23歳アイドル引退します

めぐる

始まり 〜AYAME〜(脚本)

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〇屋根の上
  なんでこんな簡単なこともできねぇんだよ!
  うるさいわね!アンタだって・・・
アヤメ(・・・また始まった)
  私がまだ小学生の頃、父と母は毎日怒鳴り合いの喧嘩をしていた
  周りの音が聞こえないように、ヘッドホンをして、音楽をかける
  音楽は、私を救ってくれた
  つらい現実から目を背け、耳を塞ぐための手段だった

〇アパートの玄関前
  私が中学生になる前に、父と母は離婚し、私は父に引き取られた
  しかし父とは、もうしばらく口を利いていない
アヤメ「いってきまーす・・・」
  学校に行かなくても、何も言わない。
  私が学校に行ってないことすら知らないかもしれない

〇CDの散乱した部屋
  今まで貯めたバイト代で、ギター買った!!
  これで「BRACK」のコピーバンドやります!
  ボーカルとドラム募集します!
  初心者大歓迎!(俺らも初心者っすw)
  都内で練習できる方お願いします
  Twitterを見ていると、気になる書き込みがあった
  私は「BRACK」というバンドが好きで、SNSを通じてファン同士でつながっている
アヤメ(なにこれっ!超面白そう!!)
  ツイート見て連絡しました。ボーカルやりたいです!
  DMを送った
  その人とは何度かTwitterでやりとりしたことがあったので、歓迎してくれた

〇音楽スタジオ
  えっ、中学生なの!?
アヤメ「はい。何か、まずかったですか?」
  いや、ごめん、てっきり高校生にはなってるのかと・・・
  中学生って、義務教育中だよな・・・
アヤメ「?」
  まぁ、いいんじゃね?
  俺らだって卒業までのお遊び程度だし
  それから、2週間に1度、スタジオに集まって練習をした
  私たちは意気投合し、スタジオ練習以外でも会って自主練をしたり、遊びに行ったりしていた
  ここでも音楽は私を救ってくれた
  「うまい」と褒められるたび、私はそこにいても良いのだと、存在価値を認めることができた

〇イルミネーションのある通り
アヤメ「えっ・・・解散!?」
  あぁ、俺らもそろそろ、就職の準備しなきゃいけないしな
  約半年間バンドの練習を続けて来たが、もともと長くても彼らの大学卒業までという条件だった
アヤメ「就職してからも、バンドは続けられないの?」
  んー、全国転勤もあるし、どこに配属されるかわからないしなぁ・・・
  俺も来月から、入社前研修入っちゃって。
  今後の予定はわからないんだよ
アヤメ「そっかー・・・」

〇アパートの玄関前
  今何時だと思ってるんだ!!!
アヤメ(またお酒飲んでる)
  バンドという楽しい居場所を失い、父には毎日のように怒鳴られ、私はもう限界だった
アヤメ(一刻も早く、この家を出たい)
  しかし、中学生の私を雇ってくれるバイト先なんて、見つからなかった
  おい、返事もしねぇでなんだ、親にその態度は!!
アヤメ「あー、はいはい。私お風呂入ってくるから!」
  酔っ払いの父を適当にいなして、お風呂に駆け込み、湯船の中でTwitterを開いた
アヤメ(アイドルオーディション? え、しかも15歳からOK!?)
アヤメ(ほんとはバンドやりたいし、方向性違うけど・・・ いいやこの際、家を出れるならなんでも!)

〇CDの散乱した部屋
  ──数ヶ月後
アヤメ「合格っ!? あ、ありがとうございます!!」
  こちらこそ、よろしく頼みます
  それから、うちの事務所は基本的に学業優先なので、学校行事とかテスト前で活動が厳しい時は、遠慮なく相談してくれ
アヤメ「あっ・・・はい!」
  学校に行っていない、とは言えなかった
  それでは芸名を決めなければいけないんだが、「アヤメ」はどうかな?
アヤメ「アヤメ??」
  ああ、紫色をした花の名前だ。
  君の担当カラーは紫だから、覚えやすくて良いと思うのだが
アヤメ「紫好きなんで嬉しいです!」
アヤメ「あ、でも私赤髪なんですけど、大丈夫ですか?紫に染めた方が良いですか?」
  い、いや、そこは個人の自由でいいよ
  君は若くてパワーがあるし歌もうまい。
  変に周りに合わせたり、アイドルっぽさに寄せなくて良い
  君の個性を充分発揮できるグループにしたいと思っている。期待しているよ!
アヤメ「はい! よろしくお願いします!」

次のエピソード:始まり 〜MOMO〜

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