
ソフィア「状態異常? だから死んでるんじゃ・・・・・・」
ヘルメス「だから! ステータス異常だ!」
ヘルメス「死んでいるように見える!」
ソフィア「死んでいるように見える・・・・・・」
ソフィア「・・・・・・」
ソフィア「ああっ!!」

〇中世の街並み
ソフィア「ラケルタはゾンビ・・・・・・ アンデットだった?」
ヘルメス「ああ。恐らく黒魔術に手を出した報いだ」
ヘルメス「そして本来なら斬った相手の体力を吸収するブラッド・ソードをアンデット相手に使えば・・・・・・」
ソフィア「アンデットは回復魔法で逆にダメージを受けてしまうから・・・・・・」
ヘルメス「斬り付けた方が、体力を吸収するどころか、ダメージを受けてしまう」
ヘルメス「更に言うなら、土の精霊であるゾーオンにとっては、炎は弱点属性」
ヘルメス「ひとたまりもなかっただろう」
ソフィア「だから遺体には傷がなかったのね」
ソフィア「ラケルタはそもそもダメージを受けていない」
ソフィア「ゾーオンは本来なら回復する筈のチカラをダメージとして受けてしまった・・・・・・」
ヘルメス「現場に戻るぞ」
ソフィア「ええ!」
ソフィア「でもどうして、すぐ逃げなかったのかしら?」
ヘルメス「炎の精霊は火葬できない。ほとぼりが冷めるまで、土の中で眠っているつもりだったのだろう」
ソフィア「土の中で、って、それじゃ死んじゃ・・・・・・」
ソフィア「あ、もう死んでるのか・・・・・・」
ヘルメス「見過ごせば危うく奴の逃走を手助けするところだった」
ヘルメス「急ぐぞ!」

〇鍛冶屋
「!?」
ソフィア「ラケルタがいない!」
ヘルメス「奴め、勘付いたか」
ヘルメス「まだそう遠くへは行っていない筈だ。魔紋を追うぞ!」

〇草原の道
「見つけたっ!」
ソフィア「ラケルタさんっ!」
ラケルタ「チッ!」
ソフィア「ゾーオンさん殺害の容疑でご同行願えますか?」
ラケルタ「断る・・・・・・ あれは事故だ」
ヘルメス「そうかも知れん」
ヘルメス「だがあの剣を造ったのはお主だろう」
ラケルタ「注文があった。だから造った。それだけだ」
ソフィア「黒魔術まで使って?」
ソフィア「違法行為だって事くらい、知ってるわよね ?」
ラケルタ「命を奪う道具を造っているんだ。違法も合法もあるものか」
ヘルメス「たわけが。その結果がこの有様ではないか」
ラケルタ「満足しているよ。図らずとも不老不死を手に入れた」
ラケルタ「これからは幾らでも理想の武器の探求が出来る」
ソフィア「そうはいかないわよ」
ソフィア「正式な手続きも踏まずに黒魔術を使うのは、とんでもない重罪よ」
ソフィア「今回の事件が事故だったとしても、切っ掛けを作ったのは貴方だし、」
ソフィア「流石に過失という訳にはいかないわ」
ラケルタ「冗談じゃない。俺は依頼された仕事をしただけだ」
ラケルタ「それを勝手に逆恨みされて、寧ろ被害者だろう」
ヘルメス「巫山戯るなっ!」
ヘルメス「己ばかりか、他人の人生まで弄んで、神にでもなったつもりかっ!!」
ラケルタ「そうだ。武器は命を奪う。俺はその武器を造っている」
ラケルタ「俺は神だっ!」
「なっ!?」
ラケルタ「俺の炎を一瞬で・・・・・・」
ソフィア「ナメないでほしいわね」
ソフィア「ラケルタ! ゾーオン殺害容疑及び、黒魔術の不正使用容疑により・・・・・・」
ソフィア「逮捕するっ!!」
ラケルタ「ぐ・・・・・・ え・・・・・・」

〇怪しげな酒場
ソフィア「今回はありがとう。ホントに助かったわ」
ヘルメス「構わぬよ。仕事だし」
ソフィア「気になってる事があるんだけど・・・・・・」
ヘルメス「何がだ?」
ソフィア「黒魔術を使ったのはラケルタだったのよね?」
ヘルメス「そうだが?」
ソフィア「正式に使わなかった結果、アンデットになってしまった」
ソフィア「でもあの剣自体には何の呪いも掛かっていなかった」
ヘルメス「そう・・・・・・ だな・・・・・・」
ソフィア「にも関わらず、剣を使ったゾーオンさんが不幸に見舞われた理由って何だったの?」
ヘルメス「言われてみれば・・・・・・」
ソフィア「ラケルタの言う通り、ゾーオンさんの逆恨みってのも、あながち間違いではないのかもね」
ヘルメス「むぅ・・・・・・」
ソフィア「それから・・・・・・」
ヘルメス「未だあるのか?」
ソフィア「結局あんたって何者なの?」
ヘルメス「気になるか?」
ソフィア「そりゃもう」
ヘルメス「ふむ・・・・・・」
ヘルメス「儂はな・・・・・・」

次のエピソード:EP2 ヘルメスの秘密

コメント

  • RPGのクエストイベントを見ているようで楽しめました!
    聞き込みの時のモブがシルエットなのも、
    ルナティックドーンのクエストみたいで
    好きです😊

  • まずヘルメス・トリスメギストスが少女になってる時点で掴まれました
    名前言いにくいネタは私も使ったことあります笑
    探偵と錬金術とRPGの組み合わせが新鮮でした

  • アンデットに回復と聞いてFF6の魔列車にフェニックスの尾を思い出してしまったゲーム好きの私です。
    闇属性等鑑定で状況を判断するとか面白い。
    ファンタジー×推理、これは新感覚!

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