ホラーコーディネーター

赤井景

エピソード13 星那アリス篇②(脚本)

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〇湖畔の自然公園
星那アリス「ちょっとバイト、ミネラルウォーターは軟水にしてって言ったわよね? これ硬水なんだけど」
筑紫鏡也「でもコンビニにはそれしか・・・」
星那アリス「知らないわよそんなの。とにかくこれじゃ飲めない。さっさと買い直してきなさいよ、ほらダッシュ!」

〇湖畔の自然公園
当麻朱人「・・・いやはや。 聞きしに勝る、って感じだねぇ」
八代壬継「当麻さんはまだいいですよ。自分とか鏡也さんは、顎で使われてますからね」
  今回の仕掛けに当たって、幽々舎の面々のうち何名かは『撮影のスタッフ』として現場に潜り込んでいた。
  俺と鏡也さんはバイトの雑用係、当麻さんはメイク、礼香さんはカメラマンのアシスタントとして。
  バイトの俺と鏡也さんを、星那アリスは「なにをやってもいい相手」とみなしたようだ。
  ことあるごとにいちゃもんやら無理難題を吹っかけてくる。
当麻朱人「あれでよく干されないね」
志摩礼香「事務所の社長のお気に入りなんですって」
  社長の愛人なのではないかという噂もあったが、その出どころはアリスを嫌う人物からだった。やっかみめいた誹謗中傷の可能性は捨てきれない。
  とはいえ、目上の人間にはとことん媚を売るのも事実。
  上昇志向が強く、成り上がるためであれば女の武器を使うことにも一切の躊躇がないようだった。
当麻朱人「案外、素直な子かもしれないよ」
八代壬継「それ、当麻さんに対してだけじゃないですか?」
  星那アリスは、当麻さんに対してわかりやすく色目を使っていた。目上だから、というよりはイケメンだからだろう。
当麻朱人「でも、怪談話にとてもいい反応をしてくれたじゃないか」
  ホラーを仕掛ける前段階として、俺たちはまず「殺人鬼の都市伝説」を星那アリスの耳に入れた。
  某有名ホラー作品に登場していた、湖畔のホッケーマスク殺人鬼──その殺人鬼に憧れるあまり、自分でその殺人鬼を真似しはじめた異常者がいた。
  その殺人鬼は十数人を殺害した挙句、ボートを出して湖に逃亡。警察のボートがそれを包囲し、数十発もの銃撃を食らわせた。
  かくして殺人鬼は殺され、湖底に沈んだ・・・はずなのだが、どういうわけか死体が見つからない。
  もしかして、今も殺人鬼は生きているのでは──そんな話だ。
八代壬継「まあ、確かにあの話を聞かせたあと、彼女からヒステリックに当たり散らされましたけど」
当麻朱人「それってつまり、あの荒唐無稽な話を真に受けたってことだろう?」
志摩礼香「荒唐無稽とは失礼ね・・・と言いたいところだけど、今回に関しては否定できないわ」
  当然だが、殺人鬼云々というのは礼香さんが作った偽の都市伝説だ。
  一応、信ぴょう性を増すために、「本当に殺人鬼がいた」記事を載せた偽ニュースサイトを用意していたのだが、見せるまでもなく星那アリスは信じ込んだようである。
当麻朱人「ま、僕らにとっては、いいお客さんだよね。 本気で怖がってくれそうだし」
八代壬継「そうなんですかねぇ・・・」
当麻朱人「そうだよ。 だからたっぷりと愉しんでもらわないとね」
当麻朱人「極上の恐怖ってやつをさ」
  なんのてらいもなく、当麻さんは言う。
  結局、見た目はまともそうだが、結局のところこの人も由宇さんと同類だということなのだろう・・・。

〇怪しいロッジ
星那アリス「ところであんたさ」
  撮影3日目。そろそろ「殺人鬼が本当に要る」ことをほのめかそうとしていた矢先、星那アリスが俺に声をかけてきた。
星那アリス「みのりって妹がいるでしょ」
八代壬継「っ!?」
  なぜ、それを。
  なぜそれを、この女が知っている!?
星那アリス「神峰(かみね)みのりって言ったっけ? モデルのくせに垢ぬけないあの地味子。そのお兄ちゃんとやらでしょ?」
星那アリス「昔さー、あの子に携帯の待ち受け画像見させられたんだよね」
星那アリス「てっきりカレシの写真かと思ったら、離ればなれになったお兄ちゃん、ですって。ブラコンかよキッモって思ったわよ」
八代壬継「・・・みのりと会ったことがあるんですか」
星那アリス「事務所は違ったけど、合同写真集でね。 信州の」
八代壬継「あの撮影、あなたもいたんですか!?」
星那アリス「そ、そうだけど。 てかなにその食いつき。キモいんだけど」
八代壬継「教えてください。 あのときのみのりの様子を・・・」
八代壬継「・・・あなたも、映画の撮影に参加したんですよね!?」
星那アリス「・・・知らない」
八代壬継「知らないはずないでしょう。あの場にいたモデルみんなでやることになったって、みのりは言ってたんです」
八代壬継「お願いします! なんでもいいから教えてください!」
星那アリス「うるさいわね。知らない!」
八代壬継「あ、待ってください!」

〇怪しいロッジ

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