22 寄る辺の強さ(脚本)
〇荒廃した市街地
男性「揚げ菓子だ。急ごしらえで悪いがね」
ミムレット「わあ!」
ハパルム「いいんですか?」
男性「いっぱい食べなさい。若者はそれが仕事だ」
男性は、喜ぶ猫人から離れ、見守るハラン達の方へ足を向けた。
男性「物好きだな」
男性「外に出たい、なんて」
男性「「球」に居場所を求めるのは、現実がロクでもないやつらばっかりだと思っていた」
シャラ「一理あるな」
ハラン「一緒に来ますか?」
男性は静かに首を振った。
男性「いや、やめておくよ」
男性「この場所が壊れる時まで、ゆっくり過ごさせてもらうさ」
ハラン「そうですか」
男性が小屋に戻るのを、黙って見送ったハランとシャラ。
ハパルム「・・・・・・」
〇基地の広場
街を後にした一行。
ハパルム「いいんですか?」
ハパルム「引き留めなくて」
ハラン「いいもなにも」
ハラン「彼の人生なのだから、彼が決めることだ」
ハパルム「もしかしたら」
ハパルム「引き留めて、欲しいのかも」
ハランの代わりにシャラが口を開いた。
シャラ「それなら、なおのこと」
シャラ「引き留める「判断」をこちらに「委ねた」ということだ」
シャラ「こちらは判断した。「相手の人生だから口を出さない」と」
シャラ「それだけの事だ」
ハラン「そうだね」
ハラン「彼以外の誰も、口出し出来ない。 そう、判断した」
ハパルム「そう、ですか」
ハパルム「じゃあ、あの時」
ハパルム「私が「故郷の街を出たくない」って言ったら?」
ハラン「君はここに居ないだろう」
ハパルム「お二人は、ミムレットも・・・強いんですね」
ハラン「強いのか?」
ハパルム「はい。迷わないし」
ハパルム「その・・・人に委ねなくても、進んでいけるから」
ハパルム「・・・私はお兄ちゃんに頼ってばっかりだったし、今も・・・」
ハランは少しかがんで、しっかりとハパルムと視線を合わせた。
ハラン「ハパルムの強さは、人を頼り、信頼し、自身を委ねる強さだな」
ハパルム「えっ」
ハラン「「委ねる」強さは、私にはないよ」
ハラン「そこのシャラもね」
シャラ「それを強さと言うなら、な」
ハパルム「あ、え、えと」
ハパルム「わ、私、ハンマーを取ってきます!」
すれ違うハパルムを横目に、ミムレットが呟いた。
ミムレット「あいつ、また悩んでるのか」
ミムレット「強さ、か」
ミムレット「強さなんて、色々あるのにさ」
〇魔界
ミムレット「強さなんて、それぞれだろ?」
ミムレットは、前を行くハランへ投げかけた。
シャラ「ほう?」
ミムレット「お、お前には聞いてない!」
シャラ「構わん、続けろ」
ミムレット「強さって、色々あるじゃないか」
ミムレット「だから強さになるんだろ?」
ハラン「と、言うと?」
ミムレットは、三角の耳を低めて、思案顔になった。
ミムレット「え、うーんと、何て言うか」
ミムレット「あ、ほら」
ミムレット「みんな同じなら、弱点も一緒だろ?」
ミムレット「だから、弱点をつかれたら全滅する」
ミムレット「そうだろう?」
ハラン「そうかもな」
ミムレット「でも違う強さなら、弱点も違うから、全滅しない!」
ミムレット「「強み」はいろんなやつがいるから、「強さ」になるんだよな」
誇らしげに耳をピンと立てて、ミムレットは言い切った。
すると、シャラとハランの二人が同時に笑い出した。
穏やかなうなづきと一緒に。
ミムレット「な、なんだよ?」
ハラン「なるほど」
シャラ「頭を使うじゃないか」
ハランは、ミムレットのフカフカの耳ごと、豊かな髪と頭を撫でた。
ミムレット「お、おい!やめろ」
ミムレット「撫でるな、触るな、子ども扱いするな!」
ミムレット「ほら、どっか行くんだろ?」
ミムレット「さっさと行くぞ!」
駆け出したミムレットを見送って、シャラが口を開いた。
シャラ「まあ、求められる「強さ」なんてものは」
シャラ「片寄るのが常だがな」
ハラン「そう言うな」
ハラン「眩しいだろ?彼らは」
シャラ「弟子に取るのか?」
ハラン「いや」
ハラン「「球」を壊せば、みな元の場所へ帰る」
ハラン「それまでだ」
歩きかけたハランへ、シャラが問いかけた。
シャラ「お前は、彼らをどうしたい」
ハラン「どうも何も」
ハラン「彼らは自分で進んでいく」
ハラン「誰の手を借りても、借りなくとも」
ハラン「立って歩いていくよ」
一つため息を挟むと、シャラは、問い直した。
シャラ「「お前は」どうしたい」
ハラン「私?」
ハラン「私は・・・私も、どうもしないさ」
ハラン「自分の心に、従うまでだ」
シャラ「あの女に振り回されて、何が心か」
シャラは、それ以上の言葉を飲み込んで、踵(きびす)を返した。
シャラ「約束を忘れるな」
シャラ「目的地に着いたら、決着をつけるぞ」
ハラン「ああ」
ハラン「──決着をつけるさ」
ミムレット「ハランー!置いてくぞ」
ミムレット「街の影が見えたんだ!」
ハパルム「広そうですよ」
〇中華風の城下町
そして一行はたどり着いた。
目的地たる街へと。


