始動!(脚本)
〇空っぽの部屋
モモ「わぁ、これが衣装!」
ヒマ「可愛い!!」
マリン「うん、制服みたい♪」
監督「おー、みんな、似合ってるじゃないか!」
監督「さて、今後活動するにあたって、まずは敬語と「さん」「ちゃん」づけをやめような」
監督「番組出るのにメンバーがお互い敬語だったら、仲悪いのかと思われてしまうだろう?」
アヤメ「はーいっ♪ モモ、マリン、ヒマ、コノハ、よろしくっ!」
コノハ「わわわ、私には荷が重すぎます・・・」
監督「まあ、君はキャラが立ってるからそのままでいいよ」
監督「来週の日曜日から撮影が始まる」
監督「スタジオでの撮影は全部で4回。 あとは練習風景やプライベートの様子を撮影して送る」
監督「それを向こうが編集して放送する、という形だ」
アヤメ「えっ? 撮影って誰がするんですか?」
監督「俺が任されているよ。 練習中は基本的にずっとカメラを回しているので、そのつもりでよろしく」
監督「それじゃあ、さっそく全員で写真を撮ってみようか!」
監督「記念すべき「Pass☆Tell」初めての集合写真だ!」
監督「さあ、並んで並んで」
マリン「えっ、はい!」
ヒマ「そんな急に!? 待ってよ、メイク崩れてないかな〜」
監督「・・・どうだ?」
ヒマ「えっ、待って、全然オーラがない」
マリン「立ち方?角度かな? なんか、アイドルっていうか、修学旅行の集合写真みたい」
アヤメ「うーん。でも、モモちんはいい感じだね! なんでだろう?」
モモ「あ、こういうのって、コツがあるんだよ。 私は親がバレエ講師だから、昔から姿勢とか立ち方とか厳しく言われてて」
ヒマ「なにそれっ!! ちょっと、教えて教えて!」
監督(いいぞいいぞー♪)
モモ「まずはまっすぐ前を向かない。 斜め30〜45度くらい」
モモ「角度をつけるために、足はそろえないで、軸足の土踏まずにもう片方のかかとを付けてちょっと開く」
コノハ「こ、こうですか・・・? 意外とバランス感覚が必要・・・」
モモ「あっ、ガニ股にならないようにね」
モモ「あとは、肩をしっかり後ろに、胸を張って。やりすぎ!って思うくらいで、実はちょうど良いよ」
ヒマ「うっ!こんな感じ? ちょっ、これキープするの結構キツくない?」
モモ「手はだらんと下ろすより、おへそのあたりに添えるとか、前でそろえるとか」
モモ「脇を締めると二の腕がつぶれて太く見えるよ」
モモ「あとは顎を引くんだけど、引きすぎると二重顎になるから、加減が大事で・・・」
アヤメ「そ、そんないっぺんに言われても覚えられないってば!」
監督「君たちは普段、自撮りはするかもしれないが、全身の写真はあんまり撮らないだろう?」
監督「みんな、自分で思っているより姿勢が悪い」
監督「カメラの前に立つ人は慣れているから、比べるとより格好悪く見えてしまう」
モモ「あと、右向きと左向きで顔が違うから、自分がどっちの方が好きかわかってた方が良いかも♪」
モモ「そうすれば自然と、みんなで自撮りする時も立ち位置が決まるし」
ヒマ「あっ、わかるわかる! アタシ右向きばっかり撮っちゃう♪」
コノハ(アイドルって、こんなに自分の見られ方を意識しなければいけないのか)
マリン「うん、最初のより良くなったんじゃない?」
アヤメ「はぁー、姿勢良くするのってこんなに疲れるのね。 全身鏡買おうかなぁー」
〇空っぽの部屋
監督「それでは、収録当日の台本と香盤表を渡す。 わからないことがあれば、質問してくれ」
ヒマ「げっ! 集合時間7時って、マジですか!?」
監督「あぁ。 撮影は、朝早いことが多いぞ。遅刻するなよ!」
アヤメ「これって30分の番組でしたよね? それで、朝の7時から夕方の5時まで拘束されるんですか!?」
監督「そうだ。なんせ多くの人が出演する番組だしな」
監督「ミーティングやメイク、スチール撮影にも時間がかかるし、待ち時間も長くなる」
コノハ「あの、スチール撮影とは?」
監督「写真撮影だな。番組内で使う静止画や、ホームページやSNSでの告知などに載せるための写真を撮る」
モモ「メイクさんがつくってことは、自分でお化粧して行かなくても良いんですね♪」
監督「ああ。すっぴんで来ても構わんが、紫外線対策だけはして来いよー。 年取った時シミの原因になるぞ!」
マリン(すごい・・・今までの平凡な生活と違って、現実じゃないみたい)
監督「まぁこの番組は、周りも君たちと同じ、芸能活動の経験がない子たちばかりだ」
監督「緊張するだろうが、気負わずにやってきてくれ」
監督「それと、最後に、アイドルになるうえで一番大事なことはなんだと思う?」
ヒマ「んー・・・ 可愛さ?歌やダンスのうまさ?ファンサービス?」
監督「コノハ、君はアイドルが好きで、この世界に入ったんだったな?」
監督「君はアイドルのどんなところが好きなんだ?」
コノハ「えぇと、いつも前向きで頑張っていて、元気をもらえます!!」
監督「そう、それだな!」
監督「活動を続けていくと、今まで経験したことのない困難や理不尽や、とうてい敵わないすごい才能を持った人にも遭遇するだろう」
監督「そんな時に、絶対にふてくされてはいけない!!」
監督「悔しくて泣いたっていい。 悩んだり落ち込んだりすることも、人間なら当然ある」
監督「だが、投げやりにはなるな!」
監督「そういう気持ちは、見ている人にも、君たちを使ってくれた人たちにも、伝わるものだよ」
監督「それから、応援してくれる人への感謝の気持ちを絶対に忘れないこと」
監督「みんなで、青春かけてアイドル目指そうな!」
はいっ!!