片付けない女

いりうわ

片付けない女(脚本)

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〇おしゃれなリビング
彼氏「何で、置いたままにしておくんだよ」
私「またすぐ読むつもりだったの!」
  彼にまた怒られてしまった。
  でも、今日は本当にすぐ続きを読むつもりだったから、マンガを数冊、ベッドの上に置いたままにして、コンビニに出かけたのだ。
  マンガのお供にお菓子とジュースを買ってすぐ戻って来たのだが、彼の帰宅の方が早かった。
  全く、タイミング最悪。
彼氏「何度、言っても直らないのな。お前の散らかし癖」
  この言い方に、私もカチンと来てしまった。
私「読んだら片付けるって言ってるじゃない。そっちが少し潔癖過ぎなのよ」
彼氏「なら、一緒に住もうって話はなしだな」
私「ちょっ!?、そんな・・・」
  昨日、同棲することを二人で決めたばかりだ。
  私は楽しみにしていたのに、あんまりだ。
  バカー!!
  私は、彼の部屋のものをありったけ投げつけて、あげく部屋を飛び出したのだった。

〇住宅街
  自宅までの帰路、色々と昔を思い出しながら、私は歩いていた。
  初めてのバイトで本屋のレジにいたとき、彼はお客としてやってきた。
  その時、お釣りをうっかり落としてしまった私に、とても優しい笑顔で彼がお金を拾ってくれた
  我ながら、とてもドラマチックな出会いだったと思う。
  それが今や、こんなことになってしまうなんて。

〇住宅地の坂道
  たしかに私は何でもほったらかしにしてしまうところがあるけれど、彼だって、すこし細かすぎる。
  なにも、同棲する計画までなしにすることないじゃない。
  涙を拭こうとして鞄に手を入れた時、さわり慣れない何かが入っているのを感じた。
  小さな小銭入れ、彼のだ。
  ああ、さっき、部屋であたりかまわず投げまくったときに、入ってしまったのだろう。
  親しき中にも礼儀あり、例え1円でも中にお金が入っていたら、私は泥棒じゃないか、一応開けて中を確認してみた。
  すると、数枚の小銭と一緒に、古いレシートが1枚入っていた。
私「(なによ、自分だってこんなゴミ捨てないで、大事に持ってんじゃない)」
  レシートはどこかの本屋のものだった。
  彼の読書好きは昔から変わらない。
私「(まさか、私と出会った時みたいに本屋で気になる女性ができたんじゃないよね)」
  そう考えると無性に怒りが湧いてきて、私はその古びて黄色くなったレシートを丸め、電柱めがけて投げ捨ててやった。

〇マンションのエントランス
  自宅のマンションに付くと、入り口で彼が私の帰りを待っていた。
  どうやら追いかけてきてくれたようだ。
彼氏「悪かった。少し言い過ぎたよ」
  正直に言うと、すごく嬉しかったけど、私は彼に確かめなければならないことが一つあった。
私「これ、私の鞄に入ってた。返すね」
  小銭入れを差し出すと、彼が珍しく慌てたそぶりを見せたのを私は見逃さなかった。
彼氏「お前、中見た?」
  心なしか顔を紅潮させて、彼は聞いた。
私「なんなの、あの汚いレシート。もしかして、また本屋さんで良い人でも見つけた?」
  自分でも冷たい言い方だと思う
  でも「同棲はやめ」とまで言われて、私も腹が立っていたのだ。
  ましてや新しい女の影でも見えたなら、冷静でいろと言う方が無理な話だ。
彼氏「ばか、お前の本屋だろが!あのレシートは」
私「え!?」
彼氏「文天堂書店だよ。初めてお前が本を売ってくれた時のレシートだ」
私「うそ・・でしょ? そんなのまだ大事に持ってたの」
  思いもかけない彼の言葉に、涙が溢れかえった。
私「私、捨てちゃったよ~」
  私はとんでもない勘違いをして、勝手に怒って大切なものを捨ててしまった。
  あの電柱に戻らないと。
私「きっとまだあるはずだ」
  そう思って、走り出そうとした瞬間、彼は私の手を掴んだ。
  そして、そっと後ろから抱きしめてくれた。
彼氏「レシートはもういいよ。お前がいてくれればいい。 これからは一緒に住んでくれるんだろ?」
  私はずっとこのままでいたくて、少しだけ返事するのを遅らせた・・・。

〇女の子の一人部屋
  翌朝、彼から電話があった。
  「おい、洗面所にスウェットが脱ぎっぱなしだったぞ!ハンガーにかけるくらいしろよ」
私「ごめ~ん」
  私にも、自分で片付けたい気持ちはあるのだ。
  でも最近、彼に口うるさく言われることが嬉しくなってしまった自分がいる。
  それに今、私は忙しい。
  今日中に引っ越しの準備を終わらせないと・・・。

コメント

  • 偏見ですが、片付けは男女のイメージが反対でした。今や、もう、男女共に片づけない、を過ぎて、こういうことなんですね、もう少しすると、1周回るのでしょうか。炭酸のようなスカッとした読後感に感謝、

  • 途中の展開に少しハラハラとさせられましたが、最後は無事甘々になって良かったです!
    二人が幸せな生活を送れることを心より願っています!
    素敵な作品ありがとうございました!

  • 片付けない女って、どんなお話なんだろうと思ってましたが、こういった意味でしたか!
    いいですね。甘くて、甘やかされるお話好きです。
    ずっと幸せでいて欲しい二人です!

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