ホラーコーディネーター

赤井景

エピソード17 真相篇③(脚本)

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赤井景

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〇古民家の居間
志摩礼香「・・・へえ、お兄さんの影響で、演技に興味をもったんだ」
神峰みのり「そうなんです。お兄ちゃん、大学の劇団でけっこういい役もらってて。OBのプロの役者さんにも、目をかけてもらってるみたいなんです」
神峰みのり「実際、舞台の上のお兄ちゃんって、すっごく存在感あるんですよ!」
神峰みのり「それ見てるうちに、私も演技に興味を持ったんです」
志摩礼香「それで、エキストラの話にも積極的だったわけね」
  私が神峰みのりと出会ったのは、信州の山奥にある、古民家風の旅館でのことだった。
  彼女は写真集撮影でやってきていた高校生モデル。私は映画撮影に同行している、原作サイドの関係者。
  単に偶然居合わせただけなのだが、おりしもやってきた台風とそれに続く長雨が私たちを近づけることになった。
  悪天候のせいで撮影が進まないのは、写真集も映画も同じこと。
  数日の間、宿に足止めされている間になんども顔を合わせることとなり、すっかり打ち解けたというわけだ。
  これは私とみのりに限った話ではなく、双方の撮影スタッフも同様だった。
  悪天候の影響でエキストラの手配に困ることになった映画スタッフが「これも何かの縁だし」と写真集撮影にやってきたモデルたちに『映画に出てみないか』とオファー。
  モデルたちも(多くは興味本位で)参加を快諾した。
  悪天候の合間を縫い、撮影は進んだ。
  元々のスケジュールと比べれば、遅々としたものではあるが。
志摩礼香「みのりの演技、評判いいわよ。 監督も気に入ってるみたい」
神峰みのり「本当ですか? やった、うれしいな」
志摩礼香「もし希望するのであれば、名前のある役をもらうこともできるけど、どうする?」
神峰みのり「え、いいんですか?」
志摩礼香「ええ。 私が言えば、監督もきっと乗ってくると思う」
  表向き、「原作者の関係者」ということになっているが、実のところ今回の原作を描いたのは私だ。
  そのことは原作サイドはもちろん、映画サイドでも監督や一部のスタッフも把握している。
志摩礼香「まあ、ホラー映画で名前のある役なんだから、要するにひどい目に遭う役なんだけどね」
神峰みのり「あはは、そうですよね! どんな役なんですか?」
  みのりにやってもらおうと思ったのは、「昭和初期の寒村でおきた連続殺人事件」で犠牲となる少女の役だった。
  この連続殺人事件の犠牲者の怨念が、現代で数々の怪異現象の原因だった、というのが原作のおおまかなストーリーだ。
志摩礼香「殺人鬼に殺される最後のひとりでね。山の中を追いかけ回されることになるから、大変だと思うけど」
神峰みのり「でもそれ、たくさん映れるってことですよね? やってみたいです!」
志摩礼香「じゃあ監督に言っておくわね」
神峰みのり「ふふっ、やった。 あとでお兄ちゃんに自慢しちゃおっと」
志摩礼香「ああでも、まだ発表前だから、映画のタイトルはオフレコでお願いね」
神峰みのり「はい、わかってます! 映画で役もらえたよーって言えれば充分ですし」
  私の提案に監督は二つ返事でOKを出し、晴れてみのりは少女の役を担当することになった。
  みのりは本当にうれしそうで、それを見ている私の方までなんだか幸せな心持になったものだ。
  だが、今思えばこれが間違いだった。
  この撮影に参加したばかりに、みのりは命を落とすことになったのだから。

〇レトロ喫茶
八代壬継「いったい、あの撮影でなにがあったんです。教えてください、礼香さん!」
志摩礼香「・・・わからない」
八代壬継「そんなはずないでしょう。 礼香さん、撮影現場にいたんですよね?」
志摩礼香「それが、いなかったのよ」
志摩礼香「あの撮影は本当にトラブル続きでね。悪天候や機材の故障なんかのせいで、スケジュールはずるずると遅延していったの」
志摩礼香「そうしているうちに、次のロケ地での撮影の期日が来てしまった」
志摩礼香「主要な俳優陣のスケジュールの関係上、そちらを優先せざるをえなくてね。監督や私は、そっちに行かざるをえなかったの」
志摩礼香「そして信州での撮影の続きは、外注スタッフに任せることになった」
志摩礼香「ほかのモデルたちは、写真集の撮影が終わった時点で引き揚げていたんだけどね」
志摩礼香「みのりは役をもらっていたから、残らざるを得なかった」
志摩礼香「そして・・・行方不明になった。 外注スタッフが宿に到着する前にね」
八代壬継「え? ちょ、ちょっと待ってください。みのりを死に追いやったのは幽々舎の人たちだって、礼香さん言ったじゃないですか!」
八代壬継「その外注スタッフというのが、幽々舎だったんじゃないんですか!?」
志摩礼香「それは間違いない。『由宇という、腕のいい映像作家に任せた』って、監督から直接聞いたしね」
志摩礼香「でも、『外注スタッフが到着したのは、みのりちゃんがいなくなった翌々日だった』『元からその予定だった』」
志摩礼香「──そう宿の人が証言しているの」
八代壬継「じゃあ、みのりの失踪と、幽々舎は関係がない・・・?」
志摩礼香「そう警察は判断した。そもそもみのりがいないと捜索願いを出したのは、由宇たちだったようだし」

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コメント

  • 想像よりもさらに展開ありそうで楽しみにしてます

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