21 破綻(はたん)の予感(脚本)
〇基地の広場
男性「誰だね、君たちは」
ハランが男性へ歩み寄り、丁寧に頭を下げた。
ハラン「水と食料を分けて貰えませんか」
男性「構わないが、どこから来たんだ?」
ミムレット「荒野の向こうだよ」
男性「ほう。こんな荒れ野を通って?」
男性は、ミムレットやハラン達をみて顎に手をやった。
男性「いやはや、本当にいるのか」
ミムレット「なにが?」
男性「人がだよ。「球」の中に」
男性「しかも、訪ねてくるとは」
〇荒廃した市街地
男性は一行を街へと招き入れた。
男性「どうぞ」
〇暖炉のある小屋
男性「大したものはないが」
男性「ゆっくり休むといい」
水を出してから、改めて一行を見つめた男性。
男性「しかし驚いたよ」
男性「こんな若いお嬢さん達が、球(ここ)にいるなんて」
ハパルム「おかしいですか?」
男性「いや」
男性「君達のような年の子も「球」を必要としているのかと、思ってね」
ミムレット「こっちにだって理由があるさ」
ミムレット「あんたは、どうして「球」に来たんだ?」
男性「はは」
男性「なに、ちょっと休憩したくなったのさ」
〇基地の広場
男性「不況の煽(あお)りでな、仕事を無くしたんだよ」
男性「食いつないでいた貯金も、底をついて」
男性「住む場所も無くなった」
男性「途方に暮れていたときに」
男性「「球」に出会ったのさ」
〇暖炉のある小屋
男性「あんた達は?」
3人は、旅の目的を話した。
それぞれの出発点から、「球」の端を目指していることまで。
そして、世界の端の壁を壊して、外の世界──現実に帰ろうとしていることも。
男性は、時々頷きながら話を聞いた。
男性「そうか」
男性「あんた達は、外を目指しているのか」
男性「待っていなさい」
男性は棚に向かい、ガサゴソと物色し始めた。
男性「ええと、おや、これはまだ復活していなかったか?」
男性は、空の瓶を手に、頭を掻いた。
男性「それなら・・・こっちもまだか」
ミムレット「何を探してるんだ?」
ミムレットも棚を覗(のぞ)き込んだ。
男性「菓子でも出そうかと思ったんだが・・・」
男性「まだ「復活」していないようだ」
ハパルム「球の物資は復活しますからね」
ハパルム「食べ物とかを消費しても、気がついた頃には元に戻ってる」
ハパルム「不思議ですよね」
男性「ああ、だが・・・妙だな」
男性「食べてからしばらく経つんだがね」
ミムレット「妙か?」
ミムレット「食べたら無くなるのが「当たり前」だろ?」
ミムレットの言葉に、男性は一瞬動きを止めると、カラカラと笑った。
男性「あはははは!確かにそうだ」
男性は続けてポツンと呟いた。
男性「そうだ。それが「当たり前」だね」
男性「もう、忘れてしまっていたよ・・・」


