読切(脚本)
〇女性の部屋
わたしは目覚まし時計の音で目が覚めた。
寝起きのわたしにとってはすごく邪魔な音。そう思いながら音を止める。
「うーん・・・今何時?・・・」
「って8時!?」
9時から「先生」と用事がある
「まずい!!急がなきゃ!!」
先生に会うために全力で可愛くならなければならないし、何より先生のオフィスまで結構時間が掛かる
「やばい!!行ってきまーす!」
〇電車の中
「ふぅ・・・。とりあえずこの電車に乗れれば大丈夫でしょ」
朝から焦っていたもので、ようやく落ち着ける時間が出来た。
今日、先生のオフィスに伺ってする事は、お仕事のお手伝い。
先生のために、頑張るぞ!
〇古書店
「先生、失礼します!」
先生「おぉー。久しぶりだね」
先生「今日も朝から元気だな、君は」
「はい!お陰様で!」
先生「はは!じゃあ早速お手伝いしてもらえるかな?」
「はい喜んで!」
・・・
ずっと作業をしていて気がつけば太陽が沈みきっていた。
「んー!」
軽く背伸びをする。
先生「君も区切りのいいところかい?」
先生「私も休憩しようと思ってね」
先生「珈琲を淹れたんだ。よかったら飲んでくれ」
「ありがとうございます!いただきます!」
温かいコーヒーはわたしの体を温める。
そして、心が落ち着く。
先生「君は仕事が早いな」
先生「流石私が見込んだ人材だ」
先生の手がわたしの頭を撫でる。
「え!・・・」
いきなりな行動に驚いてしまった。
先生「おっと。すまない。気持ち悪いよな、こんなやつにこんな事されるの」
先生「すまない」
ほんとは嬉しかったのに。伝えなきゃ・・・わたしの気持ち!
「先生!」
「先生!・・・あの・・・」
先生「無理しなくていいんだよ。大丈夫。引かれてしまって無理はない」
「違うんです!先生・・・わたし、嬉しかったです!」
先生「えっと・・・」
先生は驚いた顔をした。
「先生、わたしは先生とお仕事ができて、一緒に過ごせて嬉しいんです」
「先生のお仕事をする姿や優しさがとても素敵で」
「先生、この気持ちってなんというのでしょうか」
先生「はは!」
先生は笑顔になった。
先生「それならそうと言ってくれても良かったのにな」
先生「随分と我慢した。この言葉を言うだけなのにな」
先生「君と私の気持ちはきっと同じはずだ。教えてあげよう。君が私に抱いている感情を」
先生「それは「好き」と言う感情さ」
先生「少なくとも私は君のことが好きだ」
先生「君がよければ仕事ではなくプライベートでも一緒にいたいぐらいさ」
先生「強要はしないが君の気持ちも知りたい」
「わ、わたしは・・・」
「先生のことが好きです!」
先生「そうか嬉しい。答えてくれてありがとう」
先生「それにしても・・・」
先生「顔も耳も真っ赤だ」
先生「はは!」
先生「君、さくらんぼみたいだな!」
「えっ!?」
さくらんぼって何?と思いながら思考を巡らせる。
すると、
先生「わからないか?顔も耳も真っ赤だと言う意味だ」
そう言いながらわたしの頬を触る
先生「そこまで照れることだったか?」
「そ、そうですよ!もう・・・」
先生「そうだ!・・・確か今日は・・・」
先生「君、窓の外を見てごらん」
先生「月が綺麗だな」
「確かに、綺麗ですね」
先生「意味、わかっているか?」
「え?意味ですか?月が綺麗っていう意味では・・・?」
先生「夏目漱石の言葉だよ」
先生「I love you.君への想いだよ」
先生「愛してる」
後ろから抱きしめられたわたしの体は熱に包まれた。
先生から漂う古風な感じがとても素敵でした。小説を引用する部分がロマンがあって、さくらんぼの様だと比喩するところもキュンとなりました!素敵な物語ありがとうございます!
真っ直ぐで純粋なお話でした。ときめくシーンを壊さないように、濁らないように、丁寧に透明な瓶へ封入した。そんな風に見えますね。
技術やシナリオを工夫して複雑化すればするほど、読み手側に好き嫌いが生まれてしまうんですけど、この作品なら誰からも好かれそうな手触りです。久しぶりにすご~く優しいお話を読みました。
きれいな作品とてもよかったです。また色々な作品みたいどす