メタリアルストーリー

相賀マコト

エピソード12(脚本)

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〇鍛冶屋
ニル「ごめんくださーい」
  ノックしてからドアを開けると、むわりとした熱気がふたりを包んだ。
  細めた視界には、古びた内装と所狭しと飾られた物々しい武器たちが映る。
  店内に客らしき者は見当たらず、カウンターに一人なにやら作業をしている少女がいた。
  少女はニルたちに気づくと、ぺこりとお辞儀をして、奥の部屋へと消えていった。
  すぐに、店の奥から低い声がかかる。
「何の用だ」
  声の方に目をやる。するとそこには、隆起した逞(たくま)しい筋肉質な腕を組んだ強面の初老の男が立っていた。
  年季が入っているだろうゴーグルが額を飾っている。
ニル「えっと、メイザスさん・・・ですよね?」
メイザス「・・・そうだが」
ニル「フリオさんに言われて来ました。 剣の製作を依頼したいんですけど・・・」
  ニルの言葉に、メイザスは表情を変えぬまま品定めするようにふたりを眺める。
  居心地の悪い沈黙がしばらく続いたあと、メイザスの目が冷酷に細められた。
メイザス「・・・お前ら、コレクターか?」
ニル「はい」
メイザス「等級は?」
ニル「俺は中級で・・・」
アイリ「私は上級よ」
  はあ、とメイザスは息をついた。
  それからふたりにくるりと背を向けて、再び奥の作業場へと戻ろうとする。
アイリ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
  慌てて声をかけると、メイザスは面倒そうに振り向いて足を止めた。
メイザス「話にならん。特級になって出直してきな」
アイリ「なっ・・・!」
  その物言いに、アイリは顔を赤く染めて絶句した。
  メイザスはフン、と鼻を鳴らして言葉を続ける。
メイザス「その程度のコレクターのために鍛えるものなぞないわ」
メイザス「不相応な武器は、身を滅ぼすだけだ」
メイザス「帰れ」
  鋭い眼光でニルとアイリを見下ろして、メイザスはそのまま奥へと戻っていく。
  残されたふたりは、無言のまま鍛冶屋を後にした。

〇ヨーロッパの街並み
アイリ「なんなのよアイツ!」
ニル「アイリ・・・」
  憤(いきどお)るアイリをなだめながらニルは肩をすくめる。
ニル「どうしよっか?」
アイリ「・・・しかたないから、私の行きつけの鍛冶屋に戻りましょ」
アイリ「ヴェラグニスのパーツを使うのは諦めて・・・」
「すみませーん!」
  明るい声が、ふたりの会話を遮った。
  声につられて振り向くと、可愛らしい少女の姿が目に入る。
???「おふたりさん! ちょっと待ってください!」
  急いでふたりを追いかけてきたのか、少女の息は少し上がっていた。
  癖のない素直な黒髪は、肩の上で少し切り揃えられ、ゆったりとしたサロペットからは細い素足が伸びている。
  見覚えのあるその女の子は、先ほどメイザスの鍛冶屋で見かけた子だった。
  少女は呼吸を落ち着かせたあと、こほん、とひとつ咳払いをする。
???「先ほどは、おじいちゃんが失礼しました」
???「そして初めまして——」
エルル「私はエルル・メイザスといいます」
  そう言って頭を下げる女の子——エルルに、ニルとアイリは驚きの声を上げた。
ニル「おじいちゃん・・・ってことは、君はメイザスさんの孫?」
エルル「はいっ!」
  笑みを浮かべたエルルを見ながら、アイリは素っ気なく尋ねる。
アイリ「孫のあなたが、私たちになんの用かしら?」
  エルルはおずおずと一歩踏み出し、アイリへと距離を詰めた。
  やや興奮気味のエルルの気に押され、アイリの背筋が少し反る。
エルル「あの・・・アイリ・バラーシュさん、ですよね? 上級コレクターの・・・」
アイリ「ええ・・・」
  その返事に、エルルはキラキラと目を輝かせ、アイリの両手をしっかりと握った。
エルル「やっぱり! 私、アイリさんのファンなんです!」
アイリ「ファ・・・?」
  困惑しているアイリをそっちのけで、エルルは「お会いできて嬉しいです〜!」と嬉しそうに両手を上下に振っている。
  そんなふたりの様子を、ニルは感心したように見ていた。
ニル(アイリってほんとに有名人なんだなぁ・・・)
  興奮冷めやらぬ様子のエルルの手からやんわりと脱けだして、アイリは引きつった笑顔を作る。
アイリ「えっと・・・じゃあ、そろそろいいかしら?」
  ニルに目配せしてから、アイリはエルルに背中を向けた。
  ニルもそれにならい、歩き出そうとする。
エルル「待ってください!」
  その声に反応して、ニルとアイリは足を止めて肩越しに振り向いた。
エルル「その・・・実は、お願いしたいことがあるんです」
  エルルは胸元に重ねた両手に力を込め、じっとふたりを見る。
エルル「おふたりとも、私と一緒にクエストにいってくれませんか!?」
  その言葉に、ニルとアイリは「へ?」と間の抜けた声を漏らした。
  アイリは眉を寄せて再びエルルに向き合う。
アイリ「あなた、コレクターなの?」
エルル「いいえ。 でも、コレクターになりたいんです!」

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