【3期】ゾンビ許嫁暴走事件(脚本)
〇ファンタジーの学園
樺島 ここね(かばしま ここね)「わぁ〜! すっごいお屋敷!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「間違いない、通報があったのはここだ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「まずい、突入するぞ!」
〇城の廊下
樺島 一心(かばしま いっしん)「ゾンビ課です! 大丈夫です・・・」
ゾンビ「う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
樺島 一心(かばしま いっしん)「──ッひ」
〇ファンタジーの学園
〇黒
ゾ ン ビ 許 嫁 暴 走 事 件
〇武骨な扉
ゾンビ「う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
〇城の廊下
樺島 一心(かばしま いっしん)「うーん・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ハッ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「しっかりしてお兄ちゃん!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あのゾンビ、扉を壊そうとしてる!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「早く止めないと・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「よ、よし・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「そこのゾンビ!大人しく──」
???「静まれィ!!」
大蔵(おおくら)家 当主「人の家で何を騒いでおる!誰だ貴様ら」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ゾ、ゾンビ課です!ゾンビが暴れていると通報が」
大蔵(おおくら)家 当主「ゾンビ課だと・・・?誰が来いと言った」
樺島 一心(かばしま いっしん)「危険です!下がってください!」
ゾンビ「ゔぁぁうぁぁ」
大蔵(おおくら)家 当主「下がるのは貴様らの方だ」
大蔵(おおくら)家 当主「こいつは私の息子だ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「え・・・!? し、しかし通報が──」
大蔵(おおくら)家 当主「誰だ! 警察なぞ呼んだのは」
メイド「今日いらしてた庭師の方が──」
大蔵(おおくら)家 当主「そいつはクビだ!二度と当家の門をくぐらせるな」
大蔵(おおくら)家 当主「貴様らも消えろ!」
大蔵(おおくら)家 当主「息子が自分の家で何をしようと、警察の知った事ではなかろう!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「そんなに怒鳴らないでよ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「お話だけでもお聞かせ願えませんか」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ご子息が暴れていた理由に心当たりは?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「それが分からないことには、外に出て暴れてしまう可能性も──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ヒッ!」
〇武骨な扉
ゾンビ「う゛う゛あ〜〜!」
〇城の廊下
大蔵(おおくら)家 当主「貴明!! 貴様も静まらんか!!」
大蔵(おおくら)家 当主「何だというのだ一体・・・これ以上私に面倒をかけるな!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「心当たりがないのか・・・ ここね!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「うん!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あうあうあー?」
ゾンビ「うぅ・・・うぁ゛ー」
樺島 ここね(かばしま ここね)「指輪? 指輪がどうしたの?」
ゾンビ「あ゛ぁぁーーー!! ゔぁー!!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「か、彼は何て?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「「結婚すれば、留学できない」って」
大蔵(おおくら)家 当主「何ッ・・・!?」
大蔵(おおくら)家 当主「そうか、そういう事か──」
大蔵(おおくら)家 当主「やはり──まだ、忘れてはおらんかったのだな・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「勝手に納得してる」
樺島 一心(かばしま いっしん)「事情をお聞かせいただけませんか」
樺島 一心(かばしま いっしん)「お役に立てる事があるかもしれません」
大蔵(おおくら)家 当主「ふむ・・・」
大蔵(おおくら)家 当主「当家の恥ゆえ、あまり言いたくはないのだが・・・致し方あるまい」
〇養護施設の庭
息子の貴明には、幼い頃からの許嫁がおってな
当家の跡取りである貴明と
小金井家の長女が結婚する事で
両家の関係がより揺るぎないものになるというわけだ
〇城の廊下
樺島 ここね(かばしま ここね)「政略結婚ってやつ・・・?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「そんなの本当にあるんだね」
大蔵(おおくら)家 当主「何か言ったか?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「い、いえ!何でも!続きをお願いします!」
大蔵(おおくら)家 当主「フン、なにも無理やりというわけではない」
大蔵(おおくら)家 当主「貴明はこの通り、感情を表に出す方ではないが」
ゾンビ「あうぁ〜」
大蔵(おおくら)家 当主「許嫁の小金井 萌音(こがねい もね)に惚れ込んでおるのは誰の目にも明らかだった」
大蔵(おおくら)家 当主「小金井家の方でも当然、結婚を待ち望んでおってな」
大蔵(おおくら)家 当主「ところが今から3年前、結婚目前になって貴明がゾンビ化してしまった」
大蔵(おおくら)家 当主「当家としては、結婚を進めたところでゾンビに跡を継がせるわけにもいかん」
大蔵(おおくら)家 当主「そこで、貴明が治るまでは結婚を延期する、という事になったのだ」
〇貴族の応接間
ところが今から1ヶ月前──
大蔵(おおくら)家 当主「絵の海外留学──?」
小金井(こがねい)家当主「ええ、もう諦めたと思っておったのですが」
小金井(こがねい)家当主「向こうの巨匠から「今年が最後のチャンスだ」と誘われたとかで」
小金井(こがねい)家当主「今にも家を飛び出しかねない勢いなのです・・・!」
小金井(こがねい)家当主「そこで当家としては、ぜひ貴明さんとの結婚を早急に進めていただきたく──」
大蔵(おおくら)家 当主「う〜む・・・」
〇城の廊下
大蔵(おおくら)家 当主「当家としては、貴明の状態は何も回復しておらぬゆえ、結婚は時期尚早と言いたいが」
大蔵(おおくら)家 当主「許嫁に海外なぞ行かれては、いよいよ目処が立たなくなるのも確か」
大蔵(おおくら)家 当主「どうしたものか、この一月悩んでおったのだが──」
大蔵(おおくら)家 当主「そうか、貴明の奴、あの話を聞いておったのか・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ゾンビの理解力だと、話の詳細を理解したというよりは」
樺島 一心(かばしま いっしん)「その先方のお父様を見て、許嫁のことを思い出したという感じでしょうね」
大蔵(おおくら)家 当主「思い出した、か──なるほどな・・・」
大蔵(おおくら)家 当主「3年前、貴明がゾンビになる直前も、小金井の娘が留学すると言い出してな」
大蔵(おおくら)家 当主「どうすれば留学をやめさせられるか、早急に結婚を進めるべきではないかと」
大蔵(おおくら)家 当主「ここで小金井氏と何度も協議しておったのだ」
大蔵(おおくら)家 当主「確かにあの時にそっくりな状況だ、思い出すのも無理はない──」
ゾンビ「ゔああぁぁぁーーー」
〇武骨な扉
ゾンビ「ゔぁぁぁ〜〜〜」
〇城の廊下
樺島 ここね(かばしま ここね)「また言ってる、「結婚すれば、留学できない」って」
大蔵(おおくら)家 当主「そうか、そんなにも思い詰めて──」
大蔵(おおくら)家 当主「惚れた女が海外に逃げそうなのだ、無理もない」
大蔵(おおくら)家 当主「3年前のあの時も、お前はひどくふさぎ込んでおったな──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「その扉は一体何なんですか?」
大蔵(おおくら)家 当主「当家では、代々付き合いのある名工に結婚指輪を作らせるしきたりでな」
大蔵(おおくら)家 当主「ここは貴明の結婚指輪が保管されている部屋なのだ」
ゾンビ「ゔぁぁぁうぁぁ」
大蔵(おおくら)家 当主「思えば、今まで貴明には父親らしいことを何もしてやれんかったな──」
大蔵(おおくら)家 当主「ここは一肌脱がねばならんか──」
樺島 ここね(かばしま ここね)「勝手な事ばっかり言って」
樺島 ここね(かばしま ここね)「それじゃお嫁さんの気持ちはどうなるの!?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「これ以上エスカレートすると、その許嫁に危害が及ぶ可能性もあるか──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「一度様子を見に行っておいた方が良さそうだ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「あの、その許嫁の方のお宅を教えていただけませんか?」
〇黒
〇立派な洋館
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここが小金井家──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「さっきの大蔵家ほどではないけど、こっちもすごい豪邸だな」
樺島 一心(かばしま いっしん)「こんにちはー、ゾンビ課です!」
小金井(こがねい)家当主「おぉ、待っておりましたぞ!」
小金井(こがねい)家当主「あなた方ですな、娘を説得してくれる警察の方というのは!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「え!? い、いえ、そういうわけでは・・・」
小金井(こがねい)家当主「何を仰います、大蔵氏から連絡がきましたぞ」
小金井(こがねい)家当主「ささっ、すぐに娘を呼びますので、ガツンとお願いしますぞ!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「全然人の話聞いてない」
〇華やかな裏庭
小金井 萌音(こがねい もね)「あの・・・警察の方が私にお話って・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「はい、実は大蔵 貴明さんの事でお話が・・・」
小金井 萌音(こがねい もね)「貴明さんの・・・!?」
〇立派な洋館
〇華やかな裏庭
小金井 萌音(こがねい もね)「そうですか・・・貴明さんが指輪を・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「すごい怖・・・じゃなくて、すごい勢いだったので、念のためお知らせしました」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あのっ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「絵の留学に誘われてるって聞きました」
樺島 ここね(かばしま ここね)「何だかみんな勝手な事ばっかり言ってる」
樺島 ここね(かばしま ここね)「萌音さんはどう思ってるんですか?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「おい、ここね!」
小金井 萌音(こがねい もね)「いえ、いいんです」
小金井 萌音(こがねい もね)「心配してくれてるのね、ありがとう」
小金井 萌音(こがねい もね)「・・・親同士が決めた許嫁だったけど、貴明さんの事は嫌いじゃなかったわ」
〇養護施設の庭
物心ついた頃から一緒だったし、楽しい時間だってたくさんあった
〇華やかな裏庭
小金井 萌音(こがねい もね)「・・・でも、ちょっと何を考えてるのか解らないところがあって」
小金井 萌音(こがねい もね)「いつも家の言いなりで、少し頼りない人だった」
小金井 萌音(こがねい もね)「だから、せめて私は家に頼らず稼げるようにならないといけないと思っていたし」
小金井 萌音(こがねい もね)「3年前、そのチャンスが訪れたあの時だけでも、彼に味方してほしかった」
樺島 ここね(かばしま ここね)「・・・」
〇養護施設の庭
フランスの巨匠が展覧会で私の絵を見て気に入ってくれた、と伝えた時──
大蔵 貴明(おおくら たかあき)「すごいじゃないか! やっぱり萌音の才能は本物だったんだな!」
彼はとても喜んでくれたけど──
留学に誘われた事を告げると、態度が一変したわ
大蔵 貴明(おおくら たかあき)「留学!? 3年も・・・? 本気で言っているの?」
大蔵 貴明(おおくら たかあき)「絵は君の子供の頃からの夢だったから、そりゃあ僕だって応援したいよ」
大蔵 貴明(おおくら たかあき)「でも、状況はわかっているのかい?来年には僕と君は結婚する事になってるんだよ?」
大蔵 貴明(おおくら たかあき)「今留学なんかしたら、困るのは君の家の方だと思うけど──?」
小金井 萌音(こがねい もね)「でも・・・正直、こういう風に家を保つのって、やっぱり健全じゃないと思うの」
小金井 萌音(こがねい もね)「私は自分で家を支えられるようになりたい」
小金井 萌音(こがねい もね)「でも私には絵を描く事しかできないから──これはチャンスなの」
大蔵 貴明(おおくら たかあき)「それはつまり──僕との結婚が無くなってもいい、という事・・・?」
小金井 萌音(こがねい もね)「そ、それは──!」
小金井 萌音(こがねい もね)「そういうつもりでは──ない、けど・・・」
大蔵 貴明(おおくら たかあき)「・・・本気、なんだね」
大蔵 貴明(おおくら たかあき)「──思えば僕は今まで、許嫁という関係に甘えていたのかもしれない」
大蔵 貴明(おおくら たかあき)「何もせず黙って待っているだけで、君は僕のものになると」
小金井 萌音(こがねい もね)「た、貴明さん──?」
その時の貴明さんは、見た事がないほど思い詰めた顔をしていて、怖いくらいでした
大蔵 貴明(おおくら たかあき)「どうやら僕が甘かったようだ」
大蔵 貴明(おおくら たかあき)「──君がそういうつもりなら、僕の方も覚悟を決めないといけないな・・・」
小金井 萌音(こがねい もね)「た、貴明さん──!?」
──それが貴明さんと会った最後になってしまいました
〇華やかな裏庭
小金井 萌音(こがねい もね)「それから数日後、貴明さんがゾンビ化したという知らせがきて」
小金井 萌音(こがねい もね)「私達の結婚は保留という事になって、今に至ります」
小金井 萌音(こがねい もね)「私の留学も、ゾンビになった貴明さんを置いていくなんて世間体が悪いと」
小金井 萌音(こがねい もね)「より遠のいてしまいました──」
樺島 ここね(かばしま ここね)「で、でも!今ならまだ間に合うんでしょう?」
小金井 萌音(こがねい もね)「そうね──だから今、お父様を説得しようと最後の挑戦中なの」
小金井 萌音(こがねい もね)「でもね、正直、半分諦めているの」
小金井 萌音(こがねい もね)「お父様はこの3年間も、貴明さんとの結婚を進めたくてたまらないみたいだったし」
小金井 萌音(こがねい もね)「貴明さんがこのまま回復しなかったとしても、きっと近いうちに結婚する事になるわ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「そんな──!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「萌音さんは本当にそれでいいんですか? 夢だったんでしょ?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「普段のわたしなら、ゾンビと結婚なんてステキ!って思うけど──」
樺島 ここね(かばしま ここね)「でも、これは──これじゃ萌音さんが・・・」
小金井 萌音(こがねい もね)「昔からの取り決めだもの、仕方ないのよ・・・」
小金井 萌音(こがねい もね)「それにね、私も、あんな別れ方をしたまま貴明さんを置いて行くのは」
小金井 萌音(こがねい もね)「やっぱり心のどこかに引っかかってしまうの──」
樺島 ここね(かばしま ここね)「萌音さんが悪いわけじゃ──」
小金井 萌音(こがねい もね)「いえ、許嫁という関係に甘えてたのはきっと私も同じ」
小金井 萌音(こがねい もね)「どうせ変えられない運命と思って、ちゃんと彼と向き合おうとしなかった」
小金井 萌音(こがねい もね)「もっと彼の事を理解できれば、こんなに迷わなくて済んだのかな──」
樺島 ここね(かばしま ここね)「──」
〇立派な洋館
小金井(こがねい)家当主「どうでした!? 説得は成功しましたかな!?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「い、いえ、ですからそういうお話では──」
小金井(こがねい)家当主「娘は本当に我儘で──」
小金井(こがねい)家当主「3年前も当家は資金繰りに苦労してまして、大蔵家との結婚を当てにしていたのに」
小金井(こがねい)家当主「あの子が留学なんて言い出して、本当に参りました」
小金井(こがねい)家当主「まぁ不幸中の幸い」
小金井(こがねい)家当主「先方のせいで結婚が延期になった詫びという事で」
小金井(こがねい)家当主「多額の融資をして頂いて何とか乗り切れましたが」
小金井(こがねい)家当主「しかし当家の窮地は今も続いておるのです、何としても結婚を進めないと──!」
〇川沿いの原っぱ
樺島 ここね(かばしま ここね)「みんな萌音さんを物みたいに扱って!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「お金持ちって皆、あんなに自分勝手なの!?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「そんな事ないよ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「萌音さんだってお金持ちだろ?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「それは・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「それに、お金持ちにもきっと色々事情があるんだよ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「例えば小金井さんの会社が倒産したら、そこで働く人みんなが路頭に迷ってしまう」
樺島 一心(かばしま いっしん)「自分の家の問題だけでもないんじゃないかな」
樺島 ここね(かばしま ここね)「でも・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「なんて、正直僕にもよく分からない世界だけどね」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ねぇ、お兄ちゃん」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ん?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ここね達は、お父さんとお母さんの子供で良かったね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「──ああ、そうだな」
樺島 ここね(かばしま ここね)「早く見つけて、また一緒に暮らせるようにしなきゃね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ああ、もちろんだ!」
〇警察署の入口
数ヶ月後
〇オフィスのフロア
樺島 一心(かばしま いっしん)「大蔵家と小金井家の結婚、来月に決まったんですか!?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「予定よりずいぶん早まったんですね──」
平 光和(たいら みつかず)「それで、一心くん達に結婚式の警備に来てほしいそうだ」
平 光和(たいら みつかず)「ゾンビが興奮して暴れる可能性はありそうだし、私としても行くべきだと思うんだ」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「俺も行ってやろうか?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「尾ケ崎さん」
樺島 一心(かばしま いっしん)「いえ、僕とここねだけで大丈夫です」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「暴れる可能性が高いゾンビなんだろ? いざとなったらお前に撃てるのか?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「万が一の時は、確実に対処します」
樺島 一心(かばしま いっしん)「でも、そんな状況にはさせませんけどね」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「・・・その万が一の対処ってのをさせたくないから、言ってやってるんだろ──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「え?今何か──」
「ここねちゅわ~~~~~ん! ! !」
円谷 理子(つぶらや りこ)「結婚式に出るんだって!?どんなドレス着て行くの!?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「い、いえ、警備に行くだけで出席するわけでは──」
円谷 理子(つぶらや りこ)「私が見立ててあげるから!一緒に買いに行きましょ!!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「話を聞いてください!」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「・・・やれやれ」
〇黒
〇教会
樺島 一心(かばしま いっしん)「人目を忍んで海辺のこじんまりとした教会で、と聞いたけど──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「十分すぎるくらい立派だな」
〇教会の中
神父「新郎の入場です」
ゾンビ「うぁ・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「萌音さんも入場してくるよ!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「萌音さん、キレイ──」
樺島 ここね(かばしま ここね)「でも──」
樺島 ここね(かばしま ここね)「やっぱり、どこか悲しそう──」
ゾンビ「うぁ・・・?」
小金井 萌音(こがねい もね)「貴明さん──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「良かった、貴明さん思ったより落ち着いてるな」
神父「それでは結婚の儀を執り行います」
神父「新郎、大蔵 貴明」
神父「貴方は、病める時も健やかなる時も」
神父「この者を妻として愛する事を誓いますか?」
ゾンビ「ゔぁ?」
大蔵(おおくら)家 当主「『はい』だ!『はい』と言っておる!」
神父「え、え~、新婦、小金井 萌音」
神父「貴女は病める時も健やかなる時も」
神父「この者を夫として愛する事を誓いますか?」
小金井 萌音(こがねい もね)「──」
ゾンビ「ゔぁ? ぁあ?」
小金井(こがねい)家当主「何しとる萌音! 早く答えんか!」
小金井 萌音(こがねい もね)「──」
小金井 萌音(こがねい もね)「はい──」
樺島 ここね(かばしま ここね)「萌音さん、泣いてる──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「喜びの涙──ではなさそうだな・・・」
神父「では、指輪の交換を行います」
ゾンビ「──ぅあ?」
ゾンビ「あぁぁぁ!ゔぁーー!」
神父「ど、どうしまし──」
ゾンビ「あぁぁぁぁあ」
「あっ!?」
「あっ!?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「しまった!指輪を奪って逃げた!」
〇教会
ゾンビ「あぁぁぁあ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「萌音さんに会っても落ち着いていたから、油断した──!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここのまま街に行かれると危ない!」
大蔵(おおくら)家 当主「待たんか、どこへ行くー!」
〇草原の道
樺島 一心(かばしま いっしん)「速い──! 追いつけない!」
大蔵(おおくら)家 当主「しめた、そっちは崖で行き止まりだ!」
〇断崖絶壁
樺島 ここね(かばしま ここね)「危ない、崖の方に!」
〇断崖絶壁
ゾンビ「あ゛ぁ ぁ ぁ あ゛あ゛あ」
〇海
ゾンビ「あぁぁぁ!うぁぁあ!」
〇断崖絶壁
樺島 ここね(かばしま ここね)「『これで留学できる』って言ってる」
樺島 一心(かばしま いっしん)「──え?」
〇城の廊下
樺島 ここね(かばしま ここね)「「結婚すれば、留学できない」って」
〇断崖絶壁
樺島 一心(かばしま いっしん)「──そうか」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ハハッ──逆だったんだ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「結婚したら留学できない」
樺島 一心(かばしま いっしん)「だから結婚はしない、って意味だったんだ!」
ゾンビ「あ゛ぁーー!ゔぁーー!」
小金井(こがねい)家当主「こっ、こここれはどういう事ですか!」
小金井(こがねい)家当主「当家に対する侮辱ですぞ!」
大蔵(おおくら)家 当主「何を言う!散々世話してやった恩をこれしきの事で忘れるのか!」
小金井 萌音(こがねい もね)「貴明さん──」
小金井 萌音(こがねい もね)「それがあなたの『覚悟』だったの?」
小金井 萌音(こがねい もね)「本当に──」
小金井 萌音(こがねい もね)「本当に、昔から口下手なんだから──」
〇空港の外観
〇空港のエントランス(人物なし)
樺島 ここね(かばしま ここね)「萌音さん、留学おめでとう!」
小金井 萌音(こがねい もね)「ありがとう」
小金井 萌音(こがねい もね)「結局、大蔵家とは揉めに揉めて貴明さんと破談になってしまったし」
小金井 萌音(こがねい もね)「お父様はカンカンで、私も勘当同然だけど」
小金井 萌音(こがねい もね)「だからこそ、必ず絵で稼げるようになって」
小金井 萌音(こがねい もね)「お父様と貴明さんを支えられるようになってみせるわ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「貴明さんも──?」
小金井 萌音(こがねい もね)「ええ、貴明さんは私を失う覚悟をしてまで私と向き合ってくれたんだもの」
小金井 萌音(こがねい もね)「今度は私の番」
小金井 萌音(こがねい もね)「今度こそ、ここねちゃんに」
小金井 萌音(こがねい もね)「「ゾンビと結婚するなんてステキ!」って言ってもらえる結婚式を挙げてみせるわ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「──はいっ!」
その後、萌音さんと貴明さんがどうなったのかは
今はまだヒミツです☆



萌音の留学のために指輪を投げ捨てた貴明の決死の覚悟。👍️
政略結婚しか頭になかった親父達は悔い改めて欲しいですね。