6 心霊実況(脚本)
〇女性の部屋
高橋夏蓮「「あなたはお呼びじゃないですねぇ」か」
坂井とーが「あれは人間じゃなかったね」
高橋夏蓮「依頼人のことはお呼びだったのかな。どうしてとーがは呼ばれなかったんだろう」
坂井とーが「私の方が巻き込まれやすいはずなんだけど」
高橋夏蓮「とりあえずそれで報告書まとめるけど、満足な成果はなかったね」
坂井とーが「ひとつだけ言えるかも。依頼人は、二度とその路線に乗ってはいけない」
高橋夏蓮「昼間でも?」
坂井とーが「今までいろいろ巻き込まれてきた私の直感。近づけば、引き寄せられると思う」
高橋夏蓮「了解」
カタカタ
高橋夏蓮「できた! ところで、とーが。心霊スポット実況って知ってる?」
坂井とーが「・・・読んで字のごとく?」
高橋夏蓮「そう。「心霊スポットに突撃してみた!」みたいな動画企画で、再生数を稼ぐわけ」
坂井とーが「まさか、やってみたいとか?」
高橋夏蓮「人気の配信者になれれば、いい広告収入を得られると思うの。もちろん、顔出しはしないけど」
坂井とーが「夏蓮、本業でも私より稼いでるよね。そこまで副業をがんばらなくても・・・」
高橋夏蓮「今の時代、会社に依存してるだけじゃダメよ!」
坂井とーが(だとしても、心霊スポットに行きたいだなんて、意外だな・・・)
〇廃工場
坂井とーが「ほんとに来ることになるとは・・・」
高橋夏蓮「雰囲気あるね。 でも、これで偽物なんでしょ?」
坂井とーが「まぁね。本物は危ないから」
数々の心霊動画を見た私は、あえて偽物の心霊スポットを提案した。
動画には「かえれ」と聞こえる呻き声が収録されていたが、それは人間の声だった。
高橋夏蓮「なんか、嘘ついてるみたいで心が痛い」
坂井とーが「「出ます」って言わなきゃ嘘じゃないよ。「出るというウワサです」くらいにしておけば」
高橋夏蓮「盛り上がりに欠けるな・・・」
坂井とーが「いいの。本物が映って、視聴者に被害が出たら大変でしょ」
高橋夏蓮「う・・・正論。 とりあえず、始めようか」
高橋夏蓮「『私たちはT峠の廃墟にやってきました。ここは、幽霊が出るとのが絶えない場所です』」
高橋夏蓮「『では、さっそく突入してみたいと思います』」
〇荒れた倉庫
高橋夏蓮「『中は荒れ果てていますね』」
高橋夏蓮「『今のところ、幽霊が出る気配はありませんが・・・』」
パキッ
高橋夏蓮「え?」
高橋夏蓮「今、何か聞こえた・・・?」
坂井とーが「枝を踏んだ足音みたい」
パキッ パキッ
高橋夏蓮「近づいて来てる・・・?」
坂井とーが「うん。あれ、人間の足音だと思う」
高橋夏蓮「は・・・? 人間が、私たちに隠れて動きまわってるってこと・・・?」
坂井とーが「そうなるね」
高橋夏蓮「――ヤバイ! とーが、逃げるよ!」
坂井とーが「了解」
〇廃工場
高橋夏蓮「どうしよう。車、パンクしてる・・・」
坂井とーが「さっきの人がやったのかな?」
高橋夏蓮「け、警察に・・・」
坂井とーが「待って。肝試しに来ておいて通報するのは、迷惑なんじゃ・・・」
高橋夏蓮「そんなこと言ってる場合!?」
高橋夏蓮「あ・・・ 圏外・・・」
坂井とーが「朝まで待って、電波のある所まで歩くしかないね」
高橋夏蓮「ううっ。 ごめんね、とーが。私が心霊実況をしようなんて言ったせいで・・・」
坂井とーが(責任感じさせちゃったなぁ)
ガサッ
高橋夏蓮「ひっ」
坂井とーが「・・・まぁ、相手はたかが人間でしょ」
「うー・・・・・・あー・・・・・・」
高橋夏蓮「何言ってるの!? 人間が一番怖いでしょ!」
坂井とーが「そう・・・? 私は人間が怖いと思ったことはないけど」
高橋夏蓮「とーが、その感覚はおかしいよ」
高橋夏蓮「ぐすっ」
坂井とーが(変だな。人間が怖いなら、どうして「心霊スポットに行きたい」なんて言い出したんだろう?)
坂井とーが(不審者に会う可能性を、夏蓮が考えられないはずないのに・・・)
「・・・か・・・・・え・・・れ・・・・・・」
坂井とーが「ごめんなさい! 明るくなったら帰ります!」
高橋夏蓮「ちょっと、とーがっ!?」
坂井とーが「私、肝試しで心霊スポットに行くのは好きじゃないんだよね」
坂井とーが「それは、誰かの住んでいる場所に勝手に立ち入って、見世物にする行為だから」
坂井とーが「夏蓮だって、「ここが有名な高橋さんの住居です!」って実況されたら嫌でしょ?」
坂井とーが「相手が人ならざる者でも同じこと。 相手の敷地に勝手に立ち入ったり、失礼なことをしちゃダメなんだよ」
坂井とーが「・・・あの人も、ここに住んでるのかもしれない」
高橋夏蓮「うん・・・もうしない。 ごめんなさい・・・」
坂井とーが(素直に納得してくれた・・・ ますます、強引に実況をやりたがってたのが謎だ)
高橋夏蓮「今、何時・・・?」
坂井とーが「午前2時くらい」
高橋夏蓮「とーが、どこにも行かないでね。ずっと一緒だよ・・・」
坂井とーが「もちろん」
ヴヴヴヴ・・・
坂井とーが「ん、電話? 私のスマホは通じるのかな?」
坂井とーが「もしもし」
あ、とーが? 地下鉄の件の報告書をまとめたいんだけど──
坂井とーが「!?!!?」
坂井とーが「か・・・」
坂井とーが(夏蓮!?)
高橋夏蓮「とーが、どうしたの?」
もしもし、とーが?
坂井とーが「・・・・・・」
高橋夏蓮「誰と電話してるの?」
坂井とーが(私が呼ばれてしまってたか・・・。 たぶん、うちに来たときから、こいつは──)
高橋夏蓮「とーが、どこにも行かないでね」
坂井とーが(こいつの目的がわからない。でも、一緒にいるのは危険だ。一か八か・・・)
ダッ──
高橋夏蓮「あっ」
〇山道
車で来た道を、全速力で走った。
こんなことで逃げ切れるのかわからないけれど──
???「とーが、待ってよ!」
振り返ると、それはすでに人間の形を保っていなかった。
坂井とーが(どうして気づかなかったんだろう・・・)
ねぇ、何かあったの?
坂井とーが「実は、T峠の廃墟で──」
プツッ
坂井とーが「もしもし!?」
助けを呼ぶことはできないようだ。
???「とーが、行かないで・・・」
少し距離が離れてきた。
これなら振り切れそうだ。
坂井とーが「――あっ」
チラチラと後ろを見ていた私は、崖から足を踏み外してしまった。
〇谷
坂井とーが「・・・体が動かない」
坂井とーが「誰か・・・」
サクッ サクッ
坂井とーが「人・・・?」
高橋夏蓮「とーが、見つけた」
坂井とーが「夏蓮・・・」
坂井とーが「・・・じゃない」
坂井とーが「どうして、私を呼ぶの・・・?」
高橋夏蓮「寂しい・・・。 ずっと一緒にいて・・・」
坂井とーが「無理だよ。私、人間としか友達にならないことにしてるから」
高橋夏蓮「・・・じゃあ、食べる」
〇手
きっと、それも無理だよ・・・
えぇ〜😱まさかの展開でした(笑)とーがさん、たぶん週一ペースでお亡くなりになってますね😂
明らかにデッドエンドですが…
たぶん普通にまた生活を過ごすんでしょうね…
もうどっちがバケモノなのか
実は残機制とか…?