九つの鍵 Version2.0

Chirclatia

第55回『生活の中にあるもの』(脚本)

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〇シックなカフェ
  ──第55回『生活の中にあるもの』
  姫野家の娘、姫野果世はお小遣いのためにとあるファミレスでアルバイトをしている。
  生きていくために必要なお金は、いつも月末に行方不明になった母親から送られている。
  少なくとも、『自分の知らないどこかで母親は生きている』ことだけは分かっている。
  だが、遊ぶためのお金が足りない。
姫野果世(閉店まで、あと1時間・・・)
姫野果世「あとちょっとだ、頑張ろう!」

〇シックなカフェ
  ──午後8時、閉店30分前
  『客』の姿を見た果世は、目を丸くして驚愕した。
フリートウェイ「ここで合ってるか?」
チルクラシアドール「うん」
  かつて自分を助けてくれた男が、少女を連れて目の前に現れたからだ。
  彼らは空いているテーブル席に座り、
  普通の客の様に、普通にタブレットで注文し、大人しく待っていた。
フリートウェイ「何注文した?」
チルクラシアドール「これー」
  タブレットの液晶に指を指差すチルクラシアが注文したものは、『今日の夕食』だ。
フリートウェイ「蕎麦好きなのか? よく食べるよな」
  チルクラシアは即座に、無言のまま頷く。
フリートウェイ(不調を引き起こすようなものでは無いと分かれば、好んで食べるようになるのか・・・?)
  チルクラシアの食事の傾向を知りたいフリートウェイだが、
  チルクラシアが顔を覗き込んできたため、一時的に考えるのを止めた。
フリートウェイ「オレはいつも通りだ」
  自分もチルクラシアと同じように、タブレットの液晶に手を伸ばす。
  液晶に映ったハチミツ紅茶の写真を、指差した。
フリートウェイ「この店が閉じるのは、30分後だ。 ・・・・・・あまりゆっくりは出来ないな」
フリートウェイ「だから、次行く時はもっと早く行こう」
チルクラシアドール「分かった」

〇シックなカフェ
フリートウェイ「!」
  果世に気がついたフリートウェイは、手招きをした。
姫野果世「はい、何でしょうか」
フリートウェイ「ちょっとお話しようぜ、お嬢さん」
  自分たち以外の人間がいないのを良い事に、フリートウェイはバイト中の果世を誘う。
フリートウェイ「君のおすすめを教えてくれ。 次来たとき、オレはそれを注文する」
姫野果世(お、おすすめ・・・かぁ・・・)
  面食らった果世は、なるべく誰とも視線を合わせずに
  タッチパネルの画面を指で動かしていく。
姫野果世「オムライスとかは、どうでしょうか・・・?」
  果世は恐る恐る、フリートウェイに提案した。
  果世にとって、オムライスは母を思い出す大切な卵料理だ。
フリートウェイ「OK、分かった」
フリートウェイ「次回、オレは必ずそれを注文する」
  彼は立ち上がり、眠そうな顔をした少女の手を取るとレジの方向へ足を向ける。
フリートウェイ「・・・蜂蜜紅茶、まぁ悪くなかったぜ」
フリートウェイ「──では、また会う日まで」
姫野果世「あ、ありがとうございましたー!」

〇郊外の道路
姫野果世「・・・すごく不思議な子だったなぁ」
  あの金髪の少年は、『二度目』の約束をして店を出ていった。
姫野果世「アルバイトだけど、もっと頑張らなきゃ」
姫野果世「だから、あの人にも協力してもらおう・・・♪」
  ──帰り道を歩く果世の一歩は、とても軽快だった。

〇城壁
シャーヴ「・・・ネイ」
  ディナータイムを済ませたフリートウェイに、シャーヴは後ろから声をかけた。
シャーヴ「チルクラシア・・・マスターの体調や言動に、何か変動はありましたか?」
フリートウェイ「チルクラシアは、何も変わってない。 安心しろ」
シャーヴ「・・・安心しているのは、貴方の方では?」
フリートウェイ「!」
シャーヴ「無理に変わる必要など無い」
シャーヴ「誰しも『変わりたい』と思えている時だけにしか、変われませんからね」
  いつも通りの笑顔は、相手の次の一言で消えることになる。
フリートウェイ「・・・じゃあ、それをオレが望まなければいいんだな」
シャーヴ「・・・!?」
フリートウェイ「『チルクラシアの心変わり』を、『オレが阻止する』んだ」
フリートウェイ「そうすりゃ、苦痛のひとつは確実に消えるはずだ」
シャーヴ「・・・・・・・・・」
  二度聞いても、全くピンとこない。
シャーヴ(彼はいつも、私の想像を超えてくる)
シャーヴ(・・・どうして彼は、こんなことを望むのか?)
  シャーヴは、自分が予想しない範囲で想像を越えてくるフリートウェイが少し苦手だ。
  彼を観察し笑いながらも、実は警戒している。
  先程のフリートウェイの発言は、自分の予想を斜め上から抉るようなものだった。
フリートウェイ「オレ達が『世界のために正しくある』必要は無い」
フリートウェイ「オレはチルクラシアの隣に居れれば、それで十分」
フリートウェイ「お前はどうだ?シャーヴ」
  まるで試されるように言われたシャーヴの表情は、仮面とはいえ歪んでいく。
シャーヴ「・・・困った。 『充足』など、感じたことがあまり無かったもので・・・・・・」
シャーヴ「・・・私の想像よりも、はっきり言うんですね。 その言葉、もう取り消せませんよ?」
フリートウェイ「オレが嘘ついてると思ってんのか? 失礼な奴だな」
フリートウェイ「嘘ついて何になんだよ。 ・・・オレはお前やシリンみたいに口が回るわけじゃない」
フリートウェイ「だから、チルクラシアにだけでも誠実でいたい」
フリートウェイ「今のオレが望むは、『チルクラシアとの生活がこのまま続く事』だけなんでね」
フリートウェイ「邪魔をしないでくれると助かるんだが」
シャーヴ「貴方の言う、『邪魔』・・・とは?」
  フリートウェイをどう見ていればいいか分からなくなったシャーヴは、本人に問う。
フリートウェイ「いつもすました顔しているお前なら、すぐ分かるだろ?」
フリートウェイ「時間が惜しいから、そろそろ帰る。 またな」

〇城壁
シャーヴ「・・・だそうですよ」
スターブローク「・・・『だそうですよ』と言われてもなぁ」
  秒針が異様なほど早く動く器の中から、黒色のシルエットが出てきた。
スターブローク「『色々あったんだなぁ』とは思ったよ。 けど・・・」
スターブローク「僕はまだ器の中から見てただけだから、情報不足だ」
シャーヴ「情報を仕入れるために、早く器から分離しなければいけませんね」
スターブローク「僕の実体はまだ定まってない。 形が決まるまでは、器の中にいることにするよ」
  『友人』と久しぶりに会話が出来ることに、シャーヴは嬉しさを感じているようだ。
  珍しく、仮面とその下の表情に差がほぼ無い。
シャーヴ「数世紀ぶりのファルコはどうでした?」
スターブローク「変な記憶の飛ばし方をしてたのと、マスターに執着しているのには驚いた・・・」
スターブローク「あいつ、あんなにマスターに引っ付くような奴だったっけ?」
  首を傾げた黒色のシルエットだが、声色に感情が乗っていない。
スターブローク「・・・とにかく、ファルコのことは マルギットとドゥルマに伝えておくよ」
スターブローク「君は君の仕事をするべきだよ」
シャーヴ「・・・少し穏やかになりました?」
シャーヴ(『怒り』の熱が全く感じられない。 『役目』から解放されたからでしょうか)
スターブローク「・・・気のせいじゃない? わざわざ言わなくてもいいよ」
スターブローク「僕のことは一切気にしないで」
スターブローク「出番だと思ったら、実体を決めて勝手に器から出ていくから」
シャーヴ「私が彼にやっているのは、監視というより、観察に近いですけどね」
シャーヴ「彼は少々・・・いや、かなり面白いですよ 見応え抜群、飽きずに見続けることが出来る」
スターブローク「・・・・・・・・・」
  シャーヴは面白がっているが、黒色のシルエットは複雑そうにしている。
スターブローク「・・・それは楽しむものじゃないと思うけどなぁ」
スターブローク(・・・仕方ない、か)

〇城の廊下
  ──君は、一体どこまで知っているのかな。
  ──城の窓ガラスを数枚、素手で割った后神様が、過労かなにかで倒れたってこと。
ラダ・ローア「!?」
ラダ・ローア「何をぼんやりしている! 早く救命処置を!!!」
  ──ロアの王族は、后神様の看病に、数日間は専念するってこと。
  ・・・だから、しばらくロアは国として機能しなくなるだろうね。

〇城壁
遊佐景綱「頼む、間に合ってくれよ・・・」
  ──后神様の異変を知った遊佐家の当主は、単独でこちらへ向かっていること。
  あの当主様が誰に会いに行くかの予想は、出来ているけどね。
  ・・・君もそうだろ?

〇貴族の部屋
  ──翌朝
フリートウェイ「・・・?」
  ベットの真横にほうれん草ケーキが置かれていることに、
  寝起きのフリートウェイは、首を傾げるのだった。
フリートウェイ「誰が、こんなこと・・・」

次のエピソード:Another Act1『一時のしあわせ』

コメント

  • 新キャラ登場ですね!
    そして最期のオチw

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