ホラーコーディネーター

赤井景

エピソード16 真相篇②(脚本)

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赤井景

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〇葬儀場
八代壬継「・・・・・・」
  妹のみのりが、死んだ。
  両親の離婚によって離れ離れになったこともあり、みのりとはここ数年は数えるほどしか会えていない。
  それでもSNSアプリで頻繁にメッセージのやり取りはしていたし、時折電話で話したりもした。
  離れ離れではあっても、俺にとってみのりは、掛け替えのないたったひとりの妹だった。

〇葬儀場
弔問客「かわいそうに・・・土砂崩れに巻き込まれてたんですって?」
弔問客「ええそう。でもよかったのよ. だって、半年もの間、行方不明だったのよ?」
弔問客「そうねぇ・・・死んだかどうかわからないままより、ずっといいわね」

〇葬儀場
  なにが「ずっといい」だ。
  妹は死んだんだぞ!?
  ──怒りをぐっとこらえる。あの人たちだって、悪気があってそう言っているわけではない。それくらいはわかる。
  ただ・・・妹の死を受け入れられない。
  要するにそういうことなのだろう。
母親「・・・どうして」
母親「どうしてこんなことに・・・」
  俺以上に、母さんの方がこの現実を受け入れられていないようだった。
  無理もない。離婚後、ずっとふたりきりで暮らしてきたのだから。
母親「あの子、いつもの撮影と変わらないって、言ってたのに。すぐ帰るって、言ってたのに・・・」
  みのりは高校生活を送るかたわら、ファッション誌などでモデルを務めていた。
  そんなみのりに信州での写真集撮影の仕事が舞い込んだのは、今から半年前のこと。
  夏休みを利用しての、泊りがけの撮影になるとのことだった。
  旅行気分も味わえると、みのりはこの撮影を心底楽しみにしていた。そのことを何度もメッセージで俺に送ってきていた。
  なのに・・・その撮影から、みのりが帰ってくることはなかった。
  どういうわけか妹は悪天候の夜に山に入り、そしてそのまま消息を絶ってしまったのだ。
  地元の消防団なども動いてくれたが、なんの成果も得られないまま捜索は打ち切られた。
  それから半年が過ぎたつい先日。たまたま雨で流された土砂の下から、妹の遺体が発見されることとなった。
母親「私が行かせてしまったから、みのりがこんな目に遭ってしまったんだわ」
八代壬継「母さん、違うよ」
母親「違わないわ! みのりが帰ってこないのは、私のせいないのよ!」
  母さんはこの調子で、ずっと自分を責めていた。
  みのりの死を『誰かのせい』にしたかったのだ。たとえその『誰か』が、自分自身だったとしても。
  その気持ちは、俺にもわかる。みのりの死の責任は俺にあるんじゃないか。そう思えてしかたがないから。
  SNSアプリに送られてきた、妹からの最後のメッセージ。そこにはただ一言だけ、こうあった。
  『たすけて』
  最後の瞬間、妹は俺に助けを求めていた。それなのに俺は、それに気づいてすらいなかった。
  学生演劇サークルのコンパで、酔いつぶれていたせいで。
  もし俺が、気づけていれば。
  俺が気づけなかったから、妹は命を落としてしまったのではないか──
  その思いが、ぬぐえない。
  そしてそれは、おそらく一生、消えることが無いのだろう。

〇葬儀場
弔問客「・・・・・・」

〇レトロ喫茶
八代壬継「保科亜沙美さんが教えてくれました。 あなたは、みのりと仲がよかったそうですね」
八代壬継「それに、妹の葬儀にもいた。今とずいぶんと印象が違いますから、これまで気づけなかったですけど」
八代壬継「なんで教えてくれなかったんですか。 ──礼香さん」
志摩礼香「・・・・・・」
八代壬継「あなたは、妹が参加することになった映画の関係者だったんですよね?」
八代壬継「奥根さんが教えてくれました。『エバーナイト/ネバーデイ』には原作小説があるって」
八代壬継「原作のタイトルは『誰彼非、彼誰非(たそがれにあらず、かわたれにあらず)』っていうみたいですが、その原作者のお弟子さんだって」
志摩礼香「・・・違うわ」

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