始まり 〜MOMO〜(脚本)
〇高層階の部屋(段ボール無し)
この業界には
「大人の事情」が蔓延っている
先生っ!
この前のコンクールで、姉の方が3位に入賞しました
先生のおかげです!本当にありがとうございます!!
先生、今度うちの子がテレビに出演することになり、こちらのスクールの取材をさせていただきたいのですが
私の母は有名なバレエ講師だ。
そのため、芸能界とも少しだけつながりがあった
私が芸能界に入ることは、父も母も反対はしなかった
しかし
「高校生になってから」
これが条件だった
〇大きな木のある校舎
私は高校受験をして、芸能コースのある織越高等学校に入学した
モモ(あっ!あの子、子役で有名だった・・・ あの有名な俳優の娘さんもいる!!)
芸能コースでは、既に俳優や歌手としてデビューしている人も多かった
そんな中、もう夏が終わろうとしているのに、私はまだ仕事を一つも貰えていなかった
いくつかオーディションを受けたものの、全敗だった
全ての授業に出席している自分が、なんだか逆に情けなくなった
モモ(担任の先生からだ・・・ なんだろう?)
〇役所のオフィス
モモ「失礼します」
職員室のドアを開けると、先生の横に、大柄な男の人が立っていた
監督「はじめまして。 シン・ミュージックという芸能事務所の代表取締役、シンです」
モモ「えっ、あ、えっと・・・ はじめまして!!」
監督「急に呼び出して申し訳ない。 単刀直入に言うと、スカウトだ」
監督「君はまだどの事務所にも所属しておらず、芸能活動もしていないと聞いたが、合っているか?」
モモ「はい!」
監督「MetPlixで配信されている「アイドルstruggle」という番組は知ってるかな?」
モモ「はい!この前シーズン2が終わった・・・ ここの学校の子も出演していました!」
監督「それなら話が早い! 実はシーズン3に、うちの事務所から1グループ出演することが決まっていて」
監督「そのアイドルグループの一員になってくれないか、というお誘いだ」
モモ「えっ!?私がですか!」
急な話に、私は頭の整理がなかなか追いつかなかった
監督「本当は、このグループのメンバーを決めるオーディションを開催するから、一応君にも形だけ受けてもらうことになるけど」
監督「ま、顔パスだから、安心して!」
モモ(・・・出来レース、ってやつか)
モモ(この世界、本当にそういうことがあるんだ)
監督「あの番組は、素人がアイドルを目指すってコンセプトだけど、さすがに全員素人だと成り立たないからね」
モモ「そ、そうなんですね」
監督「それと、一応あの番組は「芸能活動をしていない子」という規定があるから」
監督「申し訳ないが、番組の放送が終わるまで、他の芸能活動を控えてもらうことになる」
モモ「それは大丈夫です!」
モモ(・・・というか、何も仕事もらえてないし)
監督「ははっ、やる気があるようで、こちらとしても嬉しいよ」
監督「ただまぁ、君の一存では決められないだろう。 必要なら、僕も親御さんと話をするから」
モモ「ありがとうございます!」
〇豪華なリビングダイニング
両親に事情を話すと、あまり良い顔をされなかった
その企画、優勝しないとデビューできないんでしょう?
しかも、そのために、半年間も棒に振るなんて・・・
それに「シン・ミュージック」なんて聞いたことのない事務所、本当に大丈夫なのか?
モモ「・・・」
〇ファンシーな部屋
モモ「すみません、ちょっと両親の説得に手間取ってしまって・・・」
そうか。それでは、僕の方から直接ご両親とお話しさせてもらっても良いかな?
〇豪華なリビングダイニング
シンさんと父は20分くらい話していた
その間、私と母は無言でソファに座っていた
・・・いいんじゃないか
モモ「ほんとっ!?」
あぁ、とても礼儀正しい青年だった。
聞けば、有名な映画監督の息子だそうだ。芸能界のパイプも太そうだしな
そしてなにより、事務所の方針が学業優先だということだ
芸能界で生き残れるのなんて、ほんの一握り
親としては、最低限、一般社会でも生きていけるくらいの学歴と教養は備えてほしい
モモ「・・・はい。芸能活動も、勉強も、頑張ります!」
〇ファンシーな部屋
モモ「ありがとうございました! 無事に許可をもらえました!」
良かった良かった。
娘さん思いの、いいお父さんじゃないか
モモ「えへへ・・・ありがとうございます」
それで、グループの方針として担当カラーを作るのだが、ハッキリとした色は使わずパステルカラーにしようと思う
何か、希望はあるか?好きな色とか
モモ「えぇと・・・ピンクが好きです!」
OK!
芸名は、できればその色に関係するものにしたいんだが
ピンクといえば、サクラかモモか・・・
モモ「「モモ」が良いです!」
わかった。
モモ、君はこれからうちのエースになれる素質がある。よろしくな!
モモ「頑張ります!」