マトワレ!

池田 蒼

エピソード1(脚本)

マトワレ!

池田 蒼

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〇けもの道
  ザザザザッ!
  黒い影が茂みに向かってものすごいスピードで走っている。
龍人「そこかぁ!」
龍人「かいざーぶれええいど!」
龍人「く!」
龍人「外した!」
龍人「これで終わりだ!」
龍人「秘技!つばめがえしっ!」
龍人「だ!ダメか!」
龍人「まてぇ!逃げるな!」
  黒い影は男の攻撃をかわし、茂みのさらに奥へと消えて行った。
龍人「くそ!すばしっこいやつめ!このリュート様の斬撃を受け流すとは!なかなかの強者!」
龍人「いざ!参る!」

〇森の中
  後を追った男は、気がつけば木々に囲まれた広場に出る。
龍人「はぁはぁ...キマイラめ。どこへ行きやがった!」
龍人「出てこい!キマイラ!」
  ガサガサガサッ!
  男は物音のする方向に目を向けた。
龍人「む!?」
  男の視線の先にそれはいた。
キマイラ?「にゃ〜ん」
龍人「そこにいたか!これ以上街の人を苦しめられないように、ここで・・・斬る!」
キマイラ?「にゃ〜ん」
龍人「いくぞ!」
「はいはいはい、そこまでー・・・」
  そう言ってひとりの少女が木々の間から顔を出した。
龍人「おお、カエデニア!助太刀に来てくれたか!」
楓「誰がカエデニアよ!」
楓「お兄ちゃん、本当にいい加減にして!」
楓「もう大学生なんだから、魔王討伐とか言ってないで、もっと現実的で一般的な遊び方してよ!」
龍人「何を言う!これは遊びでは無い!街の人達が魔物に脅かされる事がないよう、このリュート様が治安を守っているのではないか!」
楓「リュートって、、。あんたの名前は龍人でしょ。たーつーひーとっ!」
龍人「それは、仮の名前だ!」
楓「もういい!もうすぐご飯だから早く帰ってきてってお母さんが!それだけ伝えに来たの!伝えたからね!私はもう帰る!」
龍人「おい、そう怒るなよ・・・」
龍人「待てってば!」
  ザザザザザザ・・・グルルルル
キマイラ?「・・・にゃ?」
  ・・・

〇商店街
  ガチャガチャ・・・
  ヒソヒソヒソヒソ
楓「チッ」
  ガチャガチャガチャガチャ
  ガチャガチャガチャガチャ
楓「あー!うるさい!横を歩くな!」
龍人「む!何故だ!?」
楓「甲冑の音でみんな見てるでしょうが!まるでわたしも知り合いだと思われるでしょ!」
龍人「知り合いも何も!家族ではないか!」
楓「いいから、離れて!」
龍人「ぬぅ。致し方ない・・・」
楓(あー。お兄ちゃんも、なんであんなお兄ちゃんになっちゃったんだろう)
楓(元はと言えば、小さい頃に一緒にやってたRPGのゲームが原因ね)
楓(私も小さかったし、ゲームで敵を倒すシーンを見ながら、何もわからず褒めちぎってたから。屈折した妄想を抱かせてしまったのね)
楓(どうしたら普通になってくれるのかな)
  楓は心の底からありもしないファンタジーの世界の存在を疑わない兄の事が嫌いだった。
  そんな事を考えている時だ。
  グルルルルルルゥゥ・・・
楓「え、何?」
緑の肌の生物「グルルルルルルゥゥグガァ!!」
楓「え、え!え!?」
  唐突に目の前に緑色の肌をした歪な風貌の人もしくは動物と形容すべき生き物が今にも楓に襲いかかろうとしている。
「楓!!下がれ!!」
  楓の少し離れた場所を歩いていた龍人が駆け寄り、その生き物と楓の間に割り入る。
楓「お兄ちゃん!な、なんなのあれ!」
龍人「わからない!だが、あからさまに危険だ!いいから下がれ!」
楓「・・・うん」
緑の肌の生物「ガァァァァー!」
  生き物が咆哮した。
龍人「ダァァァアアーーーー!」
  被せるように龍人も叫び返す!
緑の肌の生物「グ!グルルルルゥゥ!!」
  生き物は少しひるみ、後退りした。
龍人「くらえ!!」
  龍人は生き物に向かって走り込んだ。
緑の肌の生物「グムゥゥー・・・」
  困ったような唸りを吐いて、生き物は龍人の気迫に負けて路地へと消えていった。
楓「・・・お兄ちゃん」
龍人「楓!大丈夫だったか!」
楓「うん」
龍人「とりあえず家に戻るぞ!」
  龍人と楓は家路を急いだ。

〇シックな玄関
  二人は逃げるように玄関の扉を開けた。
「ハァハァハァ・・・」
  急ぎ帰ってきた事で息が荒い。
「・・・」
  二人は無言で顔を見合わせた。
母「おかえり。二人とも。もう夕食出来るから。早く着替えてきなさい」
  母親が二人を迎えた。
  ついさっき遭遇した出来事が嘘のように、家の中には平穏がある。龍人と楓は安堵した。
  二人は、それぞれ身支度を整えて、ダイニングへと向かった。

〇ダイニング
  テーブルに夕飯の支度が整っていた
  ・・・
  ・・・
  ガチャガチャガチャガチャ
母「龍人、着替えはどうしたの?」
龍人「む?」
母「ご飯の時くらい鎧を脱ぎなさい!」
龍人「ぐ!いや、こ、これは」
母「龍人。言うこと聞かないなら、こんりんざい、鎧をまとうのをやめなさい!」
母「お父さんもなんか言ってよ!」
  丁寧に焼き魚の骨を取り、まさに食そうとしていた父親らしき男性が急に水を向けられて戸惑っている。
父「むぅ・・・龍人・・・」
父「あえて言う。父さんもそういう時があった」
龍人「父さん!そういう時とは、どういう事ですか!?」
父「どうしても、鎧を纏いたく纏いたくて仕方がない衝動に駆られた時の事だ!」
父「父さんもお前くらいまだ若かった。若気の至りってやつだ・・・」
龍人「父上、わかっていただけるんですか!?」
父「違う!」
父「父さんもそういう時はあった、だが・・・」
父「だが・・・踏みとどまった・・・。何故だかわかるか!?龍人!」
龍人「・・・わ、わかりません・・・。何故ですか?」
父「恥ずかしいからだ!!」
父「纏いたくて纏いたくて仕方なかったが、その時想像したんだ。鎧を着て街を歩いた時の周りの視線を」
父「陰口を叩かれている、自分の姿を!」
父「だからやめたのだ!理解出来るだろ!龍人!」
龍人「わ、わかりません!私は例え陰口を叩かれようと、人々の平和を願う信念があるからこそ、何も気にはなりません!」
父「な、なんだと!!そこまでの気持ちがお前にあったとは・・・。父さんどうやら勘ちが・・・」
楓「まてまてまてまてー!」
楓「おい親父折れて納得しようとしてんじゃねー!」
楓「お兄ちゃんも、つべこべ言わずに早よ脱げやぁー!!」
「ぐ、ぐぬぬ」
龍人「か、楓。口が悪いよ、、」
楓「誰のせいでこうなってると思っているのよ!」
龍人「・・・ぐ、ぐぬん・・・グスン」
  楓の言葉は、どこか虚勢を張っていた龍人の琴線に触れたようで泣き出してしまった。
  しかし、夕方の不思議な生物と遭遇した時に、龍人が鎧を装備していたことで、功を奏した事は否めない。
  龍人の事が少し可哀想になって来た楓は迷いながらもなるべく刺激しないように、その事を切り出す。
楓「はぁー。あ、そういえば・・・」
  母親も父親も楓の言葉には耳を貸した。
楓「夕方、お兄ちゃんを呼びに行った帰り、商店街で変な生き物に出会って、」
楓「その生き物は緑色の肌をしていて、わたしに襲いかかろうとしていたの」
楓「それをお兄ちゃんが追い払ってくれたのよね。まあ、鎧を着てると、ほんとぉーーに稀にいい事もないことはないって事で・・・」
龍人「!!!!!!!」
龍人「そぉうなのだよ!カエデニア!私がその魔物を追い払う事が出来たのも、何を隠そうこの鎧のおかげなのだ!!フハハハハ!」
楓(誰がカエデニアよ!)
龍人「すまない父さん!私には世にはびこる魔物たちを根絶やしにする使命があるのだ!」
龍人「今こうしている時も、さっきの魔物が襲いかかってくるかもしれない!鎧を脱ぐ事は出来ん!」
父「ぐぬぬ」
  もはや誰も言い返す事が出来ない空気が出来上がっていた。
母「あー、それってさっきニュースで言ってたやつかしら・・・まだやってるかしら」
  楓の話に心当たりのあった母親はそう言ってテレビをつけた。

〇新橋駅前
リポーター「本日、帰宅ラッシュの時間に突如として得体の知れない生物が出現したとして、駅前は大勢の人が騒然としております」
リポーター「保健所職員に加え、警察も動員され、今まさに捕獲に向けて生物を探している所のようです」
リポーター「あ、いま!生物が発見されたようです!」
緑の肌の生物「ガァァァア!」
  パァン!!
緑の肌の生物「グフゥ・・・・・・」
リポーター「今、麻酔銃が撃たれた模様です!」
  緑色の肌の生物はその場に崩れ落ちた。
リポーター「捕獲されました!大勢の警察官が駆け寄っています!」
リポーター「一旦スタジオにお返しします!」

〇ダイニング
母「ちょうど捕まったとこ見たいね」
母「あんたが頑張らなくても、ちゃんと専門家の人たちが解決してくれるんだから!」
母「これでもう鎧は必要ないでしょ!早く脱いで、ご飯食べちゃって!」
龍人「く!俺の獲物を・・・」
母「なんか、言った?」
龍人「い、いや」
  母は強し。
  龍人は渋々鎧を脱いだのであった。

〇女性の部屋
  謎の生物は捕獲されたが、楓は胸騒ぎがしていた
楓「でも、あの生き物なんだったんだろう・・・。犬猫には見えなかったし」
楓「ネットニュースにも、全然載ってないのよね」
  不安は消えないが、夕方の出来事で疲れていたのだろうか。楓はすぐに眠りに落ちた。
  つづく

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • 時折、クスッと笑いながら読ませて頂きました。ガチャガチャのシーン、好きです。会話のテンポがよくてテンポよくタップしながら読ませて頂きました。

  • ガチャガチャ歩いている場面で思わず笑いました。笑
    今後の展開が気になるので、続き楽しみにしてます!

  • 面白いとシリアスが交わっていて、最終的にどっちに展開するのか今後が楽しみです。最初に猫ちゃんを登場させているのは、動物的勘で何かを感じ取っていたのかと思いました。

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