ホラーコーディネーター

赤井景

エピソード18 幽々舎復讐篇①(脚本)

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赤井景

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〇旅館の和室
男性芸人「・・・でまあ、その夜ね。案の定、金縛り。 うわーきちゃったなー、と思って」
男性芸人「そしたらトン、トンって、近づいてくるのよ、足音が」
男性芸人「うわうわうわうわ、やめてよって思ったら、今度は大きい音が──」
  ドンッ!
女性タレントA「きゃああああっ! なになになになにぃ、なんなの、もーうっ」
男性芸人「ちょっとちょっと、スタッフさーん、大道具、倒さんといてー」

〇古めかしい和室
由宇勇「ちっ、ヘボ芸人め。下手な小芝居のせいで緊迫感が欠片もねぇじゃねぇか」
  つい悪態をついてしまう。
  こんなことで俺の『作品』を台無しにされてはたまったものではない。
  幽々舎に『表の』仕事が入ったのは、久しぶりのことだった。
  海外資本の動画配信サービスが、日本国内向けのオリジナルコンテンツを作りたいとかで、うちにオファーを出してきたのだ。
  内容としては、怪談モノのバラエティとでもいうべきか。
  「霊感がある」というタレントを集め、各々に怪談を語ってもらう。しかし、収録の途中でどうやら本当に怪奇現象が起こり始めたらしく──というものだ。
  当然だが、怪奇現象はこちらの仕込みだ。
  ただしこのことは、仕切り役の男性芸人以外には教えておらず、女性タレントたちへのドッキリも兼ねていたりする。
由宇勇「そろそろあの余裕顔してるヘボ芸人もビビらせてやるとするか。打ち合わせにないホラーをかましてな」
奥根久志「由宇さん、悪い顔してるなぁ」
由宇勇「うるせぇ。やるからには徹底してビビらせないでどうする。おい、久志、華。打ち合わせ通り、配置につけ」
奥根久志「やれやれ、僕は音声なのに」
出水華「っていうか今回、連れてきたスタッフが少なすぎじゃない?」
出水華「今の物音も、当麻さんがやったのよね? あんな雑用を押し付けるなんて・・・」
由宇勇「しょうがねぇだろ、おやっさんは貰い事故で入院中だし、他の連中は連絡が取れねぇんだから」
出水華「取材旅行中の礼香さんはさておき、壬継氏は一週間の無断欠勤だもんなぁ・・・電話にもぜーんぜん出ないし」
出水華「おおかた、みんなの変人ぶりに嫌気がさして逃げたんじゃない?」
筑紫鏡也「それか、『あのこと』に気づいて・・・」
出水華「なによ、あのことって」
由宇勇「おい、仕事中だぞ。 無駄口叩いてないで早く行け」
出水華「はいはい、わかったわよ」
由宇勇「おい鏡也。なに口を滑らせてるんだ。あいつらにまで『あのこと』がばれてもいいのか?」
筑紫鏡也「でも由宇さん! 八代くんがいなくなったのって、絶対に妹さんの件が原因じゃないですか!」
筑紫鏡也「きっと、八代くんは、妹さんに俺たちがやったことを知ったんです。それで、それで!」
由宇勇「声が大きい。 華たちやタレントどもに聞こえたらどうする」
由宇勇「いいか、鏡也。お前はビビりすぎなんだ。大体あれは、不幸な事故だった。そうだろう?」
筑紫鏡也「でも・・・」
  ──と。

〇古めかしい和室
  突然、照明が消えた。
  モニターの中で、タレントたちが本気の悲鳴を上げている。
由宇勇「なんだ? 停電か? ・・・いや、モニターは点いてるからそれはないな」
  華か、奥根かが誤って照明を消してしまったのだろうか?
筑紫鏡也「ゆ、由宇さん! 見てください!」
  わめきながら鏡夜が指差したのは、女性タレントの中の一人だった。
  「現役女子高生」というところくらいしかウリが無いような、なんでタレントになれたのかわからない地味な少女・・・のはずだったのだが。
  その顔を見て、思わず俺も息を飲む。
筑紫鏡也「あの子だ! 由宇さん、あの子ですよ!」
筑紫鏡也「あれは、神峰みのりです!」
筑紫鏡也「どうして・・・? こんなこと、ありえない・・・」
  そう、あり得ない。
  神峰みのりは死んだ。そのはずなのだ。
由宇勇「・・・なるほどな」
筑紫鏡也「蘇ったんだ。僕らに復讐するために、蘇ってきたんだ!」
由宇勇「阿呆、そんなことあるわけないだろ」
筑紫鏡也「でも、現にあそこには・・・」
由宇勇「いいから落ち着け。素人ならいざしらず、俺たちが騙されてどうする」
筑紫鏡也「騙・・・す・・・?」
由宇勇「こいつはな、壬継の『仕込み』なんだ。壬継が俺たちに意趣返ししようと思って、見よう見まねで『ホラーコーディネーター』をやってるだけなのさ」
由宇勇「まあ多分、礼香あたりの筋書きなんだろうよ」
  おそらく久志や華も、壬継に協力しているのだろう。二人がこの場を離れたあとに怪現象が起こったのがその証拠だ。
  当然、あの女子高生タレントも仕込みに違いない。顔立ちのよく似た子を見繕い、華のメイクでそっくりに仕立て上げたのだ。

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コメント

  • いよいよ最終章、楽しみにしてます

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