球~行き着く先は、世界の端~

333×

25 壁を壊せ(脚本)

球~行き着く先は、世界の端~

333×

今すぐ読む

球~行き着く先は、世界の端~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇御殿の廊下
  街に居た鈴蘭(リンラン)という女性。
  彼女の持つ道具に吸い込まれてしまったミムレットとハパルムの二人。
  やがて、道具の中で、透明な壁に行き当たった。
ミムレット「この壁を壊せば、外に出られる・・・はず」
ハパルム「壁は判ったんだけど」
  強固な壁を前に、二人はしばし沈黙した。
ミムレット「どうすりゃいいんだよ!?」
ミムレット「引っ掻いてもダメ」
ミムレット「蹴っても叩いてもダメ」
ハパルム「その辺の石を叩きつけてもダメ」
ミムレット「どうやって壊すんだ!?」
ハパルム「ハランさんは何て言ってたの?」
ミムレット「それは・・・聞いてない」
ハパルム「私も・・・聞いてない」
  ミムレットもハパルムも、尻尾をゆらゆらと揺らして、三角の耳を低めた。
ミムレット「いや、ほら、力ずくで叩き壊すもんだとばっかり」
ハパルム「右に同じ、です」
ハパルム「壊すって言ってたから、てっきりハンマーとかで壊れるものだと・・・」
ミムレット「出直すか」
ハパルム「そうしようか」

〇後宮の庭
  二人は、虚構の庭園で見つけた果物を頬張った。
ハパルム「あ、美味しい」
ミムレット「旨いけどさ。でもさ・・・」
ミムレット「ハパルムのスープが食べたい・・・」
ハパルム「え?」
ハパルム「本当?嬉しいな」
  柔らかく耳を下げたハパルムに、ミムレットが額を擦り寄せた。
ミムレット「外に出たら、作ってくれよな」
ハパルム「うん!」
ミムレット「お、あっちにも実がなってる!」
  木にのぼって果物をもぐミムレットを、ハパルムは見上げた。
ハパルム「いつでも作ってあげるよ、ミムレット」
ハパルム「本当に、本当の外に出るまでは」

〇魔界
ハパルム「ハランさん」
ハパルム「「球」を壊したら、外に出られるんですよね?」
ハラン「ああ」
ハパルム「外って、どこに出るんですか?」
ハパルム「みんな・・・バラバラになるんですか?」
  ハランは、ハパルムの垂れ下がった尻尾を見やって、笑って見せた。
ハラン「心配ないよ。無事に出られる」
ハラン「皆、もと居た場所へ戻るだけだ」
ハパルム「それは──」
ハパルム「ハランさんやミムレットと、離ればなれになるってことですよね?」
ハパルム「一緒の場所には、出られないんですか?」
ハラン「ああ」
ハラン「ミムレットとハパルムの国は、近いかもしれない」
ハラン「探せば、会えるかもな」
  ハパルムはハランにしがみついた。
ハパルム「ハランさんや、ミムレットと離れるのは──」
ハパルム「寂しいです」
ハパルム「すごく、寂しいです」
  言葉と一緒に溢れた涙を拭うハパルムに、ハランは穏やかに声をかけた。
ハラン「探せば、会えないこともないだろう」
ハラン「だから」
ハラン「今生の別れとなるかは、分からない」
  ハパルムは涙を拭い切ると、真っ直ぐに前を見た。
ハパルム「えへへ」
ハパルム「どこにいても、いつお別れが来るかなんて分かりませんもんね!」
ハパルム「会える今を大事にしないと」
ハラン「私も、今を大事にしたいよ」
ハラン「そうだな、今は──」
ハラン「ハパルムのスープを、たくさん食べたいな」
ハパルム「待っててください。今作りますから!」

〇後宮の庭
ミムレット「ほら、こっちも美味しそうだぞ?」
  降りてきたミムレットの腕には、よく熟れた果物が抱えられていた。
ハパルム「ありがとう、ミムレット」
ミムレット「どうってことないさ」
ミムレット「これを食べたら、もう一回壁に行くか」
ハパルム「そうだね」
ハパルム「結局、庭にも建物にも、めぼしい物は無かったもんね」
ミムレット「まあ、どうにかなるだろ」

次のエピソード:26 一縷(いちる)の希望

ページTOPへ