人ならざる者、神のうち

坂井とーが

2 残酷な子供たち(脚本)

人ならざる者、神のうち

坂井とーが

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〇テーブル席
  就職も決まった大学4年生の頃、私は友人とカフェに行った。
  彼女は私の霊感体質を知っても仲良くしてくれる、貴重な友人だ。
坂井とーが「あ。 あの人、人間じゃない」
高橋夏蓮「あの人って、水色の服の女の人? 普通の人間に見えるけど」
坂井とーが「あれは、自分が人間じゃないことに気づいてないんだと思う」
坂井とーが「ときどき、そういうのが紛れ込んでる」
高橋夏蓮「まわりの人は気づかないわけ? 友達とかさ」
坂井とーが「わからないんじゃないかな。 人ならざる者が人間の家族の中にいることもあるし」
高橋夏蓮「さすがに気づくでしょ!?」
坂井とーが「それの正体に気づいてはいけないって、周りの人間も薄々感じてるのかも」
高橋夏蓮「どういうこと?」
坂井とーが「うーん。経験則だけど、人ならざる者の存在を知って気が狂っちゃう人がときどきいる気がする」
坂井とーが「気づかないから正気でいられるのかも」
高橋夏蓮「怖っ。とーがは大丈夫なの?」
坂井とーが「ううん。よく被害に遭う」
高橋夏蓮「さらっと言わないでよ!」
高橋夏蓮「・・・で、その経験則ってのは?」
坂井とーが「小学校のとき、クラスメイトが何人か発狂したんだよね」
坂井とーが「たぶん、見てはいけないものを見てしまったせいで──」

〇教室
  都会に転校した私は、なかなか周りに馴染めなかった
  元々、人見知りだったせいもある。
  田舎からやってきた異質な人間に、子供たちのコミュニティは冷たかった。
坂井とーが「あれ? 筆箱がない・・・」
「・・・クスクス」
坂井とーが「・・・そういうことか」
坂井とーが(なんで私、みんなと違うんだろう・・・)

〇学校の校舎
  学校に慣れても友達ができなかった私に、ある日声をかけてきた子たちがいた。
クラスメイト「とーがちゃん、今日遊ぼうよ」
坂井とーが「え、でも・・・」
クラスメイト「いいからさ。あたしたちの秘密の場所があるの」
「クスクス・・・」
  嫌な感じがしなかったわけではない。
  でも、私は初めて遊びに誘われたことで、少し浮かれていた。
坂井とーが「うん!」
「クスクス・・・」

〇森の中の沼
坂井とーが「ここって、沼・・・?」
クラスメイト「底なし沼だよ。 とーがちゃんも、のぞいてみて」
  私はそろりと沼に近づいた。
「クスクス・・・」
坂井とーが「きゃっ」
  私は背中を押されて、頭から沼に突っ込んでしまった。
「きゃははは」
  背後で笑い声が聞こえる
坂井とーが「「遊ぼう」って言ったの、嘘だったんだ・・・」
  私が虚しい気持ちになったときだった。
坂井とーが「あ──」

〇森の中の沼
  沼の底から誰かが足を引っ張ってくる。
坂井とーが「きゃあああああ!!!」
クラスメイト「何!?」
坂井とーが「やめて! 離して!」
クラスメイト「は? とーが、なんで溺れてんのよ?」
クラスメイト「どうせ冗談だろ。この沼、腰までしかないし」
坂井とーが「いやっ! 助けて・・・たすけ・・・・・・」
クラスメイト「ねぇ、ヤバくない!?」
クラスメイト「おい、とーが、出て来いよ! 騙してごめんって!」
  ・・・・・・
クラスメイト「ヤバイ! 引き上げろっ!」
クラスメイト「急いで!」

〇森の中の沼
坂井とーが「・・・・・・」
クラスメイト「・・・息、してない」
クラスメイト「死んだの?」
クラスメイト「ごめん、とーが。ごめん・・・」
クラスメイト「そんなつもりじゃなかったのに・・・」
クラスメイト「どうする? バレたらヤバイよな・・・」
クラスメイト「・・・あたしたち、ここにいなかったことにしない?」
クラスメイト「とーがはひとりで沼を見に来て、勝手に溺れたの。いいわね?」
クラスメイト「・・・わかった」
クラスメイト「死体、どうしよう?」
クラスメイト「沈めておきましょ」
クラスメイト「あ・・・。ランドセルに石を詰めようぜ。そうすれば死体が浮いてこないって、テレビでやってた」
クラスメイト「そうしましょ。 みんなでやるのよ。みんな、共犯だからね」
クラスメイト「きもちわるいな・・・」
クラスメイト「ううっ、ひっく・・・ ごめんね・・・」
クラスメイト「そろそろ大丈夫でしょ。 沈めるわよ」
クラスメイト「さよなら、とーが──」

〇教室
クラスメイト「みんな、誰にも言ってないわよね?」
クラスメイト「当たり前だろ」
クラスメイト「先生から何かお話があるのかな。坂井さんが行方不明になりましたって」
クラスメイト「絶対に顔色を変えちゃダメだからね!」
  ガラッ──
坂井とーが「あ・・・」
「え・・・・・・!?」
「きゃあああああ!」
クラスメイト「わあああああ!」
坂井とーが「え!? な、なに!?」
クラスメイト「ごめんなさい! ごめんなさい!」
坂井とーが「どうしたの・・・?」
クラスメイト「いやだ! お願い殺さないで!」
坂井とーが「・・・・・・?」
  彼女たちの悲鳴を聞きつけた先生が、教室に飛んできた。
  叫び続ける3人の子どもたちは、すぐに保健室に連れていかれた
坂井とーが(どうしたんだろう・・・)
  彼女たちが教室に戻ってくることは、二度となかった。
  聞いた話によると、2人は転校し、1人は不登校になってしまったのだという。
坂井とーが(きのうのアレを見たせいかな・・・)
坂井とーが(『出る』沼になんか、行くべきじゃなかったんだ──)

〇テーブル席
坂井とーが「――というわけで、一緒に沼に行った子たちは、無事じゃ済まなかったんだよね」
坂井とーが「それにしても悲しかったなぁ。 やっと沼から抜け出したら、誰もいなくなってて」
坂井とーが「私が溺れ死んでたらどうするつもりだったんだろう」
高橋夏蓮「・・・・・・」
高橋夏蓮「もう一度聞くけど、どうしてランドセルに石が詰まってたのか、とーがはわからないんだよね?」
坂井とーが「うん、いつの間にか入ってた」
高橋夏蓮「人じゃない者が、そんな手の込んだことをするの?」
坂井とーが「さぁ。 狐に化かされたみたいなものなのかも」
坂井とーが「案外、意識が飛んでる間に自分で入れてたりしてね」
高橋夏蓮「だったらいいけど」
高橋夏蓮「あんたもタフだねぇ。 沼に落ちて足を引っ張られた本人だけが無事だなんて」
坂井とーが「ふっふっふ。 昔から災難への耐性だけは高いんだよなぁ」
  真相は闇の中・・・

次のエピソード:3 虫の知らせ

コメント

  • よく死亡する。がシュール感あってジワります🤣不謹慎か(笑)

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