センチメートル

ネコ吉

センチメートル(脚本)

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センチメートル
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〇古い大学
  大学生になってそろそろ1年
  いつもと変わらない学舎の姿。少し古ぼけたその茶色い建物は、門を開けて多くの若者を迎え入れている
「きぃーりこッ!」
藍那「おはー」
  藍那か、おはよう。
藍那「なに、全然嬉しそうじゃなくない?」
  藍那は仲良くしている友達だ。ただ私とは正反対で明るくてみんなと仲良しでモテる女子である
藍那「ねー霧子聞いてよー」
  来たな
  私は心をぐっ構える。最近藍那は彼氏が出来たらしく愚痴という名の惚気を私にしてくるのだ
  話しを聞くのはいい。でも正直朝からはキツい
  と、私が視線の先にちょうどいい人の姿が見えた
  春風くん、おはよう!
春風「えっ、あっ、おっ、おはよ」
  私の視線の先にいたちょうどいい人は春風くんだった
  私は今藍那の話から逃げたい。だからごめん春風くん!
  私は藍那を振り切り春風くんの元へ走り寄る
春風「えっ、あのっ、どっ、どうしたの磯山さん?」
  春風くん、お願い話合わせて・・・!
春風「えっと、よくわからないけどわかった・・・!」
藍那「おはよー!春風くん!」
春風「おはよう。瀬利沢さん」
藍那「ちょっと霧子ー。なんで逃げるのー」
  逃げてない逃げてない!
  私ほら、春風くんと一緒の選択科目でしょ。だから一緒に行こうって約束してて、ね!
  私は満面の笑みを浮かべ春風くんを見た
  伝われ私の思い!!
春風「えっ、あっ、そうなんだ。約束してたんだー!」
藍那「あっ、そうなんだ」
  そうそう、そうなの!藍那は選択別でしょ?
  話なら後で聞くから!じゃあそういう事で!
  私は春風くんの腕を掴み、引き摺るようにして歩いてこの場を後にした

〇学食
  春風くん、朝はありがとう。助かったー
  昼休み。朝のお礼と言って学食に呼び出して、私は春風くんと2人でテーブルを挟んで座っていた
春風「あははっ、なんだかわからなかったけど磯山さんの力になれたなら嬉しいよ」
  うぅ、優しい。お礼にお姉さんがご飯食べさせてあげるからね
春風「お姉さんって磯山さん僕と同い年でしょ。それに悪いからいいよ」
  それじゃ私の気が済まないよ。なんかお礼させて
春風「・・・」
春風「じゃ、じゃあさ!」
春風「今度僕と映画観に行かない?」
  えっ?
  私は春風くんの急な話に目を丸くする
春風「あっ、その、嫌だったかな。僕と一緒には・・・」
  ああっ、ごめん!そうじゃないよ!急だったから驚いただけ!
  むしろ私でいいなら全然大丈夫だよ
春風「えっ、ほんと!?」
春風「やっ、やった・・・」
春風「あっ、いや、じゃあそれで観たい映画なんだけど・・・」
  春風くんはそう言って私にスマホの画面を見せる。そこには私も気になっていた映画の公式サイトが表示されていた
  あ、それ私も観たかった奴だ
春風「ほんと?よかったー。じゃあさ・・・」
  私と春風くんは話しを進め、週末に映画を観に行く事になった

〇渋谷駅前
  ーー週末。人の多い駅前で待ち合わせ。時間より少し早く着いた私は春風くんを待つ
  そういえば、春風くんと学校以外で会うのは初めてだ
  そう思いながら春風くんの顔を思い浮かべるる
春風「お待たせ」
  わっ!?
春風「えっ、あっ、ごめん。驚かせた?」
  大丈夫。春風くんの事考えてたら急に現れたから・・・
春風「ええっ、僕のこと考えて!」
  うん、学校以外では初だな〜って
春風「な、なんだ。そういう事か。勘違いしそうになった・・・」
  勘違い?
春風「あっ、いや!こっちの話!それよりほら、映画に行こう」
  そうだね。いやー楽しみだ。シン・メガサメ!
春風「磯山さんが興味あってよかったよ。断られると思ってたから」
  あはは、確かに女子を誘うチョイスじゃないかもねー
春風「うっ、やっぱりそうだよね・・・」
  でも私は大丈夫!こういうの好きだし!
春風「ありがとう」
  どーいたしまして。じゃあいこー!

〇黒
  メガサメ!!

〇映画館の入場口
春風「はぁー、メガサメ面白かった!」
  今日は誘ってくれてありがとね
春風「こちらこそありがとう」
春風「磯山さんまだ時間ある?」
  うん大丈夫だよ
春風「じゃあよかったら少し歩かない?」
  いいね。少しブラブラしようか

〇公園のベンチ
  私と春風くんはたわいもない話をしながらどれくらい歩いたのだろうか。気づけば公園へとたどり着いていた
春風「歩かせてごめんね。ちょっと休もうか」
  うん。そうしようか
  私たちはベンチに腰を下ろして座る。2人の間に出来た隙間から少し冷たい風が吹いた
  うー、やっぱり外は寒いね
春風「寒い中連れ回しちゃってごめんね」
  全然!春風くんと話してるの楽しかったよ
春風「僕も磯山さんとたくさん話が出来て楽しかったよ」
  あはは、なんかデートしてるみたいだね
春風「え、あ・・・」
  ちょ、春風くんここはツッコむ所でしょー
春風「僕はデートだと思ってたよ」
  え・・・!
春風「でもそうか、磯山さんはそう思ってなかったんだね」
  あ、う、その、ごめん・・・
春風「磯山さんが謝る事じゃないよ。僕がちゃんとそう言わなかったのが悪いんだ」
  そう言った春風くんと目があった
  真剣な春風くんの眼差しに心臓がドキリと驚いた
春風「磯山さん」
  は、はい!
春風「今度僕とデートしてください!」
  ・・・うん
春風「ホント!?」
  うん
春風「やっ、やった!」
  ただ私が頷いただけで子供みたいに喜ぶ春風くん
  授業中の席の距離。学食での席の距離。映画館での席の距離。そして今座っているベンチでの距離
  これ以上春風くんと私の距離が近づいたらどうなるんだろう
  と、2人の間に出来た隙間から風が吹いた
  さっきは冷たいと思った風を今は不思議と冷たいとは思わなかった

コメント

  • 春風くんという名のごとく、まるで暖かい風が包んでくれるようなお話でした。台詞が優しくて、とても好きです。素敵な物語ありがとうございました!

  • テンポ良く、楽しく読ませていただきました!
    個人的に映画のシートが大好きです。
    せーのっ、メガサメ!!

  • 最初は彼女の彼に対する恋愛感情がハッキリとしませんでしたが、二人の距離が段々と近づいてカップル成立となるストーリーが分かりやすくスッキリと読めました。

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